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    yuno

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    yuno

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    家事手伝いレベルが残念な無限の話。ほのぼの可愛い無風話を書こうとしたらこうなりました。いつもの残念系です。虚淮さんがお姑さんみたいです。

    #无风
    noWind
    #無風
    noWind

    【无風】『家事手伝いあれこれ』 無限は家事ができない。
     特に加熱する調理がまったくできない。
     じっくり焼けと何度言っても肉や魚を生焼けにするし、家電製品でタイマーをセットしたら何故か爆発する。
     じゃあ野菜を切り刻むだけならと任せてみたら、何でもやたら細かくみじん切りにされた。俺は酢豚を作ろうと思ったのに。
     かろうじてお湯は沸かせる。やかんに水を入れすぎて、沸騰させるたびにコンロが水浸しになるけれど。

     あまりに台所仕事が向いてないので、諦めて洗濯をさせてみようとしたら洗濯機に洗剤を入れずぎて泡だらけになるし、この間はお風呂を沸かそうとして栓を閉め忘れていた。
     ごみ出しを頼めば、何でもかんでも持っていこうとする。ごみによって出す曜日が決まっているんだと言い聞かせたのに、未だによくわかっていないらしい。
     なんでだ、張り紙まであるのに。なんで見ないんだ。まさか読めないのか?

    「あいつ、人間なんだよな……?」
    「そのはずだが」
    「なんで俺より人間の暮らしができないんだ?」
    「なぜだろうな」

     遊びに来てくれた虚淮につい愚痴をこぼしてしまう。
     いや、諦めている、諦めてはいるんだ。あいつにはもう家事は期待していない。むしろ何もするな。

    「調教はしないのか」
    「なんだよ、調教って。しないよ。俺は疲れた」

     何も、何もしてくれないのが一番いい。
     爆発させた電子レンジやその周りを片付けたり、吹きこぼれたコンロの周りを掃除したり、泡だらけになった洗濯機周りを拭いたり、出す日じゃなかったごみ袋を取りに行ったり。そういうことを俺はもうしたくない。あれは疲れる。本当に疲れるんだ。

    「俺が妖精で良かったよ。もし人間だったら、毎日仕事にでかけたりしなきゃいけないだろ。みんな日々忙しそうにしてる。仕事して、食事を作ったり掃除をしたりして、それだけで毎日くたくたになりそうなのに、その上あいつのやらかした後始末をやらなきゃいけないとなったらさすがに無理だと思う」
    「そうだな。即離婚だろう。同棲解消だな」
    「そうだな……」

     否定できない。
     そもそもあいつ、人間のくせに、なんで人間らしい生活ができないんだ。今までどうやってくらしてたんだ? 四百年も何してたんだ??

    「風息。私は離婚しない」

     同棲も解消しないよ。

     ちょうどタイミングよく無限が外出先から戻ってきた。そんなに大きな声で話していたわけじゃないのに聞こえたらしい。地獄耳か。

    「おかえり。あんたにしちゃ早かったな」
    「ただいま。大した任務じゃなかったからね」
    「道には迷わなかったのか?」
    「……」

     返事がない。どうやらそれなりに迷ったらしい。だからなんでだよ。スマホって地図があって道順を案内してくれるんじゃないのか?

    「帰ってきたなら手を洗ってこい。お茶の用意、しといてやるから」
    「ありがとう」

     お茶請けは虚淮が持ってきてくれたからな。そう洗面所に消えていく背中に投げかけて、湯のみ茶碗をもう一つ取りに行く。
     甲斐甲斐しいなと虚淮が呆れていた。まあ、これくらいはしてやったって別にそんな、甘やかしのうちに入らないだろうし。普通だろう?

     そうしてお茶を煎れ直し、お菓子をつまんで改めて一息ついて。
     俺が煎れたお茶を呑み、虚淮が持ってきてくれた茶菓子を三つ胃袋に収めた無限を虚淮が呆れたように眺めやった。

    「お前、本当に食うだけで何も手伝わないんだな」
    「……そうでもない」
    「嘘をつくな。話は風息から聞いている」
    「……洗い物を手伝ったりとか」
    「割らない範囲でならな」
    「部屋の掃除したり」
    「ああ、掃除機はかけられたな、そういえば」
    「洗濯物を干したり」
    「布団干すのを手伝ってくれるのは助かる。他の細々したものは、きちんと広げてから干してほしいけど」
    「……」
    「監督されながらじゃないと満足に手伝いもできないのか?」
    「……」
    「食事くらい、自分で作れるようになったらどうだ。そもそも私たちは食事をしなくても生きていける。風息はお前に合わせてやっているんだぞ」
    「虚淮! いいんだ、それは。頼むからこいつに料理をさせようとしないでくれ!」
    「風息……」

     いや、本当にそれはもういいんだ。頼むからさせようとしないでくれ。お願いだ。
     懇願するような目をしてしまい、虚淮が哀れみとも蔑みとも取れるような目を向けてくる。わかっている、努力放棄した俺が弱いんだ。でも、仕方ないだろう?

    「せめて出来合いのものを買ってくるとか、食べに行くとかあるだろう」
    「まあな」
    「でも、風息の作るご飯は美味しい」
    「おまえ、そう言えば許されると思うなよ」

     イラッとした虚淮の声音が冷たい。

    「私も、たまにだけれど、食事の用意をすることはある」
    「ほう?」

     買ってきたパンでも温めるのか? 皮肉げに笑う虚淮に、俺はいやそれもできない、失敗するんだと首を振った。
     オーブントースターで温めようとすればワット数を間違えてまっ黒焦げにするし、電子レンジで温めようとすれば何故かべしゃべしゃになる。本当になぜなんだ。

    「言ってみろ。何なら上手く出せるんだ」
    「みかん」
    「……」
    「…………」
    「…………」

     ああ、そうだな。思わず俺は窓の外を眺めた。いい天気だ。
     そうだ。みかんは箱から出してくるだけだからな。加熱も何もない。何なら皿に乗せることもしなくていい。
     そういえば、応用でりんごも剥けたっけ。あれは薄くきれいに剥けていたな。俺より上手いかもしれない。

     呆れ、軽蔑の眼差しを向ける虚淮と、悪びれずに胸を張る無限と。向かい合うふたりの仲裁も諦めて、俺は窓の外を流れる雲をぼんやり見つめた。
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