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    蜂須賀

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    蜂須賀

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    レカペリターンズの時の無配にしてたツイログまとめ。
    こっちに移植。

    #SweetHome
    #ジェホサン
    jehosan.

    日々の擦過傷 ー序ー■ピョンさんとこのサンウクちん
     
     本読んでる先生の背中にのしかかるサンウクちん、顎を肩に乗せて後頭部を先生にすり付けてる。
    「…なに、重いですよサンウクさん」
    「べーつになんでもねぇ」
    「なんでもありますよ、重い」
       ・・・
     タバコはポイ捨てとかしてたけど、いけませんって先生に叱られて、吸殻入れを買ってもらってからは、ポイ捨て見つけたら拾ってそこに仕舞うようにさえなったサンウクちん。 
       ・・・
     サンウクちんの歯ブラシはすぐボサボサになる。
       ・・・
     退屈してソファに寝転んで、サイドテーブルにあったジェホンの眼鏡のレンズに指紋べたべたつけて遊んでて怒られるサンウクちん。
       ・・・
     ふたりの荷物が増えてきたので、大型の収納ボックスを買いに来たふたり。
    「これなら大人の男1人くらいは入れられそうだな。……冗談だ、そんな目で見るな…」
    ジョークが物騒なその男サンウク。
       ・・・
     サンウクちん、ちょっとご機嫌ななめで道路に転がってた空き缶を力任せに踏んづける。
    見事に靴に挟まっちゃって取れなくなった。足でガィガィやってるのをうしろで笑って見てる先生。
    「いじわるするからですよ」
    「何にだよ、取れ」
    「私が?」
    「早く」
     先生に取ってもらったあとそのまま去ろうとするサンウクちん
    「はい、ほら、ちゃんと捨ててきてください……投げない」
       ・・・
     先生はとても険しい表情をしてることがあって、そういう時真正面から声をかけると、慌てて笑顔を取り繕うので、サンウクは後ろから声をかけることにしてる。
     ジェホンが他人に向けるような笑顔を自分にされるのがサンウクは嫌い。
       ・・・
     サンウクちんの部屋着のスウェットは毛玉だらけ。
    先生は今読書に夢中になってる。
    ふと、横に座ってるサンウクさんが大人しいと気づいて目をやったら毛玉が一部分きれいに無くなってた。相手してもらえなくてつまんないけど、読書の邪魔したくないからチマチマ取って暇つぶししてたサンウクちん。


     
    ■様子のおかしい先生

     サンウクちんは脱いだものをそのへんにぽっぽって平気な顔をしていましたが、ある朝それらを拾って洗濯機に放り込む前に顔をうずめて深呼吸する先生を目撃してしまってからは、ちゃんと自分でないないするようになりました。
     サンウクちんが最近脱ぎ散らかさない理由を悟っていましたが洗濯機からもう一度出してこっそり吸えばいいことなので先生は特に気にしていません。生ものの香りもさることながら一旦主を離れたものの香りもまた、格別です。
       ・・・
     お部屋で見つけるチリチリ毛さんを集めてたのをサンウクに見つかって「あなたの一部だと思うとなんとなく捨てがたくて」と言い訳したところ「お前のかもしれねーだろーが!」ってキレられて、超納得した先生。かわいくてちょっとバカ。
       ・・・
     共に暮らすうちに持ち物の所有権が曖昧になる。
    「あ?お前それ俺のTシャツ」
    「え?あれ、…スンスン…ほんとだ、サンウクさんのでした(ニヘラ」
    「…………」
    洗いたてのはずのTシャツ。
       ・・・
     ジェホン先生は時々ウクちゃんと枕をこっそり交換してる(匂い的な意味で)
       ・・・
     左側伏位で眠るサンウクさんのどっち側に寝るかと言う難問に取り組む先生。
    サンウクの左にいれば、かわいい寝顔を眺めていられるし、右に位置取りすれば、バックハグから愛撫に持ち込みやすい。
    「サンウクさん、わたし!どうしたら……」
    「……知らねぇよ……」
       ・・・
     二人組制度でシャワーの時間も同じだったとして、
    「あの、サンウクさん、今ここで自慰を済ませてもかまいませんか?」
    「………知らねぇよ…」(ドン引き)
       ・・・
     夕食後、サンウクがどうにも心ここに在らずなのが気になって、でも理由を聞けなくて、デザートのイチゴを出すことも忘れて、悲しくて、だけど寝る前に歯磨きしてる時、口内炎が痛いだけだったと知ってお顔がパァ!てなる先生。
    「見せて、見せてください!」
    「いや、痛ぇ」
       ・・・
     サンウクがスポーツニュース見て相手してくれないから、サンウクの足の裏に顔くっつけて「ちょっとサンウクさんやめて、顔を踏まないで下さい!」って渾身の小芝居ボケをかましたのに無視される先生。
       ・・・
     サンウクは大抵野外で働いているので、雨が降り始めると教科書の音読が一瞬途切れる先生。
       ・・・
     ふたりしてジョギングした帰りのEV、いつもと違う体臭に、また心拍数の上がるふたり。
    深呼吸したいのを、我慢してる先生。



    ■差異

     街歩きデート中、降り出した雨
    屋根下へと走り出す人々
    「サンウクさん、私たちもあっちの庇に……」と振り返って、のんびり歩いているサンウクに動揺するジェホン。
       ・・・
     サンウクは先生か読書に集中してる時はそっとしといてあげるし、読んでいるようで読んでない時があるのも見抜くけどそっとしといてあげる。
    でも、ジェホンの目の届くところにいてあげる。
       ・・・
     サンウクがソファでうたた寝してると先生はブランケットをそっと掛けてあげるし、サンウクはコックリコックリしてる先生の隣にボフッと座って頭ガッてして膝枕で寝かす。
       ・・・
     ジェホンの前でしか泣かないサンウクと、サンウクには涙を見せたくないジェホン。
       ・・・ 
     押しつぶされそうな外圧から必死で己の輪郭を保とうとしてるのが先生で、内圧をその外殻によってなんとかその身の内に押しとどめているのがサンウク。
       ・・・
     先生はサンウクの望むものを与えたいと願っていて、サンウクはジェホンに渡したいと思うものを与えてる。


    ■ふたりくらす
     
     本当に、たまに、たまにだけど、サンウクとごはんの準備して、美味しそう!はやくはやく!熱いうちに食べましょ食べましょ!ってなってる時、先生はお祈りを忘れる。
     そんな時サンウクはちゃんと気づいて心の中で代わりに祈ってあげる。
     かみさま、俺たちに今日も美味しい食べものをありがとうございます。
       ・・・
     毎晩一緒にごはん食べはしないけど、一緒に食べる時はお祈りが終わるまで待ってあげるサンウクさん。でも、終わったら秒で食べ終わってさっさとベランダにタバコ吸いに行くサンウクさん。
       ・・・
     日曜の夕方、退屈しているサンウクは、本読みながらゴルフ中継見てるジェホンのスウェットの背中にもぐりもぐりする。
     バーディパットを息をつめて見てたジェホンはノーリアクション。脇腹噛まれるまで2秒。
    「……痛っっ!!」
    「…………?!」
    「…えなんで?!なんでやった方がびっくりしてんですか?!」
    思いのほか歯が入ってしまったらしい。
    自分でやってびっくりしたのと、ジェホンのツッコミがつぼに入って笑い出すサンウクと、「こら!!これはダメですよ!!ほんとに痛かった!!もぐってないで出てきなさい!!……服が伸びる!!サンウクさん!!」て怒るジェホン。
     その夜寝る時に、サンウクさん、おくち開けて、って犬歯見て、ほんとに尖ってる……ってなぞると、おまえも噛んでいいぞとサンウクはジェホンの指を舌で誘う。

       ・・・

    あくびは感染る。
    膝に抱いた飼い猫に続いてサンウクも大きなあくびをした。もふもふとしたひとりと1匹を眺めていたジェホンが、2度目に開いたその大きな穴に人差し指を差し入れる。
     次の瞬間、ガリッ!当然ながら閉じられた前歯にその指が挟まれる。
    痛った!!ジェホンが思わず叫ぶ。
    「ばかだろうお前!」
    事態を理解してサンウクも怒鳴り返す。
    「いや、すいません、ほんとなんとなく………」
    歯形がくっきりとついてしまった指を見てジェホンが笑う。
    「ああ、薬指にすればよかったです………」
    「………ばかだろう、おまえ………」

       ・・・
     
     七夕の雨空を見上げて「……織姫さん彦星さん、今日は逢えないんですね…」って悲しい顔したジェホンに、サンウクが「お前の彦星はここにいるだろ」ってふざけて喜ばせようとしたのに「えっ?!彦星は僕でしょう!」って返されてちょっとケンカになった。
       ・・・
     くっついてウトウトお昼寝中。
    「……ッッ!てか、あっつ!さすがに体温高すぎやしませんか、ちょっと離れて寝て!」
    ムッとしたスネウクちゃん「あ〜よく言われるわ〜」と反撃に出る。

       ・・・

     先生が毎朝お見送りのちゅうを根気よくおねだりしていたら、寝坊して慌てていて先生自身が忘れてた日、靴履いて振り返ったら目を瞑って待ってるサンウクがいた。
     努力は報われる。

       ・・・

     先に寝るって寝室に行ったサンウクがしばらくして「頭痛いから薬をくれ」って起きてきて、「!」ってなった先生が、脱水じゃないかとホットポカリを飲ませ、
    冷えたんじゃないかと靴下を履かせ、ソファの自分の足の間にサンウクを座らせて首と肩をマッサージし始めたところで、先生のお膝に頭乗せてコテンと寝ちゃったサンウク。お薬は飲んでない。

       ・・・

     サンウクは年に数回、高熱をだす。
    身体のうちっかわにある熱が噴き出るように。
    そういう時は絶対にそばに寄らせてくれなくて、ひとりでお布団で丸くなってる。
     2日くらいたつと、お布団から出てきて、ガブガブお水飲んで、お風呂して、微熱くらいになる。
    そうしてやっとお世話させてくれる。
     何度か経験して、先生が扱いを覚えた頃、微熱期には先生にくっついて離れないサンウクができあがってる。
     大抵夏なので、暑い。もたれてきて重いし。

       ・・・

     熱帯夜、夜中にガバッと起きてドタドタ寝室出てってザバーーッて水シャワーかぶって帰ってきてバタンッて寝るサンウク。
    ジェホン「ちゃんと頭拭いて‼︎」

       ・・・

     サンウクは昼間にエアコンつけてんのあんまり好きじゃないので、つけないで頑張って床で溶けてるけど、時々ガバッと起きて水シャワーをザバーッしてくる。
    「だから!頭ちゃんと拭いて!ってか、なんで我慢すんですか?!」
    「…戦ってる。」
    「誰と!」
    「…おのれと…」
    先生冷めた目でリモコン、ピッ。

       ・・・
     
     
     退屈な日曜の昼下がりなんかにサンウクはふらっと散歩に出て戻らない。
    どこへゆくとも告げずに出るのに、ジェホンがちゃんと迎えにくるのがおもしろいから。
    どうしてわかる?と尋ねると、あなたのお友達の猫さんに聞くんですよ、とジェホンは笑う。
     俺はきっとそんなふうには探せないから、おまえはいなくなるな、とサンウクはジェホンに願う。

       ・・・
     
     穏やかにそれなり毎日を暮らしているけど少し未来の話ができずにいた先生に、ある時サンウクが田舎暮らしのテレビを見ながら「こんなところで犬と猫と暮らせたらいい」ってポツリと言った。
     そこに自分を想像できずに言葉につまった先生に「おまえも村の子供にでも勉強教えりゃいいしな」ってサラリと続ける。
     先生はちょっと泣いて「サンウクさん、私に居場所をくださってありがとうございます」ってお礼を言うけど、振り向いたサンウクは「おまえがあの時、俺にここにいろって言ったんだろ」て不思議そうに見つめる。

       

    ■掌編
     
     サンウクは時々、水で満たしたマグカップやコップを窓辺に置いておくことがある。
    それは眠る前だったり、散歩から帰った時だったり、まちまちで、特に彼なりの決まり事があるという訳でもないらしかった。
     その意味について、サンウクに尋ねてみることをジェホンは長いことしていない。まだ触れることのできていない、自分の知らない彼の過去にまつわることのようにも思えたが、彼がそうする時、表情の乏しいサンウクの気分を推しはかることに慣れてきたジェホンにも悲哀は感じられなかった。
     聞かぬこと、説明せぬことをお互い気にもしなくなった頃、ジェホンはそれに出会った。ショーケースでダウンライトに照らされていた薄いブルーのカッティンググラス。
     海のようでも空のようでもあるその色に、ジェホンは見入る。
     これが窓辺にあったなら。
     陽光の、曇天の、窓辺にこれがあったなら。
    ジェホンはそれを手に入れて、なにも言わずにサンウクに贈った。
     サンウクは、ありがとうと礼を言って受け取ったが、次に窓辺に置かれたのはいつものマグカップだった。
    何度目かにサンウクはそのグラスを手に取ってなみなみと水を満たし、陽の差す朝の窓辺にそれを置き、「きれいだな」と呟いた。


       ・・・


     付き合ってないけど同居してるふたり。それぞれの自室を持っている。
    ある夜、ふと目が覚めて、風の音が気になって眠れなくなったサンウク。
    時刻は、午前1時を過ぎたところ。
     いつも夕食のあとはお互い自室で過ごすから、ふたりが夜を共に過ごすことはあまりない。でも、今日のような土曜の夜にジェホンが夜更かしするのをサンウクは知ってる。
     彼の部屋の前まで行ってみる。扉の向こうに動く気配はないし、灯りも漏れてない。寝てるよな、と思うけれど、しばらく離れられなかった。
     強い風で窓が震えたと同時にジェホンのくしゃみが聞こえた。
    起きてるのか。
    思わずノックしていた。どうぞ、と返答がある。急に我にかえる。
     ──扉を開けてなにを言うんだ?起きてるかと思って。なんで?眠れないから。だから?、だから、一緒に。一緒に?──
     サンウクの長い逡巡に、ジェホンがどうしたんですか?と扉を開けた。
    ベッドサイドの柔らかい灯り、開いて伏せられた本を照らしている。何も言わないサンウクに、ジェホンが言葉をかける。
    「冷えますね。なにか、温かいものいれるので付き合ってもらえませんか」
     ジェホンはそれ以来、自室の扉は少し開けておくようになった。


       ・・・


     家賃節約でルームシェアすることにしたけれど、付き合ってはいないふたり。
     ジェホンは今ジクジクとした頭痛で眠れずに、ベッドの上に座って両手で顔を覆って目を温めている。
    薬を飲んでしまおうと顔をあげると、リビングを隔てた向かい側にあるサンウクの部屋が見えた。
    彼もまた眠らずにいて、ベッドに腰掛け背を丸め窓のほうを向いている。
     暗闇の向こうの、そのまた先の暗がりに息をしていないようなサンウクの横顔。
    わずかな窓灯りを映すその瞳の光がまるで哀しくて、頭の芯をさらに疼かせた。
     ジェホンは静かにそばまで歩いてゆき、自分を見上げたサンウクに乞う。
    「サンウクさん、どうか私をあなたの隣で眠らせてください」
    サンウクはゆっくりと瞬いて頷いた。


       ・・・


     サンウクは若い頃、解体を主な仕事にしていたけれど、事故で犠牲になったひとの僅かな保険金をくすねた手配師に暴行して逮捕されてから解体の仕事は辞めた。
     お父さんの件以降、暴力をふるったのはそれきり。
    寄せ場は変えなかった。他に行くあてもない。
    件の手配師もしばらくうろちょろしてたけれど、そのうち見かけなくなった。
     街の人は言う「掃き溜めには掃き溜めなりの自浄作用がある」
     サンウクは無心になれることを好む。
    土を掻き、泥水を掬い、汗を拭う。
    自分の身が傷むことも気にならなかったし、実入りもいいから解体の仕事をしていたけど、辞めてみて、好きな仕事でなかったことに気づいた。
     ガラから鉄筋を集める作業は己が身の臓物を浚える、気分がした。


       ・・・


     父親の事件からサンウクが復讐を遂げてしまったあとも、気にかけてくれていた高校の先生がいた。
     でも、サンウクは当時周りの気遣いに目を向けることなんてできなかったし、身のうちの憤怒を和らげてしまいそうなものを拒絶してもいた。
     のちに収容されてた施設に先生が面会に来てくれた時も会わなかった。誰にも許されたくなかったし、誰とも共有したくもなかった。施設の教官が代わりに受け取ってくれた先生の走り書きのメモも、破って捨てた。
     そこには、生きてください、と書かれていたけれど、やってしまったことの始末を自分でつけようとしていることを見透かされたようで、ただ悔しかった。それでも結局、父の守ろうとした身体を粗末に扱うことはできなくて、サンウクは生きた。

     大人になって、世界のかなしいことや、やさしいことが、サンウクの中に積もってくると、当時先生の気持ちを受け取ることができずにいたことを、後悔もしたし感謝もした。
     
     時を経てからでも受け取るものがあることを、サンウクはそうやって知った。
     深く理解し合うには短かった時間、多くは交わせなかった言葉。ジェホンが目の前からいなくなっても。それはきっと自分の中に積もっていて、いつだって、ジェホンのくれたものを受け取ることができるって、その確信が、サンウクのジェホンへの弔い。
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    蜂須賀

    DOODLEちょっと不思議話、1篇。
    弐之助さん主催のアンソロジー『幻想奇譚蒐集録』より再掲
     二次元、映す面、その輪郭 三綴りその朝は頭痛と上がってくる胃酸の不快感で不機嫌に髭をあたっていた。電動は好かないから毎朝カミソリを使っている。
    目覚めたのは居間の床だった。カーテンを閉める習慣を忘れて久しい窓から射す朝日が、目の前のアルミ缶から零れた液体と、緑の瓶に当たり煌めいていた。まるで他人事のようにそれをぼんやり眺めるが、数時間前の自分と今の自分が繋がっていないわけはない。浴びるように飲むアルコールはやがて循環代謝され頻繁に通うトイレで体外に排出されるものが、飲酒したという自己嫌悪だけはそうはいかず、体内に溜まり続けた。肉体を管として、なにもかもがただ通り過ぎればよいものを。
     うつろな顔と荒れた肌を見たくなくてカミソリを当てる部分だけに視線を集中する。それから目を閉じて指先の感覚で顎のラインと三日分の伸び丈を探る。ふと、かすかなカビの匂いがした。のろのろと手を動かしながらぼんやりと思う。雨? いや、ついさっき陽の眩しさで目が覚めたのだ、そんな予報だったか。天気などに関心を向ける生活でもないが、けれど時折見上げる空の色を無意識に読む癖程度は残っていた。
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