傍ら 夏が終わるとこの本丸の周辺は緩やかに秋に向かって染まっていく。
自室の障子窓から差し込む外の光の強さも柔らかくなり、朝の目覚めも穏やかに迎えられようと言う、そんな過ごしやすい季節。
だがしかし、水心子正秀にはここ暫く穏やかな朝と言うものが訪れていない。
寝付けないまま朝を迎えてしまうのだ。
特に心当たりもなく毎日元気に出陣、内番をこなしているのに、寝付けない。
日によっては布団に入って暫くすると入眠しているのに明け方前に目覚めてしまい、太陽が昇るのを待つこともある。
一体全体どうしたものかわからないまま半月程を過ごしてしまい今に至る。
そろそろ日常生活に障りも出て来てしまったのか身体の動きが鈍いように思える。
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