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    マカロニサラダ

    @LIFEWITHAGHOST

    梓月蓮(生きてる)とD君(幽霊)ブロマンス
    創作名:幽霊の友達 
    バドエンメリバしかない
    絵と小説を出してます。

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    マカロニサラダ

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    【IFルート短編】
    共に三途の川を渡ることになった、梓月とD君です。これ単体でも読めます。幸せは無いです。

    #オリジナル
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    #小説
    novel
    #幽霊の友達
    ghostFriends
    #メリバ
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    #幽霊
    ghosts
    #ブロマンス
    bromance
    #ブロマンス小説
    bromanceNovel
    #男子高校生
    mensCollegeStudents

     何がきっかけだったか、幽霊となった友人と暮らしているうち、自らも死を選ぶことにした。
     その後、見えた景色は、自分が乗っている木製の手漕ぎ舟と先の見えぬ長い川だった。日本では有名な話だ。三途の川だとすぐに分かった。三途の川とは、死後の魂が辿り着く場所であり、川が辿り着く奥深い場所にある地獄と、川岸に咲く花々に囲まれた美しい極楽浄土がある。
     ここから先は独りか、と呟けば、聞き慣れた声が後ろから聞こえる。
    「僕もいる」
     振り返ってみれば、友人であるD君の顔が見えた。彼が事故に遭った時の、黒く濁った白い学ランの姿だ。恵まれた背丈のおかげで溺れていない。
     けれど、明らかに息苦しそうな様子に早く乗るよう声をかけて手を貸した。
    「どうして渡し舟が無い?」
     そう聞くと、現世に留まりすぎたのかもしれないと説明をされる。自分の心配をして、幽霊になってまで同居していた友は、三途の川を渡る舟すら無くなってしまった。
     居た堪れない。この舟を持つべきは彼なのではないか、と自責をする。
    「持っているものは?」
     そう聞くと、身辺を確認した後、この身以外無いと言う。
    「本当に、何も?」
     それに頷くのを見ると、梓月は焦燥感に襲われた。彼は本の虫だから、この手の知識が無いとは思えない。三途の川は、舟賃が要る。三銭持っていなければ、進むために代償が必要となる。自分の懐には三銭確かにあった。
     梓月は、その事実に気づいたものの、解決策も無く事実を突きつけてしまうのもどうかと思い、舟を漕ぎながら思考を巡らせる。周辺を見渡せば、自分たち以外にも魂が舟を漕いでいた。
     友の舟賃を手に入れるために、あることを思いついた。梓月は、水に濡れた心優しい友を見て「お前が舟を取り上げられて、こんな目に遭っているのは俺のせいだ。俺が責任を負って降りよう」
     そう言って、梓月は舟から降りた。
     そんなことはさせられない、先は長いと説きつける声を遮り「うるさい! いつも他人のことだけを考えているお前は、このくらいの仕打ちを受けた方がいい」と強く言い放つ。生前から、散々言っていたことだ。友はまた怒らせてしまったと反省したように、ゆるゆると漕ぎ始めた。時折、後ろを振り返って、梓月の様子を見ているのに気づいて
    「顔も見たくないから、もう振り返るな」
     そう投げ捨てるように言うと、大人しく前だけを見て進むようになった。
     梓月は、それを見て安心すれば、平行線へと歩いた。先を急ぐ必要は無い。優しい友は、しばらく進むものの、どこかで結局自分のことを待っている。彼はいつもそうしてくれるからだ。いつも待たせてしまうのは、自分だった。
     川を横断していると、ある舟に突き飛ばされた。舟を見上げれば、人相の悪い男の魂がただ独りで乗っていた。どうせ自分と同じ行先だろうと、舟に飛び乗り、その魂を蹴り飛ばした。その拍子に川に散った銭を、左手で三つ確かに奪い取り、右手に流して空の右ポケットへとしまった。魂をさらに沈めんとして、川で冷えた左手で櫂を掴めば、魂の顔を激しく突き刺した。目を狙ったつもりだったが、乱暴に使うのに慣れない腕のせいで、鼻も折れていた。
     音を立てないよう、深く潜りその場から泳ぎ去った。空気を吸おうと顔を上げた時に、一際大きな背格好が見えたので、川底に足先だけを着いて目を凝らす。D君で間違いなさそうだった。
     梓月は、満足そうに友の名前を呼びながら、舟に近づいた。
    「なぜお前がここにいるんだ」
     梓月が、そうたずねると、友は言いにくそうに顔を顰めてから、どうせ同じ行先だから降りることは無いと、手を差し伸べる。一応、憤りが残った素振りを見せて舟に乗った。三回目の舟航は、平穏で乗り心地が良かった。川面は夕日に照らされ、オレンジ色の眩い光が、二人の顔を照らした。
     舟の中では、漕ぎ手を交代する以外に、何も喋らなかったが、心が満ち足りているのを感じた。D君は何も言わない梓月を見て、依然として怒らせてしまったかと気がかりになったが、ここで降りる選択肢はお互いに無かった。
     夕日が沈み、空の色が暗く染まっていくのを眺めながら舟を漕ぐと、極楽浄土へと到着した。そこには既に魂が大勢集っていた。
     D君は、三途の川で見た顔ぶれを思い出し、本当に浄土があったのかと驚いたが、舟を静かに漕ぐ友は、美しい花々を見ようとしなかった。D君は降りようと思い、舟が止まるのを待ったが、まるきり止まる様子がないことに急(せ)く。梓月はそれを見て、友に左のポケットから出した舟賃を投げつける。それを受け取ろうとして、バランスを崩した友は、大きな音を立てて舟から落ちた。友は、水面から顔を上げてすぐに、通さがっていく梓月の背中を死に物狂いに止めようとする。
     その他の魂がD君を引き止めると、ただ一言、あの子は奈落行きだから止められないと告げる。そんなはずはないと訴えては逆らうD君を、浄土の奥へと連れ去ってしまった。
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