藍曦臣は指先で江澄の前髪に触れた。
はっきりと影の差した顔色は、よりいっそう悪くなったように見える。
求められて拒否ができなかった自分を心中で呪う。まったく情けない。
江澄の言動には不可解なことが多かった。普段であれば照れて言わないようなことでも平然と口に出していた。
あの日の因果とは思ったが、それでも彼が明日の仕事を「平気だから」と言うだろうか。
藍曦臣は身なりを整えると、外廊へ出た。
ここは蓮花塢である。まだ、家僕も起きている時刻であった。藍曦臣を見た家僕はひっくり返りそうになりながらも、素直に藍曦臣の求めに応じて江澄のための湯を用意してくれた。それから、気をつかってか夜食にと包子まで持ってきてくれた。
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