手水鉢の金魚ngro Ver.ここは外界から切り離された丸くて小さな世界。
硝子製の器を満たす冷たい水が心地いい。
ふわふわ揺れる水草にくっついた酸素の粒を、自慢の尾びれでぱちんと弾く。水面へと上るそれを目で追う自分は、世にも珍しい白の琉金。
金魚はぼーっとしているだけで「きれい」「かわいい」と褒めて貰えて餌も貰える観賞魚。
黒和金やらんちゅうと同じ金魚鉢で飼われたこともあるけれど、彼らとは気が合わなかった。きままに泳いでいるだけでいいのに小競り合いばかりするんだ。平穏な暮らしが俺の好み。なにも考えたくないや。
あー、暇だ。
平穏安楽な暮らしが好きだとは言った。でもたまに話し相手が欲しくなるときがある。そんなある日、人の姿に化けて飼い主にせびった。
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