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    sangatu_tt5

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    金虎

    #リ占
    lyLy

     可愛そうに、という感情が心の底から湧いてくる。
     この状況になった原因は、きっと私が彼に出会った当初、好奇心から話しかけてしまったのが原因なのだろう。目の前に転がった茶色い布の塊を見下ろしながら、哀れみの目線を向ける。
     彼は試合が始まった直後に己の眼の力を最大活用して、私の元に走ってきた。それはもう、一目散にという言葉がよく似合う。それほど近い位置にいたわけでもないのに、私が一番近い位置にスポーンしたサバイバーを見つけるよりも先に私の目の前に現れた。
     そのまま、体当たりするかの如く、突進してくる。だから、思わず殴ってしまった。正面から真っ直ぐ飛んでいった霧を占い師は避けることもせず身に受け、そのまま真っ直ぐ駆け寄ってくる。硬直もないまま、大きく肥大した左手が彼を切り裂いた。真っ赤な血を流しながら、地へと伏した彼を見て、どうしたものかと動揺してしまう。
     それなりに彼の身体は飛んでいった。殴った場所から一メートルほど離れた場所に倒れた彼は血をだらだらと流しながら、這いずってくる。蛞蝓のように赤い線が彼の通った地面に跡を残す。自己回復するなどという考えなどない様子で、彼は私の足元まで地面を引っ掻きながら近寄った。
     その姿を一抹の恐怖と共に眺めていれば、彼の手が私の靴に触れる。地面に縫い付けられたように身体が動かない。べちょりと試合前に綺麗に磨いてきた靴に赤がつく。
     そのまま靴に手を添えたままの占い師がこちらを見上げて、頬を緩めたのだ。金の瞳が描かれた布の下で、ふにゃりと口角が緩まる様はこの場に何一つそぐわない。
     腰を下ろしてしゃがみ、顔を寄せ、彼の様子を観察する。血をけほけほと吐いて、口の周りを赤で汚す。占い師が自己治癒をする様子もなく、私が吊ることをしないからか、誰も救助にこない。耳鳴りがしないまま、占い師の頬を撫でれば、ぐるぐると喉を鳴らして、その手に頬を寄せてきた。
     ぐるぐる、くるくる、きゅうきゅうと占い師の口から漏れ出るのは人間とは思えない可愛らしい動物の声。手に頬をすり寄せてくるから、目元の布が取れ、金色の目が剥き出しになる。きらきらと輝いた綺麗な瞳が私を捉えて、弓形に細められた。

    「どういう気持ちなんですか? ねぇ、占い師。私はハンターで、貴方はサバイバーなのだから、私から逃げなくては……、ね? 分かるでしょう?」

     ゆっくりと彼が理解できるように話しても、この占い師では理解できないだろう。はぁとため息をついて、まろい頬を指先で突く。ふにと沈む肉を楽しんでいれば、ばつんッ、ばつんッと音を立てて暗号機が上がった。
     この試合はもう誰も追いかけなくていいかと、地面にまたがった占い師を観察することに徹することを心に決める。


    *****


     この荘園では、衣装に考えや思考、知能がつられていく。その様子が顕著に現れるのは動物を模した衣装だった。傭兵の寄生感染、機械技師の熊女、写真家の月下の紳士。少し意味合いは変わってくるが、弁護士の白ウサギさんなどもその傾向がある。
     その中でも、特にその様子が現れる衣装は占い師の人間になりたい虎だった。この衣装を初めて着た時の占い師は実に滑稽で、今思い出しても笑ってしまう。
     人語が通じない、二本足で立てない、味方が誰かも分からずハンターに突撃していく。サバイバーたちも呆れていたし、後々衣装を脱いだ占い師も断片的に残った記憶で大分ショックを受けていた。
     もう二度とこんな衣装着るものか! っと叫び、衣装棚に仕舞っていたらしい。聞いた話ではあるが、大変愉快な話である。
     その時、占い師が突撃したのは同族だと思ったのか、月下の紳士を身に纏った写真家で、彼は身の周りをずっとくるくると回る占い師の様子にどうすればいいか分からず、立ち尽くしていた。
     そのまま試合が終わった後も占い師は写真家の後を追いかけ、ハンターの住う館までついて来たのだ。

    「ここに来たからには殺される覚悟をしているんだろうね?」
     そう言って、写真家が占い師を脅したが、彼は一切介さず、近づいた写真家の鼻をぺろりと舐めて、それを見ていたハンターたちは大いに笑った。はあー、と大きなため息を吐いて肩を竦めた写真家を見て、恩を売るチャンスだなと考え、耳をぴくぴくと動かす占い師に話しかけたのが運の尽き。
     ない尾を振って、無警戒にも占い師は私の部屋について来た。きゅうきゅうと鳴く占い師を膝に乗せて、目隠し布を取れば、綺麗な金色がぱちぱちと瞬く。しゅるしゅると衣装を変えて、金のテンタクルの衣装を着る。あまりにもバランスが違うため、好ましくない衣装だったが、目の前の占い師は衣装を変えた瞬間、目を煌めかせた。

    「貴方の瞳と一緒ですね」
     そういえば、再びくるくると喉を鳴らして、すり寄ってくる。マーキングするように身体を擦り付ける占い師をそのまま好きにさせた。


    *****


     その時と同じ瞳がこちらを射抜いてくる。
     軽率に可愛がるものではなかったなと後悔がわく。だってそうだろう、これでは攻撃もしにくく、試合にもならない。放っておけばよかったのに、好奇心に負けたからいけないのだ。
     占い師の目がとろんと溶けていく。瞼が落ちて、呼吸が途絶え途絶えになる。ああ、もうそろそろ失血死か……と思い、占い師の身体を抱き上げ、サバイバーの元に持っていこうすれば、再びばつんと音を立てた最後の暗号機が上がった。
     自分の瞳が赤く光るのを感じる。ああ、これでは他のサバイバーに近寄るよりもハッチに投げ捨てた方が早い。

    「血がつくのであまり身体をすり寄せないでください」

     きゅうと鳴いて、身体を押し付けてくる占い師に注意をすれば、悲しそうに眉を下げながらこちらを見てくる。苦言すら呈しにくいのだからこの正直この衣装を燃やして欲しい。はあ、と何度目か分からないため息を漏らして、一番近いハッチの出現場所に足を進める。

     「……占い師を離せ、リッパー」

     女神像の近く、壁に囲まれた場所にハッチはあった。
     そして、その近くに傭兵が立っている。寄生の衣装を身に纏い、下から睨めつけるように鋭い目線をこちらに向けてきた。

    「はは、何を今更。彼が倒れた時に近寄りもしなかったくせに、これを生贄にして逃げようとしているくせによく言いますよ」
    「それはお前がいつまでも占い師を吊らなかったからだろう」
    「吊る必要もなかったのでね。占い師は自分で自分の治療をする方法すら分からなくなったご様子でしたよ」
    「…………」
    「試合に出すべきではないでしょう」
     傭兵は俯いて地面を見る。感情の起伏がよく分からない男だが、何も言い返してこないのだからそういけんなのだろう。
     占い師を、最低でもこの衣装を身に付けた占い師を試合にだすべきではない。我々からすれば良いカモだが、あまりにもこれでは試合にならないのだ。試合を楽しむ者としての忠告。

    「…………わかっている」
    「そうですか、では早くどうにかするべきですよ」
    「ッ! わかっている!!」

     大きな声を出した傭兵を冷めた目で見る。
     この衣装を着た時の占い師は見捨てるなどという風に決まったのだろう。ああ、可愛そうにと占い師の顔を覗き込めば、何も分かっていない様子で首を傾げた。

     「ハッチで占い師は逃すので、貴方は早くゲートから出なさい。私の気が変わらないうちに」
     傭兵は悩んだ様子を見せたが、こちらに背を向け、正面側のゲートに向かった。肘当てを使い、私から距離をとり、ゲートを出る。
     彼を待っていた他のサバイバーたちも同時にゲートから出ていった。ハッチの蓋が開き、風の通る音がする。

    「あぁ、私になんてもう近寄ってはいけませんよ」

     服をきゅうと握ってくる占い師の手をそっと払って、彼をハッチに投げ落とす。ひゅるりと落ちていくその姿を見ながら、「私以外にも近寄ってはいけませんよ」とこぼす。
     彼の耳には届かないほど小さな声。きゅうと彼の鳴き声が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。血が滲んだ上着を脱いで自室へと戻る。
     後日、占い師から上質な紅茶とクッキーが届いた。あの衣装はもう見ることはないのだろう。
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    「君の子供が出来たんだ」
    「嬉しいだろう?」
    「頑張って産むね」

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    目の前にしゃがみ、焦点を合わせ、金は虎の手を握った。
    頬を紅潮させ笑う虎は幸せそうだが、その頬はこけている。

    「貴方は雄だから子供は出来ませんよ」

    金が虎にゆっくりと幼子に説明するかの如く言葉を紡ぐが虎は首を傾げて、ラジオのように「嬉しいよね?」と言った。
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