Private eye/secret eye三日前はファントム。一昨日はシルバーアッシュ。昨日はエンカク。
「……ドクター」
「何かな?」
この聡明な人は、自分が何を言わんとしているのか、十全に理解しているだろうに。何も知らない振りをして首を傾げると、冬の日差しに似た色の髪がさらりと流れた。しかし笑みを灯した唇は、十二月の真夜中にこちらを見下ろす月光めいて冷ややかだ。
「秘書のローテーションを決めているのはドクターなんですよね」
「それが?」
「おれがロドスに戻ってきてからのローテにはどういう意味が?」
ようやくドクターの自室で二人きり、ソファに並んで座り、ここ数日胸の奥にわだかまっていた疑問を言葉にしてこの人にぶつけることができた。吐き出してしまえば少しは胸のつかえがとれるかと思ったが、しかし今度は軽くなった胸の裡が空寒いばかりである。
1590