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    okeano413

    @okeano413

    別カプは別時空

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    甲操 夕暮れの待ち人

    ##甲操

    2020.07.05

     明日の仕込みと今日の帳簿を付け終えて外に出ると、階段に座り込んだ来主が野良猫に囲まれてなにやらにゃあにゃあ鳴いていた。会話しているつもりらしい。
     こんなにも島のどこに隠れていたのだか、足に白い靴下をはいているようなのと、薄茶色の体毛に焦げ茶の斑が散らばっているのと、誰かに可愛がられているのか、一番毛並みの良い黒猫と。他にも何匹かに囲まれながら、ドアの音にも気付かず「会話」を続ける背中をどうしようかと見ていると、両手で持ち上げられたサビ猫がこちらを見上げながら短く鳴いて、それでようやく来主も俺を振り返った。
    「遅いよ」
     待っているとは知らなかったからな。喉まで出かかった言葉を飲み込んで一言謝る。
     さほど怒ってはいなかったようで、サビ猫を抱えながら駆け上がってきた来主を受け止めると、服が少し冷たくなっていた。挟まれたサビ猫が不服そうに呻くのにも構わず体重を掛けてくる来主は、なにやら機嫌がいいらしい。
     下に残された猫たちは、用事は済んだとばかりにさっさと散らばっていった。
    「ずっとここで待ってたのか?」
    「おかあさんに頼まれたからね。今日は甲洋くんも連れておいでって」
     「この子たちと話してたから退屈じゃなかったよ」、そう言って降ろされたサビ猫は、早く連れて帰れと言うようにひと鳴きして店の暗がりに消えていく。まさか、このあたりに住み着いているのか?全く知らなかった。今度見かけた時のために餌を用意しておくべきかもしれない。
    「今日のぶんは終わったんでしょ?おかあさんのご飯が冷めちゃう前に帰ろうよ」
     滑り込ませてきた手は猫を抱えていたからか温かい。握り返してやると、待っていましたとばかりに走り出される。元気のいいことだ。
    「みんな甲洋を待ってるよ、ほら、早く!」
    「わかったから、前見て走れって」
     ショコラを迎えに行くだけのつもりだったが、今日もご相伴に預かることになりそうだ。来主に見られないよう、こっそり口元を緩ませた。
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