ふゆばじ 『愛せるなら愛してみろ』 他愛もない話をしていただけなのに一体何がトリガーになったのか、千冬がいつになく真剣な顔でオレの事が好きだと言ってきた。冗談ではないと一目で分かったが、千冬が自身の感情を恋と勘違いしている可能性があると思った。それを指摘すれど食い下がられ、それなら現実を突きつけてやろうと千冬のネクタイを引っ掴んで後ろへと倒れた。オレの顔の横に手をつき目を白黒させる千冬に挑発的な笑みを浮かべながら言ってやる。「ヤれるもんならヤってみろよ」と。胸もなければ柔らかくもないオレの身体の何処に欲情出来るというのか。その感情は恋なんかじゃないと分からせてやりたかっただけなのに、オレを見下ろす千冬の顔が"男"に染まり、戸惑いに揺れていた瞳がどろりと欲を煮詰めたそれに変わった時。マジかよ、と呟くはずだった唇はがぶりと塞がれていた。