Hello, Happy Halloween……?「そういえば、美咲って仮装してなかったわよね?」
始まりは、ハロハピ会議の中突然零された、弦巻こころのそんな一言だった。あまりにも突然過ぎた為、奥沢美咲含めハロハピのメンバー達はきょとんと首を傾げる。
因みに先程までは、好きなおでんの具について話をしていた。本来は次のライブについて話し合う為の会議であったが、話題が大幅に逸れることはハロハピ会議では日常茶飯事だ。そして、こころの突拍子のない一言も。
「……なんの話?」
「この間サーカスでやったハロウィンライブの話よ! 美咲だけ仮装していないじゃない!」
「そりゃ、アレは衣装だったし」
先日大成功を収めた、ハロハピがオープニングアクトを務めたサーカスでのライブ。ハロウィンだった為、その時の衣装は仮装も兼ねていた。仮装だけど衣装。だからミッシェルとして舞台に上がっていた美咲には、衣装が無いのは当然だったのだが。
「えっ! じゃあみーくんだけハロウィンで仮装してないってこと!?」
「おや、それは大変だ。仲間はずれは良くないね」
「いや、仲間はずれも何も、アレは衣装だからだってば」
今年のハロウィンはもう終わってしまっている。今更そんな話を蒸し返したところで、もう仮装する機会など無いのだ。こころに同調し始めた北沢はぐみと瀬田薫に、美咲は呆れたように苦笑いを浮かべた。
そんなことより次のライブの話をしよう。この話はおしまい。そう美咲が切り出そうとしたところで、隣の席から爆弾が投下される。
「あっ、じゃあ、ハロハピのみんなでハロウィンパーティーをするのはどうかな? 今年のハロウィンはもう終わっちゃったけど、当日はライブだったからゆっくりハロウィンを楽しむ暇無かったし」
「花音さん???」
あっこれ最近よく見るパターンだ。察した美咲が天井を仰ぐ。案の定、花音の提案を聞いたこころ達の目が輝いた。こうなってしまってはもうブレーキ不可だ。
「それはいいわね! みんなで仮装して、あたしの家でパーティーをしましょう!」
「わぁ、やった〜! ねえねえ、みーくんはどんな仮装にする?」
「えっ? うーん……、」
もうハロウィンパーティーの開催は確定として、美咲は仮装について首を傾げる。突然の提案だったので、やりたい仮装の案がこれと言って浮かばない。
「ああ、じゃあ去年のあるからそれで、」
「えーーーっっ!? ダメだよそれじゃつまんないもん!!」
即座にダメ出しが来た。ミッシェルとお揃いのカボチャの仮装。どうせ一回しか着てないし、と思ったのだが、どうやらそれでは不満らしい。
「うーん……じゃあ誕生日にみんながくれたミッシェルのルームウェアは? 仮装みたいなもんでしょ、あれも」
「あれも可愛いけど、どうせなら美咲の新しい仮装が見たいわ」
こころの言葉に全員が頷く。使い回しはアウトのようだ。美咲は仕方なく、真面目に自分の仮装について考えることにした。
あまり凝るのも気合十分みたいで恥ずかしいし自分のキャラではないので、無難におばけとかだろうか。そんなことを考えていた矢先だった。
「それだったら、この間のライブでミッシェルが着てたのとお揃いの衣装はどうかな。美咲ちゃんにも、とっても似合うと思うんだ」
「あっ! かーくんがね、ハロウィンのパレードでキョンシーの仮装したんだって〜! みーくんにも似合うと思う!」
「モカは学校のハロウィンイベントで、ネコさんになったって言ってたわ! 美咲も可愛いネコさんが似合うと思うの!」
「おや、では吸血鬼はどうだい? 美咲なら最高に儚く可愛らしい吸血鬼を演じられると思うんだ」
「待って」
盛り上がり出すメンバーを、美咲が必死に止める。そもそも何故自分に着せる仮装の話になってしまったのか。こころが自分の仮装を見たいと言いだしたからだ。つまり至極当然の話の流れである訳で、美咲は頭を抱えた。
ブレーキが機能しない中、アクセルは踏まれ続ける。
「では、こうしようじゃないか。ハロウィンパーティーの当日、みんながそれぞれ美咲に似合いそうな仮装を用意するんだ」
「いいわね! どの仮装が一番似合うのか勝負しましょう!」
「ほんとに待って」
「わぁ! はぐみ負けないよ!」
「ふふ、色んな仮装の美咲ちゃんが見られるんだね。楽しみだな」
「止まって」
悲痛な美咲の言葉も、楽しいことにアクセル全開なハロハピは止まってくれない。
かくして、当人の意見を無視したまま、ハロハピ四人による美咲に似合う仮装衣装持ち込み選手権が開催される運びとなった。果たして優勝は誰になるのか。勝手に大会を開催されてしまった奥沢美咲の明日はどっちだ。続かない。