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    狭山くん

    @sunny_sayama

    腐海出身一次創作国雑食県現代日常郡死ネタ村カタルシス地区在住で年下攻の星に生まれたタイプの人間。だいたい何でも美味しく食べる文字書きです。

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    狭山くん

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    廻る世界のセナヴィンの前提。

    ##セナヴィン##廻る世界#死ネタ

    リフレイン・ワールド いつからだったか。俺は、人生を繰り返している。こんなことを他人に言えば、頭が可笑しいとしか思われないだろうが、事実なのだからどうしようもない。ある時は科学が規制されようとしている世で働くサラリーマンだったし、またある時は戦火の中で戦いに赴く兵士であった。ある程度の分別が付く年齢になると不思議とその事を思い出し、そしてそれまでの「失敗」が全て、現世に生きる俺の記憶の中にインプットされるのだ。転生と言うのだろうか。俺ともう一人の青年は、一人の男の願いを叶える為に繰り返し生を受ける。ひとつの夢を願い続けて何度も生まれ変わる男には、繰り返している記憶なんて、無い癖に。

     そうして、俺たちはまたこの男の亡骸を目にすることになるのだ。

     ”今回”は交通事故だったらしい。酒酔い運転の車が歩道に突っ込んで、一緒にいた青年を咄嗟に庇った彼はその命を散らせて行ったという。男に庇われた青年は男の血に塗れたパーカーを脱ぐこともせず、茫然と隣に立ち竦んでいた。此処は病院の霊安室、この空間には俺と青年、そして男の亡骸しかなかった。

    「ヴィン」
     青年の名を呼ぶ。返事はない。視線を少し下げた位置に見える筈だった彼の表情は、男にしては少し長い金髪で隠されその感情を読み取ることは出来ない。小さく、そして低く、途切れがちに呟かれるのは彼の国の言葉か。方言の強いその言葉は、最早違う言語と言われている程のもので、俺には彼が何を言っているのか解る筈もない。けれども、’’今迄”の経験で見当を付けることは出来る。

     最近になって漸くわかってきたのだが、俺たち3人の世界には、一定のルールがあった。
     1、俺には彼らと出会う前からこの繰り返される生の記憶がある。
     2、青年は男の死に必ず立ち会ってしまい、そのタイミングで繰り返される生の記憶も蘇る。
     3、男は最初から最後まで、何も思い出さない。
     4、3人の中で最初に死ぬんのは必ず男である。
     5、俺たちは必ず何処かで出会ってしまう。

     他にもあるのかもしれないが、少なくともこの世界は5つのルールで運営されていた。
     このルールに従うとすれば、青年ーーヴィンは今、この非情で無情な世界の記憶を強制的に受け取ってしまった直後と言うことになる。
     男ーー瀬波駿馬の焦がれる夢、願いが繰り返され、そしてその夢が叶う事が無い、悪夢のような世界の記憶を。
    「ヴィン、気を確かに持て。混乱するのは解る。此処は、そういう世界だ」
     俺の声だけが暗く冷たい部屋に響く。ヴィンはゆっくりと視線を俺に向けた。のろのろとしたその動作によって、絹のような金色の髪がさらりと動く。透き通るような明るい碧の瞳には、涙の膜と、深い悲しみ。そして混乱の色が混じり、どうすればいいのか解らない迷子の子供のように見えた。

    「コースケは、この結末を知ってたの?」
    「知らなかった、でも、今迄を覚えていたから、予想はできた」
     そして、この先も。今迄通りならば、ヴィンは一人壊れていくし、酷い時にはその場で自殺する。きっと、ヴィンにとって駿馬は世界の全てなんだろう。世界を奪われ、残酷な世界の真実を突きつけられて、それでも尚生きろとは、彼に言うことなどできない。出来る筈がない。
    「ねぇ、コースケ。この悪夢はどうやったら終わると思う?」
     ヴィンの口から出てきたのは、意外な言葉だった。今迄のヴィン達は口にしなかった言葉。
    「駿馬の願いが叶ったら、かな」
     それはまるで、賽の河原のようだ、と思う。塔を作る為に、石を積んでもそれを鬼が壊し、何度壊されても、壊されても、積み続けなければいけない親不孝の報いを受ける場所。俺たちは一体、何の報いを受けていると言うのだろうか。
     ヴィンは俺の言葉に、再び目を伏せ、俺の聞き取れない言葉で何やら呟く。「ヴィン?」俺の声で思考の海から戻ってきたらしいヴィンは、また、こちらに視線を上げる。その瞳には、悲しみも、混乱もなかった。あるのは、強靭な意志。射抜かれるかと思ってしまうようなその視線を一身に受け、俺はヴィンに向き合う。
    「何か、はじめるのか」
    「シュンメを助ける。僕らがこの先も生きて、過去からヒントを見つける。コースケは、最初から知ってるんだよね?だから、憶えてて」
    僕が忘れても、コースケが居る。僕とコースケ、二人分のアイデアを持って、次の世界に行くんだ。
     ただひたすらに、駿馬の居る次の世界にを見据えたヴィンに、俺は頷く。
     ヴィンの前向きさが感染ったのだろうか、何度も絶望を繰り返し、駿馬を助けることを諦め、傍観者に徹していたというのに、次こそはなんとかしてやろうと思えて仕方が無い。

     今迄の繰り返しとは違うんだ、きっと今度はハッピーエンド。


    —————————————————

    ササセナヴィンで繰り返される世界。
    (2014-09-12)
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    「あ……すぐ、る」
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    傑はそう言って両手を広げる。目の前にいるのは最後に見た袈裟を着た傑じゃなくて、高専の、あの3年間の傑だった。少しの違和感を感じながらも、吸い寄せられるように傑の方へと歩みを進めれば懐かしい温もりに包まれた。
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    「なに?」
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    「そうか違うかで聞かれたら、そう、だよ」
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