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    狭山くん

    @sunny_sayama

    腐海出身一次創作国雑食県現代日常郡死ネタ村カタルシス地区在住で年下攻の星に生まれたタイプの人間。だいたい何でも美味しく食べる文字書きです。

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    狭山くん

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    2022-06-11/前日からの続きみたいな感じではありますが、前日読まなくてもまぁって感じでもある。文字数など考えるな。後半へ続く!(キートン山田声で)

    ##空閑汐BL
    ##静かな海
    ##デイリー
    #BL

    空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:11「アマネが足りない……絶対避けられてる……ッ!」
     眼前のテーブルにそんな叫び声と共に突っ伏せる空閑の姿へ憐憫を孕んだ視線を向けるのは隣に座る篠原で。
    「汐見だって忙しいんだろう、クラスも部活も部屋も同じなら避けようもないんじゃないか?」
     眉を寄せながらも不思議そうに首を傾げる高師に「うんまぁ、これは避けられてるよねぇ」とやんわりとした語調ながらもはっきりとそう口にしたフェルマーは、突っ伏せたままの空閑の頭部へと視線を向けて言葉を重ねる。
    「で、今度はアマネに何したのさ」
    「全然身に覚えが無いんだよ。ここ一週間くらい、部活が終わってから消灯までどこかに行っちゃうし、どうしたのって訊いたら補習だって言うし……主席のアマネが補習だったらそんなんクラス全員補習でしょう!?」
    「何なんだよ、その隠すつもりのない嘘は」
     呆れ気味なフェルマーの言葉にテーブルから顔を上げるつもりがないのかそのままつらつらと喋り始める空閑は、正直気味が悪い。そんな事を思いながらも汐見が空閑を避ける理由の一端くらいは知ってしまった篠原は、あんまりな汐見の言い訳に呆れきった声を漏らす。
    「挙句の果てに、アマネのベッドに潜り込んだら蹴り出された……」
     ぐす、と洟を啜る音と共に零された言葉に目を剥いたのは高師だった。
    「はぁ!? 空閑お前寮で何やってんだ!」
    「いやもうそれは今更でしょ」
    「寧ろ全然気付いてなかった高師の鈍感さに拍手したいよな」
     空閑の暴挙とも取れる行動に、叱りつけるような声を上げた高師へフェルマーと篠原は生暖かい視線を送る。篠原に至っては拍手付きだった。高師が居なかった一年分だけ長く空閑と汐見を見てきた二人の男へ、高師は眉を寄せながら言葉を紡ぐ。
    「という事は、何だ、空閑と汐見はそういう……恋人関係という事なのか?」
    「明確には知らないよ」
    「最近違うんじゃないかって思う事があった」
     高師の言葉にフェルマーと篠原はそれぞれ言葉を返し、フェルマーが「え、何それ何があったの?」と篠原の言葉へ食いついた。グスグスと泣き始めてしまった空閑へと視線を向け、曖昧な笑みをフェルマーに向けた篠原の態度にフェルマーは小さく頷きポケットから自身の端末を取り出し片手で弄ぶ。
    「ていうか、泣くなよ……」
     小さな声で汐見の名を口にしながらぐずるように泣き出した空閑は、いっそ酔っ払った泣き上戸と言われた方が納得できるような仕上がりで。しかし決してアルコールはなど一滴たりとも摂取してはいないのだ。何せ高校生なので。
     ハンバーグ定食と烏龍茶だけでこんな事になる男が、その名を呼んで涙している相手に懸想していないなんて事はあるのだろうか。恋という状態なんてひどく曖昧なものだけれども、と篠原は空閑に気付かれないよう嘆息する。
    「うぅ……アマネに会いたい……」
    「最低でも朝起きたら顔合わせるだろ」
    「そうじゃないんだよ!」
     涙声でポツリポツリと言葉を紡ぎ始めた空閑に、思わず口を挟んでしまった高師が空閑のターゲットにされていた。ようやく身を起こしたのはいいが、テーブルに乗り上げる勢いで高師に掴みかかろうとするのはやめてくれ。
     学校に隣接する宇宙港のレストランに居ることをすっかり忘れているのだろう空閑を引っ張り座らせた篠原は、周囲の視線を感じながら辺りへと曖昧な笑みを浮かべて小さく頭を下げる。土曜の夕飯時、宇宙港に幾つかあるレストランの一つを困惑の渦に巻き込んでしまった自覚はあった。しかしこうなるとは篠原だって思ってはいなかったのだ。
    「ていうか、空閑はさ、汐見の事どう思ってんの? ベッドに潜り込む程度には恋愛感情持ってるって理解で良いのか? それとも性欲の発散先?」
     まぁどうせ前者だろうと思いながらも、篠原は少しだけ辛辣な言葉を混ぜながら言葉を声に乗せていく。さっさと自覚して収まる所に収まれと思いながら。普段連れ立ってこの席に座る人数よりも一人足りない四人の男たちが座るボックス席は気まずい沈黙に満たされる。空閑は少し考えるように、両手で顔を覆いながらもその沈黙を破るのだ。
    「アマネの事が好きなんだ。多分最初に会った日から」
     ポツリと零された独白を止めようと手を伸ばした高師を手だけで制した篠原は、空閑の隣にようやく姿を表した仏頂面を晒す男に視線を送る。顔を覆ったままの空閑は、自身の周囲で何が起きているのかも知らないままに言葉を続けた。
    「アマネとなら、どこまでも行けそうだと思ったんだ――ううん、ちょっと違うか。アマネとならさ、どこまででも行きたいと思ったんだ」
     一年半ずっと胸に溜めていたのだろう想いと共にポロポロと涙を零しながら、空閑は言葉を紡ぐ。
    「月にだって――その先にだって、アマネと一緒にどこまでも行きたいんだ」
     空閑の吐露した思いの丈へと声を投げ掛けたのは、篠原でもフェルマーでも、高師でもなかった。
    「……お前は、泣きながら何言ってんだ」
     頭上から落とされた声に、びくりと肩を震わせた空閑は恐る恐るといったように顔を覆っていた両手を外し泣き腫らした深い海と同じ色の瞳をその声の主が居るであろう方向へと向けるのだ。
     空閑の視線の先に立っていたのは、空閑が一年半胸に仕舞い込でいた想いを向ける汐見天音その人だった。
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