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    sangatu_tt5

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    リ占/付き合ってない伯猟のミス

    #リ占
    lyLy

    🔮を見る度に動悸がする。息が乱れ、顔が赤くなる。姿が見えなければすぐに彼を思い浮かべ、彼のそばに自分以外がいると思わず殺してしまいたくなる。これは、なんでしょうか……?
    ✂️が漏らした言葉に夫人も執事も口が塞がらない。血族の中で1番の力を持つ彼が幼子のようなことを言い出した。どう伝えるべきかと目を見合わせる。
    ✂️「………病気ですかね?」
    バル「いやいや、今まで1度もなったことないじゃろ」
    マリ「多分それは治らないと思うわよ」
    ✂️「治らないんですか?」
    困ったと俯き、✂️は思考を巡らす。
    治らない…治らないだろう。だってこれは憶測が正しければ恋の病だ。人間がかかるものだ。
    純血種、血族の頂点、永遠の生命、全てを持ち合わせた✂️は子供を必要としない。繁殖など不要だからだ。繁殖が必要なのは永遠に近い生命を持たぬ下等なモノたちのみなのだから……
    夫人も執事も過去に人間であった頃ならいざ知らず、今はそんな感情凍てついている。
    マリ「なら、🔮に聞いてみれば?病気をするのは人間よ?彼の方がきっと詳しいし、解決策も出てくるのではないかしら?」
    本人に恋愛相談をしろと言うのも変な話だが、適任者が他に居ない。執事は険しい顔をするが夫人を止めることは出来ない。
    短命な人間との恋など報われない。置いていかれる方が辛いのだ。男同士、種族の違い、全てを理由にさっさとフラれてしまえばいい。
    そうすれば、✂️も諦めがつくだろう。
    ✂️「そう、ですね。ええ、今日来るので聞いてみます」
    今日とはまた早い。あの1件以来、2人が仲睦まじくお茶会やら月見酒やらをしているのは知っているが、🔮はほとんど毎日この館に来ているのではないか……
    (誘っているのは✂️で、友人もおらず村人にも邪険にされている🔮は都合が合うという話なのだが)それでも✂️は毎日楽しそうに彼が来るのを待つ。
    🔮「伯爵?」
    血族とは違い許可がなくても入室出来る🔮は玄関を開けて、✂️を呼ぶ。
    不遜と言われて血族の中なら処刑されてもおかしくない無礼さだが、とうの✂️が心底嬉しそうに駆け寄っていく。
    ✂️「こちらにいますよ。あぁ、今日は晴れてしまったから室内でよろしいですか?」
    血族は日に当たれない。否、✂️ほどの実力ならば当たっても体調が崩れる程度だが、🔮が心配するため用心する。
    🔮「もちろん、構わないよ。君が健康な方がいいからね」
    ✂️は恭しく🔮をエスコートしながら、バラの庭園が見渡せる部屋に案内する。
    その時にフワッと香る🔮以外の人間の香りが✂️の心を乱す。
    ✂️「……今日は誰かに会ってきたんですか?」
    🔮「え?あぁ、村の人が男手がいるって事で手伝ってきたんだ。これ、ジャムを貰ったんだよ」
    きっとこのジャムは女性から貰ったものだ。オレンジ色のマーマーレード。べったりとメスの香りがする。
    🔮「スコーンに付けて食べたら美味しいよ!一緒に食べようと思って持ってきたんだ」
    あぁ……彼は私のことを考えて持ってきてくれたのだ…。そう思えば、不快なメスの匂いも許せた。
    ✂️「貴方が焼いてくれるんですか?」
    🔮「?いや、それは……僕は料理が上手くないんだ」
    ✂️「貴方が作ったものを頂きたいと言うとご迷惑ですか?」
    🔮「ー〜ん、不味くても文句を言わないのなら……」
    別に味はどうでもいい。さして分からないのだから。食べれる食べれないそれぐらいにしか人間の食事などに興味はない。
    しかし、彼が作ったものが自分の腹に入り、消化され、血肉になると思えば嬉しい。
    ✂️「えぇ、ええ!もちろん!そのような事は言いませんよ」
    🔮「じゃあ、後で一緒に作ろう」
    料理など作ったこともなければ、作る気もなかったが🔮が望むのならばと受け入れる。
    ~~~
    彼の作ったスコーンはきっと美味しい。✂️はびっくりするほど甘く、美味しく感じた。ジャムを勧められたがそんなものは不要だ。🔮が作ったものだけを享受したい。
    🔮「スコーンなんて💍と作って以来だから不安だったけど、問題なく作れて良かったよ」
    誰だそれは……。心が烈火のごとく乱れる。女だ、その名前は女の名前だ。
    ✂️「……その、💍とは誰ですか?」
    🔮「え?あぁ、婚約者なんだ」
    婚約者……、相手を将来の伴侶と決めて結婚の約束をした者……共に生きるのを約束した者。
    羨ましい……。単純にそれだけだった。
    カラカラに乾いた喉からは……そうですか、と小さな音が漏れた。
    🔮「うん、とても素敵な女性だったんだ」
    幸せそうな表情だ。蕩ける顔とはこの事だろう。愛おしいものを見る目。自分には向けてくれない瞳。
    ✂️「あの!聞きたいことが、あって……」
    これ以上その顔を見たくなくて、話を切る。
    なんだい?と優しく聞いてくれる🔮の目を見れないまま、紅茶に映ることすら出来ない自分を嘆く。
    先程、執事と夫人にした話をする。
    何となく相手が🔮であることは言えなかった。名前は出さずに胸の痛みを伝える。
    🔮は目を輝かせて、笑った。
    🔮「それは、恋だよ!素敵なことだ!誰に………はよくないね。そうか、君が恋か……応援するよ!」
    祝福され、応援されたのに✂️の心臓がギリギリと締め付けられる。恋、恋、恋……。素敵なものだと🔮は笑うのに死ぬほど胸が痛くて、涙が溢れそうだった。
    ✂️「……そうなんですね。その、相手が人間なんです。貴方なら、貴方なら私からこの想いを伝えられたらどう思いますか?」
    🔮「…………人間なのか……。うーん、難しいね……。でも、僕なら君から真摯な想いを伝えられたら嬉しいよ」
    仮面で見えないが、🔮は目を細めて、忌々しい聖母のような表情をしているのだろう。
    嬉しいと言われたはずなのに嬉しくなかった。
    いつでも相談に乗るよの言葉に甘えた。来てくれる口実が欲しかった。少しでもこちらを見てくれるようにしたかった。
    🔮「どうだった?」
    ✂️「……ダメでした」
    🔮「……そっかぁ。なんでだろう?僕は君から薔薇を貰った時嬉しかったのに」
    えぇ、そうでしょう。貴方は赤い薔薇すら友愛と取ってしまうのだから……。
    赤いワインを口に含めば、ブドウの香りが口の中に広がる。
    何時もならしない飲み方をしてしまう。
    🔮「そんなに飲むと……」
    ✂️「好きです……。好きなんです、🔮。どうしたら貴方は私を好きになってくれますか?」
    漏らした瞬間に後悔する。🔮の顔を見れば、画面越しに透けて見えた青い瞳が赤く染る。
    魅了だ!魅了の魔術がかかってしまった。
    「伯爵…好きだよ」
    微笑まないで欲しい。私を見ないで欲しい。そんな貴方が欲しかった訳では無いのだ。
    「あぁ、🔮。ごめんなさい……そんなつもりはなかったんです……」
    何年も何百年も使ってこなかった魔術の解き方など伯爵には分からなかった。
    甘い甘い🔮の声だけが、伯爵の耳を揺さぶった。
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