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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    マト、ガンガ、アバ、ハドの幼児化

    人生が二度あれば 人生が二度あれば、と思うこともあるだろう。あの頃に戻って人生をやり直したい。そんな願望を持つこともあるかもしれない。だが所詮は叶わぬ願いであり、見るなら夢より現実だろう。
     だが広い世界にはそんな願いを叶えるアイテムがあるという。アバンは好奇心からそのアイテムが欲しくなった。いったいどんな仕組みになっているのか調べたかったからだ。
     そのアイテムはとあるダンジョンの奥深くに眠っているという。さっそくアバンはダンジョンへと挑むことにした。同行したのはハドラー、マトリフ、ガンガディアで、強すぎるメンバーのおかげでアイテムはあっさりと見つかった。
     そこまでは良かった。ところが、ダンジョンから全員揃ってリレミトで脱出した途端に、ハドラーとマトリフが喧嘩をはじめた。ダンジョンを進む道中でも言い合いをしていたのだが、ついに喧嘩にまで発展してしまった。
     ハドラーとマトリフはお互いを罵り合い、小馬鹿にし、揚げ足を取った。さながら子どもの喧嘩だ。ガンガディアが必死に仲裁をしたが、今日はそれでは収まらなかった。
     アバンがまあまあ二人とも、と言おうとした時だった。ハドラーが振り上げた手がマトリフの構えた手に当たり、その手から呪文が不意に飛び出した。ガンガディアが咄嗟に呪文を相殺しようとしたのだが、手元が狂ったのか放った呪文がアバンのほうへ飛んできた。
     アバンは咄嗟に剣を抜いて海波斬で呪文を切り裂いたのだが、そのはずみで持っていたアイテムを落としてしまった。ダンジョンで見つけてきた、人生が二度あればという願いが叶うというアイテムをだ。
     地面に落ちたアイテムは発動してしまった。その場にいたアバン、ハドラー、マトリフ、ガンガディアはそのアイテムの効果をその身体に受けてしまった。
    「……ここはどこだ」
     少年の声があたりに響く。肩のあたりまで伸びた銀髪は後ろへと流され、その一房が額へとかかっている。幼い顔つきだがその眼光は鋭く、強い意志を感じさせた。まだ成長途中であることを感じさせるしなやかに伸びた手足に、黒いローブが余っている。この少年こそが魔王ハドラーがアイテムの影響で若返った姿だった。
    「誰だてめぇ。まさか魔族か?」
     そう言ったのは別の少年だった。小柄でまだ声変わりのきていない高い声音だが、発せられた言葉はぶっきらぼうだ。淡い髪色をしており、重たい瞼の奥にある小さく黒光りする目が油断なく辺りを窺っている。自分よりも上背のある少年ハドラーにも臆する様子はない。この少年がマトリフが若返った姿だった。
    「……」
     言葉に窮しているのはむくむくと丸い体をしたトロルだった。顔も体もまん丸く肉がついているが、それを恥じるように背を丸めている。表情は暗く、神経を尖らせているような目つきをしていた。突然の状況に戸惑ったようにゆっくりと後退っている。ガンガディア本人は二度と戻りたくないと思っていた若い頃の姿だった。
    「……これは困りましたね」
     一番冷静だったのがアバンだ。この中で唯一、この年齢で全員を知っていたのがアバンだったからだ。どうにも見覚えのある三人が歳若い姿で目の前にいて、足元には怪しげなアイテムが落ちている。これは何らかのアクシデントがあったのだと瞬時に気付くほどに、アバンは聡明な少年だった。十五歳の勇者は伊達ではない。
    「ええと、とにかく落ち着きましょう」
     アバンは両手を広げて友好的な態度を示そうとした。だが遅かった。少年マトリフが「やんのかてめえ」と少年ハドラーを睨め付けたと同時に、少年ハドラーの裏拳が少年マトリフの顔面に直撃した。
     その衝撃で少年マトリフははるか後方まで吹き飛んだ。少年ハドラーは手加減など知らない。生意気な人間を殴ることなど何とも思っていなかった。
    「ちょっと、喧嘩はいけませんよ」
     アバンは慌てて少年マトリフに駆け寄ろうとしたが、それよりも早く少年マトリフが立ち上がった。マトリフは口元を押さえている。鼻からは血がぼたぼたと流れていた。しかし回復呪文を唱えたので血はすぐに止まる。マトリフは手の甲で血を乱雑に拭うと、少年ハドラーに手を向けた。
    「ザラキ」
     途端に地面に膝をついたのはハドラーだった。両手で耳を押さえて顔には苦悶の表情を浮かべている。
    「ストップストップ! 駄目ですよマトリフ!」
     加減を知らないのはマトリフも同じだった。顔面へのパンチをまともに食らって本気で怒っている。
    「あの、ガンガディア! こっちへ来て二人を止めてくださいよ!」
     アバンはマトリフを羽交締めにしながら言った。ところが少年ガンガディアはダンジョンの入り口で隠れるようにしている。
    「あれ、ガンガディア?」
    「ニンゲン……キライ……」
     少年ガンガディアは暗い眼差しでこちらを見ていた。助けてくれる気はなさそうだ。
     マトリフは呪文をやめないし、ハドラーは今にも反撃を繰り出そうと拳を握っているし、ガンガディアはジト目で様子を見ている。
     アバンは思わず叫んだ。
    「どうしろって言うんですか!!」

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    kisaragi_hotaru

    MAIKINGガンマトとハドポプが混在している世界線のお話の続きです。マトポプは師弟愛です。ひたすらしゃべってるだけです。
    ダイ大原作と獄炎のネタバレを含んでおりますので、閲覧の際には十分にご注意くださいませ。
    捏造と妄想がかなり激しいです。いわゆる、何でも許せる人向け、となっております。
    このシリーズは一旦ここで完結という形を取らせていただこうと思います。続きを待ってくれておりましたなら申し訳ないです……。
    大魔道士のカミングアウト 5 「――ハドラー様は10年前の大戦にて亡くなられたと聞き及んでいたのだが」

     本日二度目のガラスの割れる音を聞いた後、ガンガディアから至って冷静に尋ねられたポップは一瞬逡巡して、ゆっくりと頷いた。

     「ああ、死んだよ。跡形もなく消えちまった」

     さすがにこのまま放置しておくのは危ないからと、二人が割ってしまったコップの残骸を箒で一箇所に掻き集めたポップは片方の指先にメラを、もう片方の指先にヒャドを作り出し、ちょんと両方を突き合わせた。途端にスパークしたそれは眩い閃光を放ち、ガラスの残骸は一瞬で消滅した。

     「そうか……ハドラー様は君のメドローアで……」

     なんともいえない顔でガンガディアはそう言ったが、ポップは「は?」と怪訝な顔をして振り返った。
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