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    ロナルドから見た格好いい半田の姿の話

    貴方の戦う姿高校生の頃、ロナルドは部活紹介用の写真を撮るカメ谷に付き添って剣道部の半田を見学しに行った事がある。
    「今日は外部の人向けの真面目な写真を撮りたいから、お前は出来るだけ隠れててくれよな。全部撮り終わったら出てきていいから」というカメ谷の言葉を理不尽に思いつつも、自分を見つけた半田がどういう行動に出るかが予想出来てしまったので、ロナルドは部員達に見つからない様にこっそりと練習風景を見ていた。
    学生服では無く道着を着て、竹刀を握る半田の姿は真剣そのもので、素直に格好いいと思うのと同時に自分に対してとはあまりにも違う姿に、果たしてあれは本当に半田なのだろうかと目を疑ってしまった。ちなみにその時カメ谷が撮った写真の一枚をロナルドはアルバムの中にこっそりしまっている。半田には知られたくない秘密の一つだ。

    高校を卒業し、ロナルドがかつての兄と同じ赤い退治人服を身に着けるのと同時期に、半田は白を基調とした吸血鬼対策課の制服を着るようになった。手に握る物を竹刀から日本刀へと変え下等吸血鬼を両断する様を初めて見た時、ロナルドの心に一番溢れたのは嫉妬の感情だった。自分とは違う、自分には真似できない戦い方をする半田が酷く羨ましく思えた。
    立派な退治人になる為には何でも一人で出来る様にならないといけない、どんな戦い方でも完璧にこなせる様にしなければいけない。今考えると、とても独りよがりで恥ずかしい考えだとロナルドは思う。自分の周りには一緒に戦う仲間達が既に沢山居たのだから。
    退治人として時間と経験を重ねるごとに、半田への嫉妬心は相手の技量に対しての感嘆へと変わっていった。ある時、本人に面と向かってその気持ちを伝えてみると、半田は思いきり顔をしかめ、ロナルドへ自前のセロリを投げつけてきた。尖った耳の先が赤くなっているのが分かったので多分照れていたのだろう。照れ隠しに同じ事をされてはたまらないので、思っても口にしないでおこうと心に決めたのはこの時だ。

    それからロナルドは何度も半田と共に戦ってきた。時には退治相手が被って半ば勝負の様な事をしてしまったり、逆に背中合わせで共闘する事もあった。
    そんな日々を繰り返す内にロナルドはある事に気が付いた。半田と戦場を共にする度に、何故か気分が高揚している自分がいるのだ。半田は戦力としてとても頼りになるので、居てくれると心強いからかなと最初は思った。しかし他の仲間達と一緒の時には無く、半田と居る時だけ感じるそれ。その正体が知りたくて自分なりに考え抜いた結果、ロナルドはとある一つの結論に行き着いた。

    「多分俺、半田が戦ってる姿を近くで見るのが単純に大好きなんだなぁって」
    そこで言葉を一区切りさせたロナルドは自分のグラスを手に持ち中に入っているビールを一気に飲み干した。空のグラスが机に置かれるのを見ながらカメ谷は適当に相槌を打つ。
    「うんうん」
    「他にも強い奴とかすごい奴はたくさんいるけど、半田はこう……戦うぞ!って気合入れてる時の姿勢とかから好き?みたいな?」
    「へー」
    「まぁかっこいいとは最初から思ってたし、もしかしたら高校の頃からすきではあったのかもなぁ。気付いたのがその時ってだけで」
    「なるほどなぁ」
    ふへへ、とだらしなく笑う酔っ払いに対して感情のこもっていない返事をしてしまうのは許してほしい。もうこんなやり取りを今夜だけで何度も繰り返しているのだ。
    高校時代からの友人同士で定期的に行われる飲み会。酒のつまみとしてほどよく酔いの回った友人に気軽に過去の話を持ちかけた結果、まさかもう一人の友人に対しての好意が溢れんばかりに返ってくるとはカメ谷も予想していなかった。酔っ払いの戯言ではあるが、恐らく普段から思っている本心なのであろうロナルドの言葉。真っすぐ過ぎるそれは聞いている方が照れ臭さを感じる。
    第三者であるカメ谷でさえそう思うのだから、話題の張本人はたまったものではないだろう。
    「あ、これぜったいに半田にはないしょだからな」
    「分かってる分かってる」
    そう言いながらカメ谷は横目で隣に座る男を確認する。男、もう一人の友人である半田は顔を俯かせ肘を付いた片手で額を押さえていた。どんな表情をしているのかは見えないが、尖った耳の先は居酒屋の暖色系の照明の下でも分かるくらい赤く染まっている。
    今夜は最初からロナルドとカメ谷、そして半田の三人で飲んでいたのだ。しかし半田が一度トイレに行って姿を消した事がきっかけとなり、酔っ払ったロナルドの脳内でカメ谷と二人きりの飲み会だった事になってしまったらしい。
    トイレから戻ってきた当初は酔ったロナルドの醜態に意気揚々と耳を傾けていた半田も、話の内容を理解するにつれ顔からは笑みが消えていき、途中からは真っ赤に染まった顔で唇を強く噛み締めて黙り込んでしまった。
    「それでさぁ、はんだの奴この前も……」
    先程から一言も喋っていないとはいえ、すぐ目の前の男の存在を認識しないまま楽しそうに喋り続けるロナルド。弾む声でまた一つ半田の事を語るたびに、俯いた男の肩が震える。
    (もうそろそろ切り上げさせるか……)
    ロナルドの言葉に振り回される半田というのが珍しくて、つい話の続きを促すように聞いていたカメ谷だったが、流石に半田の事が可哀想になってきた。それにこれ以上続けると、半田が店を巻き込んで暴走しかねない。友人の為、というよりは自分の為にカメ谷はロナルドに声をかける。
    「ロナルド。お前の言いたいことは分かったから、もうそろそろお開きにしないか?」
    「えー?おれ、まだ話足りない!酒もまだのみたい!」
    「もう十分飲んだだろ?明日も皆仕事なんだし、ほら、また今度聞いてやるから」
    不服そうなロナルドをカメ谷が宥めていた時だった。
    ダンッと大きめの音と共に机が揺れ、皿の上に置かれていた箸が机の上に転がった。思わず喋るのを止め音の方へ目をやると、グラスを握りしめた半田が顔を上げ、据わった金色の目をロナルドへと向けていた。
    半田のグラスにはつい先程まで八分目を満たす程に酒が入っていた筈だが、今は見事に空になっている。半田がそれ程酒に強くない事をよく知っているカメ谷は、それを見てぎくりとした。
    「お、おい半田……」
    「あれ?はんだ、どうしてここに?」
    半田が遂に暴れだすのではないかと少し身構えながら声を掛けるカメ谷と、ようやく半田の存在に気付いたのか恍けた声を出すロナルド。今まで自分が口にしていた事などすっかり忘れてしまったかの様に、首を傾げるロナルドに向けて半田は低い声で話を始めた。
    「……俺も、貴様が銃を構える姿が、いつも輝いて見える」
    「えっ」
    「へっ?」
    半田の言葉に二人は驚きの声を上げた。半田はそのままじっとロナルドを見つめながら、言葉を続ける。
    「敵に狙いを定めている時の真っ直ぐな目も悪くないが、弾が狙い通りに当たった時僅かに目元が緩むのも良い。逆にうまくいかなかった時は一人隠れて自主練習をしているのだって知っている」
    「え、ちょ……は、はんださん?」
    「銃を使っている時だけじゃない。まともな型も何もない力まかせの拳の攻撃だって、敵を萎縮させる程の威力と気迫を兼ね備えている。貴様の立派な武器の一つだ」
    「よ、酔ってるんだよな?ほら、水でも飲んで」
    「俺を舐めるなよロナルドォ……貴様なんぞに負けない位、俺は貴様の戦いっぷりを間近で見てきたんだからなあ!」
    「話聞いてくれよお……!」
    酔っているとは思えない程饒舌に話し続ける半田と、衝撃ですっかり酔いが醒めてしまったのかオロオロとしながら救いを求める様にカメ谷を見るロナルド。
    店に迷惑をかける様な自体にならなかった事に対する安堵と似た者同士の友人達への呆れから、カメ谷は大きく息を吐く。
    取り敢えず、迷惑料としてここの会計は二人に払ってもらおうと思いながらカメ谷は温くなったビールに口をつけた。
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