芝大寿の予言 芝大寿は予言した。
「あいつらは復縁するだろ」
三ツ谷が大寿を二代目東京卍會に勧誘したときのことである。総長が花垣であること。弟の八戒がいること。その他もろもろ。花垣のもとに仲間たちが集まってきてはいるが、力が足りぬことを率直に打ち明けた。その中に乾青宗の名もあった。黒龍十代目の総隊長であったときの部下の名を聞いて、芝大寿は予言をした。
「あいつらは復縁するだろ」
乾青宗と九井一のことである。
予言というよりは断言だった。
「え、でも九井は関東卍會の幹部だぜ。マイキーを裏切るかなぁ」
「裏切るとか裏切らねぇとかじゃねぇ。九井は乾の言うことしか聞かねぇ。噂を聞いたことくらいあるだろ」
「そりゃあ有名だからね」
「乾が誘えば九井はこちら側につく」
「だといいんだけど」
それについては三ツ谷も乾に確認していた。乾は九井を仲間に誘うとは言っていたし、三ツ谷も可能性はあると思っていた。みな乾と九井が親しくしていたことを知っている。九井が仲間になってくれたらいいと誰もが思っていた。だが当事者である乾は大寿ほど断言はしていなかった。
「なに? それは元総隊長としての確信? それとも同級生としての勘?」
芝大寿は三ツ谷の問いに答えなかった。答える気がないのだろう。三ツ谷は少し肩をすくめた。
「……オレは黒龍十代目、けっこう好きだったよ。トップクかっこよかったしね」
「言ってろ」
「その予言、当たるといいね」
「あいつらは揃っていなくても面倒くせぇが、揃っていても面倒くせぇ」
偉大なる予言者・芝大寿があんまりにもしみじみと言うものだから、三ツ谷は笑ってしまった。