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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    モブマト。ガンガへ当てつけのつもりでモブに抱かれようとするマト

    誘われ 当てつけなんて馬鹿げている。だがこの鬱憤を酒だけでは晴らせそうにない。
     手元の酒は緩くなるばかりだ。そういう目的の為の酒場に来ているが、悲しいことに誰からも声がかからない。余計に惨めさを感じるが、自分から声をかける気にもならなかった。
    「あら」
     その声が自分に向けられていると気付いたのは、隣に座った誰かの長い髪が腕に触れたからだ。
    「お久しぶりじゃない?」
     髪の長い女が言った。赤いドレスが目につく。誰だったかと思って顔を見れば、何十年前か前に会ったことのある女だった。
    「よく覚えてたな」
    「あなただって覚えていたでしょ」
     その何十年か前、マトリフは同じようにこの宿で飲んでいた。その時にどんなきっかけだったか声を掛けて、彼女と一夜を過ごした。
    「まだ現役なの?」
     揶揄うような声音に昔と変わらない愛嬌がある。お互いに同じ分だけ歳を取っているはずなのに、彼女のほうがずっと若く見えた。
    「誰でもいいから今夜の相手を探しててな」
    「誰でもいいって言うなら、声くらいかけたら? この店に来てから誰とも喋ってないでしょ」
     訝しんで彼女を見返せば、だってここは私の店だもの、と赤い紅が弧を描いた。どうやらずっと見られていたらしい。
    「じゃあ誰か紹介してくれよ」
    「好みは変わってない?」
     そうねえと言いながら彼女は店を見渡す。誰かを探すように身体を捻る彼女の胸元で豊満な白い胸が揺れていた。
    「……あら、あの娘今日はいなかったのね。じゃあ誰にしようかしら。私とする?」
     初めからその気だったのだろう。だが腕に当たる柔らかな感触や、心をくすぐる甘い声が心地良くてつい頷いていた。
    「じゃあ来て」
     腕を引かれて立ち上がる。いざ致すときに支障があってはいけないと酒はさほど飲んでいないのに足元がふらついた。身体が傾いて彼女へ寄りかかってしまう。
    「きゃっ」
     支えきれずに彼女が小さく声を上げる。このままでは倒れると思っていたら、太い腕に支えられた。
    「大丈夫かい」
     マトリフは別の客に支えられていた。見れば若い男だ。身体が大きく筋肉質で、笑顔に慣れている。彼女がお礼を言っている口ぶりから親しい間柄だとわかった。
    「じゃあね」
     彼女が手を振って男が席に戻っていく。マトリフはその男から目を離せないでいた。
    「どうしたの?」
    「あいつ」
    「あの子がどうかした?」
    「あいつのこと誘っていいか」
     彼女はあからさまに驚いた顔をしてマトリフを見返した。
    「趣味が変わったの?」
    「……かもしれねえな」
    「まあ……いいけど」
    「悪いがあんたが声をかけてくれねえか。オレは先に部屋で待ってる。もし断られたらそれでいい。寂しく一人で寝るとするよ」
     マトリフは自分でも驚きながら早足で部屋に向かった。宿屋の二階にはそのための部屋がある。マトリフは部屋に入ると大きなベッドにうつ伏せに寝転がった。酷い匂いで鼻が曲がりそうだ。何が染み込んでいるのか考えたくない。
     暫くすると足音が聞こえてきた。その足音はマトリフの待つ部屋の前で止まり、扉が開く音がした。足音がベッドの手前まで来る。マトリフが何も言わないでいると、ベッドが軋んだ。
    「待たせてごめんね」
     たしかな重量が背中にのしかかる。それは女のように柔らかくはない。だがそれを待ち侘びていた。男の手が背後からマトリフの顔を掴む。やや強引に後ろを向かされたと思ったら唇を塞がれた。分厚い唇と安い酒の匂い。熱い口内。頬に当たる短い髭。どこかで後悔している自分にマトリフは見て見ぬふりをする。
    「……せっかくだし、楽しもう?」
     頷くかわりに目を閉じた。男の手が熱い。この手がガンガディアだったらよかったのに。
     
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