驟雨 ふと静けさが響く。日が落ちた頃に急に降り出した雨はいつの間にか止んでいた。それに気付けないほどガンガディアは夢中になっていた。
雨の日に情を交わすようになったのはいつからだろうか。激しい雨の日は岩戸を閉めきって肌を合わせるのが暗黙の了解だった。
腕の中のマトリフは息を荒げて声を殺している。ガンガディアの背に立てた爪は、絶頂が近いためか更に食い込んできた。
やがて短い声を上げてマトリフが果てる。夜目がきくガンガディアは、マトリフの顔に浮かんだ笑みを見た。満足そうでいて、狡猾さが滲む。それは目的を遂げた策士の含み笑いであった。
ガンガディアはふと、自分が罠にかかった獲物であると知った。この世には天候を操る呪文があるという。そして今夜の雨は急であった。雲の流れから雨など降りそうもなかったのに。
雨が降り始めたとき、マトリフはその雨音を聞いて意味有り気にガンガディアを見ていた。言葉もなく寝台に腰掛けた彼を押し倒したのはガンガディアだ。
背が僅かに痛む。夜の雨を含んだ隙間風が背を撫でていき、引っ掻かれた傷がヒリヒリとその存在を主張していた。
策にはめられたのは面白くない。だが甘え下手の恋人の誘いだと思えば、どうしても愛おしさが勝ってしまうのだった。