ハロハピ、成人四人と未成年みーくんの飲み会「美咲ー!あたしおかわり〜!」
「あー、はいはい。じゃあここから選んで」
つい先日、こころが20歳を迎えたことで弦巻家では大々的なパーティが行われた。高校の時の同級生は勿論、なんかテレビで観たことある偉い人なんかもいて、完全にドレスコードで行われたそれは、高校の卒業パーティとは規模が段違いだった。まあ成人だもんね、そうだよね。
だから主役のこころは祝われる身だけど忙しそうにしてて、とてもじゃないけど直接話す時間はあんまり無かった。ライブは披露したけどね。
と言うわけで、後日改めてこころの誕生日祝いを、ハロハピメンバーだけで行なっている次第ですよ。居酒屋で。
「このはいぼーる? っていうの? あたしこれが飲みたいわ!」
「はぐみはカシスオレンジ〜!」
「はいはい」
なんで駅から五分のアクセスを売りにしているこの個室居酒屋なのかというと、こころが「居酒屋という所に行ってみたいわ!」と言い出したからである。もの珍しいよね、こころからすると。
「美咲ちゃんは何飲む?」
「あ、ありがとうございます花音さん。あたしはウーロン茶で」
「あら、美咲は飲まないの?」
「あのね……?」
顔をほんのり赤くさせるこころに心底腹が立つ。花音さんが苦笑いをしていた。
「いや知ってるでしょ、こころ? あたし飲めないの」
「そうだったわね!」
「みーくんまだ未成年だもんね〜?」
「二人はなんで微妙に嬉しそうなのさ……。あと、はぐみさん?」
「なぁにみーくん?」
「なんであたし、はぐみの膝に座ってるの……?」
「ん〜〜?」
いや、ん〜? じゃないわ。あたしを膝に乗せてご満悦のはぐみが抱きついてくる。彼女からお酒のにおいがするのが落ち着かない。なんか頭も撫でられる。この子、こんなにあたしのこと可愛がってたっけ? 逆じゃない? 酔ってるなこれ?
「そろそろ降りたいんだけど」
「じゃあこっちにいらっしゃい、美咲」
「いや行かないよ」
こころが自分の膝をぽんと叩いてあたしを呼ぶ。こころも酔ってるなこれ。というか二人とも、パーティの時はもっと飲んでたし平気そうだった気がしたんだけど。なんで? 場酔い?
「あはは、大丈夫?美咲ちゃん」
「もう助けてくださいよ花音さん……」
「きっと二人とも、美咲ちゃんよりお姉さんなのを実感できて嬉しいんじゃないかな。はい美咲ちゃん、お刺身と唐揚げ」
「お姉さんって、いや数ヶ月違うだけで同級生ですし……。っていうか、花音さんさっきからあたしの取り皿にばっか料理盛ってません?」
あ、この人も顔に出てないだけで酔ってるな?因みにテーブルの端では、カッコつけてグラスワインを頼んだ挙句半分も飲めず撃沈している薫さんがいる。この人はほんとになんなんだ。
「だって美咲ったら、せっかくみんなでのディナーなのに、なんだかお腹が痛そうなんだもの」
「えっ、お腹痛いのみーくん!?」
「えっ、痛くない! 痛くないからお腹さすらないではぐみ!」
はぐみの動きは止めたけど、全員から視線が注がれるのを感じる。
「……いや、だって、…………あたし一人だけ飲めないの、なんか悔しいじゃん」
「」
「え、いや、あの、なんでみんな黙るの?」
「美咲〜!!」「みーくん〜!!」
「うわっ! 急に抱きつかないでって、」
「寂しがる美咲も儚……ゔ、」
「あー! 待って薫さん!! ここで吐かないで!! トイレ行きましょう!!」
いくら未成年で介抱できる人が居るからって、全員羽目を外し過ぎなんじゃないか。
二ヶ月後覚えてろ今度はあたしも一緒にお酒楽しんでやるんだからな! って誓ったあたしだが、実際二ヶ月後に飲んだ時はグラス一杯飲み切れず、ゆるやかに寝落ちするのであった。