頼まれごと2最初は気が重かった皇子に対しての魔道の指導も蓋を開けてみれば楽しいものになった。人に教えるということは自分の勉強にもなる。リオンは熱心に勉強し、あれこれ聞けばしっかりと受け応えてくれるノールと親しく接してくれるようになった。お互いがお互いのためになっている関係なら良好であるはずだったがノールが闇魔道士ということで一部の人にはそれが面白くない人間もいた。
皇子によからぬことを教えていないかとさえ疑うものすらいた。神への不義や邪悪なものへの教唆・・・どこから湧き出るのかわからない話がノールの耳にも聞こえてくる。皇子に対して魔道の指導はあまり闇魔道の話はしないようにしていた。それはこの仕事を受けるときも極力教えないで欲しいと遠回しに言われていた事でもあった。
あまり波風を立てない方がいい。ノールはそう思って自分からそう言った話をすることは出来る限り避けるようにしていた。
「ノールは闇魔道士なんでしょ?」
その日はノールが持ってきた本を読み合わせていた。
「そういう事になりますね」
皇子には引き篭もりがちの人生のせいか少し世間に疎いところもある。そしてそれは例外なく神職と闇魔道士の確執についてはも言えることだった。
「最初見たとき怖い人かなって思ったけどノールは全然怖くないし、思っていたのと違うからびっくりしたんだ」
「闇魔道士といっても人間ですから色々な人がいると思います」
「じゃあなんでノールは闇魔道士になったの?」
「家系的なものが大きいですがわかっていないことが色々あるからでしょうかね」
「そうなの?」
「・・・少し喋りすぎましたね。あまり闇魔道の話はしないでくれと言われているのでこれ以上の詮索はしないでいただけますか?お互いのために」
「・・・そう。うんわかった」
普段温厚な人間が口を尖らせている。
皇子の不満で残念そうな顔をこのとき初めて見た。
目の前にいる自分というより周りの大人に向けられた純粋な怒りだったのかもしれない。
随分と気に入られすぎたのか、それともこちらが仲良くしすぎたのか。
少し距離をおいた方がいいと思いはじめる出来事だった。