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    okeano413

    @okeano413

    別カプは別時空

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    okeano413

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    甲操 SS

    ##甲操

    2021.05.18

     僕に触れるように丁寧な動作を思い出しながら、スプーンに一杯分を拾う。フィルターの中で濃く膨らむ豆は彼の髪を思い出させる色合いで、部屋に広がる少し焦げたような香りは、抱き締めてもらえる時の緊張を引きずり出してくる。
     おかあさんだって毎朝飲んでいるのに、僕の中では、もうすっかり彼の象徴だ。
     失敗したな。さみしさを埋めたくて淹れたのに、余計に会いたくなってしまった。


    世界はずっと美しいのだなんてのは、とっくの昔から知っていた。それを教えてくれる豊かに書き残された物語から、情景を想像するのが好きだった。俺が見たならこんな色合いかも、とか、自分で書き残すなら手にした重みも伝えたい、とか、ありえないもしもなんかも考えてみたりして。そうやって、知ったつもりの空想を増やしてきたけれど。こんな、景色は知らない。感情を加味した風景の彩りの素晴らしさなんてのは、書物のどこにも記されていなかった。

    ↑ふたつは140字SSお題さん(https://shindanmaker.com/648286)から



     空は元から好ましかったけれど、この頃とみに色づいて見えると熱心に語る少年は、お喋りよりも、手元のグラスの汚れに集中しているように見える。飾らずに伝えてくれる言葉はひどく真っ直ぐで、取り繕ってなどいないせいで、調整されない熱量に灰にでもされてしまいそうだ。
    「ねえ、聞いてる?」
    「うん、聞いてるよ、大丈夫……」
     ちっとも大丈夫なんかじゃない。
    「じゃあ、今日も二人で空を見に行こうね。約束ね!」
     昨日で最後にしようと迷ったくせに、つられてもう一度頷いた。
     ああ、今日も。うぶな恋に焦がされている。



    2021.05.19

     重くのしかかる腕をどかせないまま、寝顔を見上げながら彼の心音を数え始めてから、結構な時間が経っている。
     きみってば、身を寄せるたびになんだかおかしな顔をしていたくせに、無意識だと、とんでもなく甘えたになるんだから。
     離すまいと抱え込んでくるのをなだめたくって髪をくしゃくしゃにすると、ますます強く引き寄せられてしまった。あったかい寝息が僕の髪に落ちてくる。起きる時間だよって、言いたかったのに。
     もう、仕方ないなあ。


     苺をひとつ取り出してヘタを落とす。内側に敷く用だから、縦にしたのを少し薄めに切り分ける。できたそばから皿を作って待つ手に乗せて、真白のクリームに埋めて行くのを横目に、次の苺をまな板へ。ホイップクリームとクレープを重ねるのを繰り返して、気ままに動く手が山を作り上げていく。
     粒ぞろいにできたという苺を大量に譲られたぶん、なかなか立派にできたから、半分は頭脳仕事の剣司たちに差し入れしようかな。
     最初に作ったのは、二人だけで食べきるんだって言われるかも。そうしたら、また次のケーキも二人で作ろうか。



     瓶詰めの飴玉をつまみ上げて、ここに置けとねだる舌に乗せてやる。食べに来てくれたこどもたちへのおまけとして用意してるんだけど、今ばかりは来主専用だ。とかく機転を利かせてくれた少年に、今日の礼と、ごほうびとして与えている。
     ……赤い舌が引っ込む様子は、別の情景を想像させるもので。
    「ね、もいっこ」
    「今日はこれで最後。俺にもちょうだい」
    「いいよ。口移しであげようか?」
    「ん。別のがいいな」
     慌てるかな。怒るかな。どっちでもいいや。あとのことは、噛みついてから考えよう。



    2021.05.29

    一日を締めくくる精算業務はマスターのお仕事だ。邪魔はしたくないけれど、退屈なので、利き手と逆の紙を抑えている方をくすぐって待つ事にする。だって隣にいるのに、触れられないのは寂しいでしょう。足のつもりで骨ばった手の背中をのぼったり、指切りのまねをしてみたり。ひっくり返す前に捕まってしまった。ペンは走り続けているけど、待ち侘びる間も繋いでいてくれるつもりらしい。絡めて握ってくれる手のひらの熱が、僕に与えてくれる彼からの恋心。


    夜中に冴えてしまった。生活習慣をなぞっているだけだから、二度寝の必要はないけれど。めずらしく背中を向けて丸まる甲洋がなんとなく別人に見えてしまったからには、強引に起こしてやろう、なんて考えるのも無理はないだろう。背中を指で擦る。里奈が教えてくれた、文字あて遊び。たった二文字で振り向いてくれた甲洋が、おれも、と囁きながら、大事に抱き締めてくれた。大好きなぬくもりのおかげで、穏やかな夢を見られそうだ。


    僕を守るのは一番さいごで構わない。きみの腕に繋がれるのは、誰もが寝静まる夜半で構わない。日の高いうちには世話人のように振る舞って、星の登る頃に仮面を外してもらえたなら幸いだ。人に慈しまれているきみが好きだよ。注がれる愛を少しずつ、信じ切って、微笑み返すのをいつまでも見ていたい。だけどやっぱり寂しくもあるから、毎日の終わりには僕を選んでね。

    ↑ふたつ
    https://shindanmaker.com/648286



    「ねーハニー、僕のピアスしらない?」
    わ、ばか。昨夜ふざけて呼び合ったのを仕事にまで持ち込むな。
    「すみません、こいつ、役作りに没頭してて……誤解させちゃ困るから、遊びはオフだけって約束したろ」
    「え〜?がんばって口に馴染ませたんだから、たくさん呼ばせてよ。社長もいいんじゃないかって許してくれたんだしさ」
    昨日の今日で?社長も社長で何を許してるんだ。スタッフさんが話の種を見つけたって顔で「操くんはダーリンって呼ばれてるの?」とか言うものだから、いたずらげに笑って頷いてしまった。
    「そーだよ!大事にしたいって顔で呼んでくれる、僕だけのかわいいハニー!」
    否定のしようが、ない……!!


    ラジオネーム削りichigoさんから。「こんにちは」こんにちは!お手紙ありがとう!「この頃春日井くんと操くんの呼び合い方にバリエーションが増えましたが、あれってどちらからの提案なんでしょう?きっかけなどもあれば聞いてみたいです。写真集の操くん、色気バッチリでどきどきしました!新曲も楽しみにしています!」最速のお手紙ありがとう〜!呼び方はハニーのことかな?僕たちドラマに呼んでもらう機会も増えたから、名作なんかを見てお勉強してるんだけど、お名前じゃなくても大好きだよって伝わる呼び方が可愛いねって話になってね。甲洋から呼んでみてっておねだりされたから、僕からハニー!って呼んであげたの。甲洋のお声、甘くて優しいから、ふわふわの気持ちになるよね。だからハニー。マジかよって顔されちゃったけど、ダーリンって呼んでみて欲しかったんだもん。しょうがないよね。甲洋から話し掛けてくれるなら、どんな呼び方でも嬉しいんだけど。それじゃあ次は、もくずのふくろうさん──



    2021.05.30

    せっかく王様にしてあげたのに、お前から抱きしめてとか、頭をなでてとか、いつだってしてあげられる行為をねだられ続けている。僕を好きにしていい口実をあげても、甲洋のかっこつけははがせないらしい。さすがにこれだけ連続で命令させたから、仕掛けを勘付かれてしまったかも。ふれてもらえないのがそろそろつまらなくなってきたから、次で最後のゲームにしようかな。え、なあに?僕からたくさんキスしてほしい?……もう!だからそんなの、いつだってしてあげるってば!

    https://shindanmaker.com/375517



    2021.05.31



    心を通わせる事が愛の確かめ合いというなら、僕らには手を繋ぐ必要もないし、直接言葉を交わす必要だってない。だってずっと直感的な方法で、言葉通りに気持ちと気持ちで繋がっていられるんだから。それでも僕らは手を伸ばす。別のぬくもりを感じたくて近傍を求める。彼の重みと暖かさと、抱き締めてくれる力強さと、呼んでくれる声のくすぐったさを感じられる体が震える瞬間が、僕の心が彼を求めてるんだと一番わかる。ずっと不便なのに、ずっと手間が増えるのに、そのほうがいいって、不思議だな。


    海辺を乱暴に進むたび、サンダルの隙間が痛いとか、肌が乾いてわあってなるだとか、よくも飽きずに騒がしい。真似して俺も腿を上げる。それなりに離れていた少年へ数歩で追い付いてみせて、振り返って与えてくれたゴールへ飛び込む。勢い余って、来主ごと砂浜に埋まってしまった。



    https://shindanmaker.com/648286



    襟から飛び出した髪をこっそり引き抜くと、半分黒い自分の毛が、中にも巻き込まれて入り込んでいる。
    昨夜、雑に脱いだせいでこいつの肌着にも絡まってたのか。接客中に思い出さないよう、今のうちに取り払っておかないと……
    「くすぐったっ、なにっ」
    「や、うん。触りたくて」
    「だからって朝から首なんか舐めないで!!」
    ……失敗したな。こんなんじゃ全然足りない。キスくらいなら、許してくれるかな……。

    https://shindanmaker.com/587150


    湿度が高い日にはコーヒー。乾燥した日には紅茶。心境よりも気象に合わせて飲料を変える甲洋が夜のおともを用意してくれる時、僕のはいつも変わらず、寝かしつけるようにホットミルクを出してくる。底をすくって金色に喜んだのが、そんなに嬉しかったのかな。僕の為に作ってくれたものがおいしいと嬉しいし、込めてくれたろう心の熱を想像すると、もっと心があたたかくなる。同じ気持ちになって欲しいから、たまには同じものをねだってみようかな。


    2021.06.01

     まどろみに与えられるぬくもりは、こうも心地よいものなのか。いつものようにシーツを共にしながら、半覚醒状態で、そっと撫でてくれる手に意識を傾けている。優しい手だ。あたたかくて、安心を与えてくれる手で、寝かしつけるように、ゆっくり撫でてくれている。
     ……過去得られなかった愛を、彼に求めるつもりはないけれど。いまさら変えられやしないものに、囚われていたって仕方がないけれど。どうしたって、彼らから欲しかったものを、今、見返りなく与えられている事が時々苦しくなる。
     答えのないものだから、いつまでも考え続けてしまいそうだ。もうよして、寝てしまおうと強く目をつむると、心臓に寄せるように抱き寄せられた。命の巡る音がする。
    「せめて今くらいは、考えないで。僕がずっと側にいるから。だから、いい夢を見てね」
     ……うん。きっと。一人じゃないから、お前とだから、優しい夢に行けるよ。
     それに、思考を割くなら、過去よりも未来を思うほうがいい。その続きも、明日の自分に託すとしよう。

    https://shindanmaker.com/320966


    2021.06.05

    愛を込めても音にはならない
    自由で気ままな空だとしても
    君の声がないからつまらない



     思いつきで連れられた真空の居心地は、思うより悪いものじゃない。ふわふわ浮かんで漂う時間は夢を見ているようだけど、来主の上機嫌は一時間と保たなかった。
    「ねえ、そろそろ楽しみ終わった? 僕はそろそろ、店の明かりが恋しいんだけど」
     連れ出したくせに。普段通りのつもりで直接返すも、賑わいの反論を引き出すには至らない。それなりに気に入ってしまったから、ここでしばらく過ごすのも悪くはない気分なんだけど。
    「だって、ここじゃ、きみの声が聞こえないよ」
     ……それだって、読心で済むのに?
    「にぶいなあ」
     なにが。
    「夢見心地で、機微まで薄れちゃった?」
     なんの。
    「ここじゃ、音と、光が届かない。心への呼び掛けも悪くはないけれど、響き伝わる声で好きをいっぱいにして呼んでもらえるのが、僕の一番の楽しみなんだよ」
     へえ。初めて聞いた。繋いだままの手を引っ張って、腕に落ちてくる少年を抱き締めた。そばにいるのに遠い感覚は、確かに少しつまらない。
    「帰ろうね、一緒に」
    「ん」
     星を蹴るように、浮かんだ空に別れを告げる。
     座標はどこにしようかな。少しずらして、一緒に海へ落ちてみようか。


    宇宙の果ての何処かじゃなくて、蒼星の上にきみと居たい
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