青天井内緒にしているわけではないけれど、五条には五条自身の収入源がある。成人して独立してからは、実家絡みの金は何かと面倒なので、自分の自由になる資金を調達しようと学生時代に始めた株式投資があった。勿論、労働の対価も支払われているから、贅沢しなければそれだけでも十分暮らせるのだけれど、育ってきた環境によるものか、それなりに目や耳や舌やらの五感は十二分に肥えていて、慣れ親しんだものを手に入れるのにあって困るものではないので、上手く遣り繰りをしていた。今はスマホがあれば、隙間時間に情報チェックをして取引出来るし、五条自身の勘の良さもあってか、常に変動する株式において、ある一定以上の利益を出していて、実際に働かなくても暮らせる程になっていた。
今日も仕事の合間にチェックをしていると、数日前から気にしている銘柄がまた上がっている。
「青天井、かな。」
そうつぶやくと、近くにいた夏油がこちらを向く。
「青天井?」
「そ。青い空でいい天気だね、傑。そろそろまとめて休み取ってどっか行こうよ。デンマークとかどう?」
「青天井、ってそう言う意味だったんだ。悟からそんな言葉を聞くとは思わなかったよ。それにしても、何でデンマーク?」
手早くポイントを押さえて取引をすませると、スマホの画面を切り替えて、売りに出されていた島を見せる。
「島一つ丸ごと売ってるんだって。良さそうじゃない?プライベートビーチ含むプライベートアイランド。」
「島を買うのかい?悟。」
あまり見ることのない、びっくりした顔の夏油が可愛く見えて、五条の気持ちも上がる。
「たまたま見かけて面白そうだなー、と思っただけ。別にデンマークじゃなくてもいいよ。傑の行きたいトコがあるなら。」
それなら私は温泉に行きたいなぁ、と言う夏油の肩に腕をまわすと、耳打ちする。
「じゃあサッサと仕事片付けて休暇申請しよーぜ。」
「それはいいね。でも二人一緒に取れるかな。」
それは上手く取引するでしょ、と、ある程度大人になった五条が請け負う。その後、二人がどこで休暇を過ごしたかは、二人だけの秘密。