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    浬-かいり-

    @Kairi_HLSY

    ガルパ⇒ハロハピの愛され末っ子な奥沢が好き。奥沢右固定。主食はかおみさ。
    プロセカ⇒今のところみずえなだけの予定。

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    浬-かいり-

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    はぐみと美咲

    #ガルパ
    galpa
    #ハロハピ
    halo-happi

    夕立にスキップ  空を見上げて、北沢はぐみは一人溜息を吐いた。灰色の空からは、激しく雨が降り注いでいる。雨はベンチの屋根を叩きつけ、グラウンドをあっという間にぬかるみにしていく。

     夏休みに入って最初のソフトボールの練習に、すっかり舞い上がっていたのがつい数十分前。来週末には、試合を控えていて気合も入っていた。
     今日の分の練習はとっくに終わったのだが、なんだかもう少しだけ練習したい気分で。帰り支度を整えるチームメンバー達に手を振って、一人自主練習に打ち込んでいた。そしたらこの有様だ。
     グラウンドに居残りしたことを、少しだけ後悔する。両手にはバットとグローブ。傘なんて持ち合わせていなかった。


    「濡れて帰るしかないかなぁ……」


     家までは結構距離がある。ここから走って帰るのはあまり現実的ではない。いくら体力に自信があるはぐみと言えど、練習後の体力でソフトボールの道具を背負ったまま雨の中走るのは、なかなかにハードだろう。
     しかし、それしか手が無いのもまた事実だった。仕方なく荷物をまとめ、ぬかるんだ地面に一歩踏み出そうとしたところで、


    「はぐみ!」


     名前を呼ばれて、足を止めた。屋根の下に戻って声の方を見れば、グラウンド傍の土手の上に青い傘が見えた。紙袋片手に階段を降りて来る見慣れた顔に、はぐみは驚いた声をあげる。


    「えっ、みーくん!? どうしたの、こんなところに?」


     ベンチの傍までやって来た私服姿の奥沢美咲は、ユニフォーム姿のはぐみを見ると呆れたように溜息を吐いた。


    「商店街で買い物してたら、練習帰りのあかりに会ってさ。はぐみがまだ練習してるって教えてくれて」


     そしたらこの雨でしょ、と美咲は空を見上げた。遠くの空では、ごろごろと光る雲が見える。はぐみは拗ねたように、しゅんと眉を下げた。


    「天気予報で言ってたでしょ、昼過ぎから急に降り出すって」

    「見てなかった……。今日はすっごく良い天気だったから、大丈夫だと思ったんだもん」

    「いやいや、通り雨って急に来るじゃん。この時期は特にさ」


     項垂れるはぐみに呆れたように笑う美咲が、ほら、と手招きする。


    「あたしも自分で持ってきた傘しか無いけどさ。傘ナシで走って帰るよりマシでしょ?」

    「……みーくん、迎えに来てくれたの?」


     首を傾げれば、美咲は照れたようにほんのり頬を染めた。傘の外に視線を外し、バッターボックス近くに出来た水溜りを見つめる。


    「はぐみのことだから、絶対傘とか持ってないと思ったし……。来週の試合もだけど、その前にライブだってあるんだから」


     だから、風邪でも引いちゃ困るでしょ? 捲し立てた言葉に、今度ははぐみが小さく笑った。その笑い声に、美咲の頬が余計に赤くなる。


    「……えへへ。ありがとう、みーくん!」


     纏めていた荷物を背負うと、その青い傘の下へお邪魔した。無地のシンプルな傘が、美咲らしいなと思った。
     笑顔でお礼を言えば、どういたしまして、と小さく返事が返ってくる。ゆっくりと歩き出した足に、はぐみもペースを合わせてゆっくり歩く。


    「雨、いつまで降ってるのかなぁ」

    「夕方には止むって言ってたよ。明日は晴れるって」

    「わぁ、良かった! 明日はバンド練習だもんね!」

    「別にバンドの練習は雨でも出来るじゃん」

    「え〜! でも、晴れてた方が嬉しいじゃん!」

    「晴れたら晴れたで日差しがキツいからなぁ……」


     二人では狭い傘の中は、他愛のない会話で賑やかに満たされる。傘の外ではまだ雨が激しくアスファルトの地面を叩き、雷鳴が鈍く響いている。
     学校でも、バンド活動でも、なかなか二人きりでこうしてゆっくり話す機会は意外と無いもので。だから偶然の経緯であったとしても、こうして美咲が迎えに来てくれて、二人きりの時間ができて、はぐみはなんだか嬉しい気持ちで満たされていた。
     先程まで一人雨空を見上げてた時は、あんなに沈んだ気持ちだったのに。今では、雨に感謝さえしてしまうほどに。


    「ねえ、みーくん。うちまで送ってくれるなら、うちでコロッケ食べていってよ!」


     今日のお礼! と言えば、別にお礼なんていいのに。ていうかお礼じゃない時もコロッケ出てくるじゃん、と美咲が笑った。


    「ていうか、あたしさっきまではぐみのところで買い物してたんだよね」

    「えっ? あ、ほんとだ! うちの紙袋だ!」

    「……気付いてなかったんだ?」


     美咲が傘を持つ手と反対の手に提げているのは、“北沢精肉店”の店名と、牛のイラストが描かれた紙袋だった。はぐみのよく知っているものだ。
     尋ねれば、母親に頼まれて夕飯の買い出しをしていた、と話した。それを聞いても、はぐみはめげない。


    「え〜! 食べていきなよー! 最近ね、ベーコン入りのコロッケが新しくできたんだよ!」


     美味しいよ! と畳み掛けるように訴えれば、美咲が眉を下げて微笑み、小さく肩をすくめた。


    「……じゃあ、そこまで言うなら食べていこうかな」

    「ほんとに!? やったー! あ、あとはぐみの部屋でちょっと遊んでいこうよ! この間ななみんが買ってたお菓子のオマケが面白くって、はぐみも買ってみたの。みーくんに見せてあげるね!」

    「えぇ? ……もう、雨が止むまでだよ?」


     心底嬉しそうなはぐみの様子に、美咲も釣られて笑顔を見せる。

     
     
     夕方まで降り続ける予定の雨は、まだ止まない。激しい雨の音がスキップを刻んでいるみたいに聞こえて。はぐみは心を弾ませながら、一緒にスキップしていきたい気持ちをぐっと堪えて。
     二人で歩く傘の中を今はもう少しだけ満喫していたいと、見えてきた商店街を前に歩みを少しだけ遅らせた。
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