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    はるしき

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    はるしき

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    現パロやや庶統気味
    待ち合わせ

    ##庶統

     古びたスピーカーから聞こえてくる音割れした祭り囃子も、日中の暑さが残り燻っている熱を運ぶ風も、何故だか不思議と心地良い。
     商店街を抜けた駅前の広場にある小さな時計塔の前。短い針はもう少しで五を指すところ。俺が到着してから十分くらいは経過したかもしれない。
     今日は駅を挟んだ反対にある公園で開かれる、盆踊り大会の日。
     浴衣姿の男女が仲睦まじく手を繋ぐ姿も、色とりどりの浴衣や甚平を着た子供が母親や父親の手を引きながら公園に向かう姿も、この十分の間で飽きるほど見てきた。いや、飽きることは無い。みな一様に幸せそうで、楽しそうに笑っている。あぁ、平和だと俺は柄にもなく感慨に耽った。ワイシャツ姿で如何にも仕事終わりといった姿の人が、浮かれた住民を嫌そうに見ながら駅に駆け込んでいくのも見た。そこはあまり平和では無かった。
     湿気に満ちた空気の中でも、喉の渇きを感じる。プラスチックの容器に並々と注がれたビールを片手に、駅から公園へと繋がっている自由通路へ向かう中年男性を見かけた。商店街の中でもお祭り用に酒を売っていたようだ。酒が、飲みたい。自然と喉が鳴った。つい最近成人して酒を飲めるようになった俺は、いつだって酒を飲む機会を窺っている。
     待ち人と合流して公園へと着いたら、まず酒を買おう。屋台が並んでいるということは下調べが着いている。酒好きの彼ならば、きっと喜んでくれるだろう。
     そしてつまみになりそうな物を買って、どこかに座って、盆踊りを眺めながら酒を飲む。話をする。完璧だ。これしかない。今日は邪魔をしてくる者もいない。二人でゆっくりと、他愛の無い話に花を咲かせて過ごせる日だ。
     シュミレーションした行程を頭の中で反復していると、不意に携帯が鳴った。音を切るのを忘れていた。好都合だった。俺は電源ボタンを軽く押して、ショートメッセージアプリに通知が着いていることに気づき、アプリを立ち上げる。
    『もう少しで着くよ』
     受信していたのは簡素なメッセージだったけれど、俺にとってはかけがえのない大切なメッセージだ。
     彼は商店街の端からやってくるから、もう少しで姿も見えてくるだろう。
    『待ってる』
     俺はその一言だけを入力し、送信する。
     スタンプも、絵文字も無い。それでいい。
     長い針はもうすぐ十二を指す。約束の時間まで、あと少し。
     商店街の方へ顔を向ける。祭りに向かう人ばかりでは無いだろうけれど、思ったよりも人通りが多い。
     目をこらす。彼のことなら、目の見える範囲にいるならば見逃すはずが無い。
     俺は横断歩道で信号待ちをしている一人に目を向けた。
    「士元」
     いた。
     横断歩道の信号が青に変わると、ひょこりひょこりと頭を揺らして歩き出す。
     ビールの注がれたプラスチックコップを両手にしながら、ゆっくり俺の立つ時計塔に向かって歩いてくる、待ち人。
     俺はつい笑った。そして、自分が描いていたプランが頭から崩れたことに気がついた。口に手を当てて、俺はまた笑った。
    「いやぁ、すまないねぇ。途中で酒が売ってたから、ついね」
     にへら、と彼――士元は目だけで笑う。タオルで隠れた口も、きっと笑っている。目尻の皺が、彼の機嫌の良さを表している。
     彼が酒を我慢できるはずが無いんだ。
     ビールを売っているところを見つけた時、俺のことを思い浮かべて、俺の分も買ってくれた。それだけで、たまらなく嬉しい。
    「飲まないのかい?」
     士元は俺を見上げながら、カップを差し出してくる。
    「もらうよ、ありがとう」
     差し出されたカップを手に取ると、俺は白い泡が消えかけているビールを一口飲み込んだ。
     あの特有の爽快感は無いけれど、これはこれで悪くない。
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    #お題ガチャ #同棲カプのゆるい話
    (栗ご飯@にほさに) 夏が終わった。
     南国の海の写真が載ったカレンダーを、慎重に破れば月が変わる。新しい写真はイチョウ並木が綺麗な写真だった。未だ暑さが伴うものの、暦の上では既に秋。スーパーでも果実の種類が増えて来ている。今まで店頭に鎮座していた西瓜は成りを潜め、梨、桃、葡萄に無花果が立ち並ぶようになった。茸の種類も増えた。旬を迎えようとしている茸たちは、徐々に売り場を占拠し始めている。
     秋。一年で最も実りのある季節。
     あぁ、今年も来てしまったと言わざるを得ない。大きく溜め息を溢した後ろで、恋人が笑っている。

     同棲をし始め、互いに料理をするようになり、私よりもちょっぴり――いや、かなり料理が得意な恋人が、いつの間にか冷蔵庫の管理をするようになるまでには時間がかからなかった。それはいい。それはいいのだ。誰だって美味しいものを食べたい。料理の腕前に自信がある訳でもなかったから、彼が台所の主になるのは賛成だ。それはいい。それはいいのだ。
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    みーな

    DONEK弟SSS。
    京を動かしたくなったので、お題ガチャ回しました。
    お題ガチャなんて初めて。ワクワク☆
    「友一が行方不明になってしまい、京がさがしに行く話」
    !!(゜ロ゜ノ)ノ ソレハモウ カイタヨ
    ベタなCP話ガチャ
    https://odaibako.net/gacha/1449?share=tw
    回し直さず、やってみよう。

    SSSのらくがき→即日載せ できた→最低1日おいて校正
    点Yの軌跡はある定点を通る「友一先輩、ただいま。」
    京は帰宅後すぐに声をかけたが、部屋はシンと静まりかえっている。いつもならすぐに顔を見せるのに。
    寝てるのだろうかと思い、リビングの友一のお気に入りのソファーの上を見るが、その姿は見えない。
    「……先輩?」
    昼間は陽当たりがよく、ぽかぽかになるソファー。
    今は冷たい夜の闇が落ちているだけだった。
    「せんぱーい?」
    寝室をのぞいてもいない。
    二人暮らしがギリギリの小さなマンションは、他に探せるところなんてない。

    こんな夜遅くになっても家にいないなんて。
    まさか家出とか。
    僕、何か嫌われるようなことしたっけ。
    それとも、事件とか事故とか。
    心配すればするほど、思い付く事すべてに巻き込まれていそうな悪い予感に胸騒ぎがして、京は荷物だけ置いて外にとってかえした。
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