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    okeano413

    @okeano413

    別カプは別時空

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    甲操 きみのためにあけておく
    https://twitter.com/okeano413/status/1495358893853409283?t=JkMkby3ZiTZUmNGebdjSug&s=19

    ##甲操
    ##花唄恋歌
    ##パロディ

    2022.03.03

    『うそつき』
     電波越しの非難が耳をつんざく。滅多に聞かない強い語気に少々ひるんだが、対面じゃないのだからきちんと言葉にしなくては。群青のカバーを握り直して、聞こえないよう胸に溜まった落胆を吐き出す。
    「ごめん。約束やぶったりして」
    『今日、まる一日一緒って言ったのに。うそつき」
     操を家まで迎えに行って、思いつくままにデートして、それから俺の家でのんびり過ごす。そういう手はずだったのだけど、呼び出しを食らってしまった。大した内容じゃないし次の機会でも構わないんだけど、二人で過ごしている時にまた連絡が来たら面倒だと、一言謝って約束の日取りを変えてもらったのが今のこと。巻きで終わらせたとしても、移動時間で潰れてデートも半日ほどになってしまう。最初の予定と変わってしまうから、それなら別日にしようと申し出たのは失敗した。見栄を張らずに会いに来てと、最初に正直に頼めれば。
     今頃ベッドでみのむしになっているだろう。きっとお気に入りのタオルケットで頭を包んで、プレゼントした薄黄色のテディベアを抱き締めながら、俺に文句を言っている。
     ……まずい。想像したらますます会いたくなってきた。今から出掛けるのに。次の約束だってしてあるのに。
    『甲洋くんがやさしいからって、付け入りすぎなんだよ。甲洋くんにわがまま言っていいの、僕だけなのに』
    「ごめんな。俺の立ち回りも悪かったから」
    『あやまんないで。……しょうがないなんて言いたくない』
     ああ、寂しがらせている。ベアだか枕だか、顔をうずめたらしく、折角の声がこもっている。
     やっぱり、今すぐに会いたい。もともと泊まりの予定だったのだし、乗り換えも覚えさせたし。ちょっと心配だけど、一人で来てもらって問題ないはず……。
    「ねえ、操」
    『なに』
     彼の背が届かない上棚に隠してあった、ミントカラーの小袋を掴む。ちょっと埃をかぶってる。中身は小ぶりの鈴と白猫のキーホルダーを添えた、ずうっと渡しそびれていたもの。あの子は純白のリボンをどんな顔でほどくだろう。
    「……俺んちの、ポストにさ。プレゼント入れとくから、取りに来て」
     耳の後ろで情けない俺がばくばくとうるさい。直接渡せないし想定よりも相当ダサいが、機嫌をそこねっぱなしにはしたくない。
    『今度もらうんじゃだめなの? もう、おかあさんに出かけないって言っちゃったよ』
    「そう、悪いけど、急ぎ。今日中に来て欲しいんだ。道と暗証番号覚えてるよな」
    『ん、うん。じゃあ、お手伝い終わったら行こうかな……』
     なにより、操に出迎えられたい。いつか、今の家じゃなくっても、いってきますとただいまを伝え合えたらと、胸のうちを明かすのはまだ早いだろうか。
     いいや。贅沢は言うまい。まずは「プレゼント」を受け取ってもらってからだ。その次は……無事に出迎えてもらえてから考えよう。
    『晩ごはん、一緒に食べようよ。今から許してくれるなら泊まっていいんでしょ』
    「いいよ。メニュー決まったらメッセージ送っといて。材料買って帰るからさ」
    『……唐揚げ?』
    「……夏なのに?」
    『じゃあ竜田揚げ。さくさくのにして』
    「はいはい」
    『返事は一回でしょ』
    「はーい」
     タオルケットをめくって、毛の短いカーペットに足を下ろす音。気分で選んだ服を、そそくさと着込む音。泊まりの日にだって楽しめるけれど、やっぱり朝から夜まで聞いていたい。自覚すると願望は加速するんだな。
    「十四時頃には帰れるから。鍵、開けて待ってて」
     名残惜しいが、そろそろ出なくては。支度を始めたらしい音に紛れるようこっそり囁く。さっさと終わらせて、もしも明かりが付いていたらただいまを言おう。いなかった場合は考えない。現実になったら悲しいから。
    『えっ』
    「じゃ、行ってきます。またあとで」
     すぐさまのコールに応えるのは帰り着いてから。受け取ってもらえますように。
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