発端、あるいは天啓 その日村雨は、とある経緯で出遭った友人の発案により屋内型テーマパークへと足を運んでいた。もちろん村雨ひとりで、ではなく発案者──真経津を含む四人の友人達とともにである。ソロ参戦するほど当のテーマパークに思い入れはないし、そもそも初めての場所だ。
「へぇ、すごいね!」
「さすがに盛況だな。けどこれだとちょっと難しいかもなー」
エントランスを抜け、ライトアップされたフロアを見た真経津が歓声を上げる。その隣でぐるりとフロアを見回した叶は、動画配信を営みとする者の性か脳内で動画撮影のシミュレーションを行っているようだった。
確かにアトラクションの周囲は待機列に並ぶ客により密集地帯と化している。貸し切りにでもしない限り他の客の姿が映り込むことは避けられないだろう。とはいえそれは叶の問題、村雨には関係のない話だ。
5701