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    yaguruma_85

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    yaguruma_85

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    宇宙とマヨ巽(半端)

    その日の仕事を終え、夜道を二人並んで歩きながらふと上を見上げると空に細い月が浮かんでいた。光が強くない分、星がよく見える。マヨイたちが出会ったあの日に見た空よりも星は少なく感じられたが、美しい星空だった。最近はゆっくりと空を見る時間も減ってしまっていた。
    「……宇宙の果てには何があるのでしょう」
     紫紺の空に散る星々。深く考えないまま浮かんだ疑問をそのまま口にすると、巽はさて、と同じように上を向いた。
    「現在の技術では観測そのものに限界があるようですから、そもそも『宇宙の果て』があるかどうかが議論されているようですが」
    「宇宙は膨張し続けているとか、いろんな説がありますよねぇ」
    「はい。俺はそういった方面には詳しくないですが、マヨイさんは何があると思いますか?」
    「えっ」
     正解を求めていたわけではない、ただ沈黙を埋めるための雑談のつもりだったので思いがけない返しにまごつく。宇宙の果て。改めて考えたことはないが、この空がどこかで終わるとしたらそこには何があるだろうか。
     星は好きだ。見上げているとまるで世界がなくなって自分だけになって、孤独そのものも消えてしまうような気がする。今地球に届いてる光は何億年前のもので、今発せられた光が届くのは何億年あとのことで、そんなことを考えていると矮小な自分がさらに小さくなってそのまま消えてしまえる気がする。宇宙の果てはその光も届かないほど遠くなのかもしれない。
    「……何も、ないのかもしれないですね」
     光すら届かない、存在することすら知られない場所。たとえそこに何かがあるとしても、それを知る術がないのなはそれは『ある』と言えるのだろうか。ひどくさみしい場所のように思えるし、とてもやさしい場所のようにも思える。何もないということは自分も存在しないということだ。そして自分が存在しなければかなしいとかくるしいとか、様々な感情に悩まされることもないだろう。
    「行ってみたいですか?」
    「……そうですね」
     そこに行けば薄汚い欲を抱いて罪悪感との狭間で揺れることも、見知らぬ誰かに手を差し伸べて薄暗い自己満足で満たされることもなくなる。似合いの場所だと思った。
    「少し、怖いですけれど、優しい場所のようにも思えます」
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    yaguruma_85

    DONEお題をいただいたngcgです
    プロポーズするngcg うえ、と千切が急に声を上げて、凪はゲームを一旦中断してどうしたのと声をかけた。気分が悪くなったのだろうか、そういう感じとはちょっと違った気がするけど。その予想通り、これ見てくれとスマホの画面をこちらに向けた千切は顔色が悪いこともなくいたって健康そうだ。ただそのきれいな顔を嫌そうに歪めているだけで。
    「なに、動画?」
    「そ、たまたま関連で出てきたから見てみただけなんだけどさ」
     千切が画面をタップして動画が始まる。街角のカフェのテラス席で一組の男女が仲良く話しながらお茶を飲んでいるという何の変哲もない日常の光景だ。これがどうしたんだと思っていたら、男女の他のお客さんたちが一斉に立ち上がった。何事、と女性の方は驚いていたが男性の方は平然としていて、それどころか彼も立ち上がって、そして何故か一斉に踊り出した。何コレ。座ったまま目を白黒させている女性を取り囲んで踊るってホラー? ダンスが終わったところですっとカフェ店員が近寄ってきた。トレーの上にはコーヒーではなく小さな花束と小さな箱。それを受け取った男性が女性の前に跪いて箱をパカッと開けると、そこには輝くダイヤがついた指輪。感極まった女性が涙しながらそれを受け取り二人は抱き合い、踊っていた人たちや店員、さらには通りすがりらしい人たちも拍手喝采……
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