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    ka_shion_wr

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    ka_shion_wr

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    猫の日が近かった時の、まろすいようびに投稿したもの
    pixivにも載せてます

    Lovely kitten「うーん…どこに行ってしまったのかなぁ」
    おかしいな、と縁側を歩く清麿は首を傾げて庭を見渡す。何がおかしいのかと言えば、別段そこまで深刻なことではないのだが清麿にとっては一大事だ。
    そう、親友であり恋刀の水心子が朝から見当たらない。昨晩寝る前に明日は互いに非番だからのんびりしようと話していたばかりなのに、起きてみたら隣の布団はもぬけの殻になっていた。
    朝に弱い水心子が非番の日に自分よりも早く起きるのは珍しいと思ったのも束の間で、その本人は朝餉の場にも顔を出さず、周りの刀に聞いても姿を見たという者は誰もおらず。最後の頼みの綱だと審神者を訪ねに行けばそこには近侍の姿しかおらず、返ってきた言葉は
    『主は朝から現世に買い物行ってるよ』
    の一言だけだった。
    結局本丸中探しても見つからず昼餉の時間になってしまったのだが、こんな状態では食欲など起きるはずもなく清麿はため息をついて縁側へと座り込む。
    「刀本体は部屋にあったし無事なのだろうけれど…やっぱり心配だよ」
    大きめの独り言を空に吐き出し、どうしようかと考えた時だった。
    ガサリ、と揺れる葉の音にふと目を向ければ、そこには此方の様子を伺うように顔を出す一匹の黒猫の姿があった。
    ここの審神者は生粋の猫好きで、自分が配属された時にはすでに数匹の猫が本丸内を駆け回っていたから庭に猫がいることは珍しいことでもないのだが。
    「黒猫なんて、この本丸にいたっけ」
    かく言う清麿も普段から本丸の猫たちを見掛けては遊び相手になってやったり、水心子と共におやつをあげたりと色々世話を焼いているくらいには猫好きではある。けれどその世話を焼いている猫の中に黒猫はいなかったと思う、記憶の中では。
    「みゃう」
    様子を伺っていた黒猫が小さく鳴きながらゆっくりと近寄ってくる。子猫とは言わずとも成猫にもなりきっていない小柄な身体で、足元までくればすり、と身体を寄せて甘えてきた。
    「こんにちは、小さなお客さん。随分慣れているけれど新顔さんかい?」
    主か、もしくは遠征先で他の刀が保護してきたか。ひょいと小さな身体を持ち上げて目線を合わせると、翡翠色の綺麗な瞳がこちらをじっと見つめてくる。まるで行方の分からなくなってしまった愛しい親友の瞳のような色だ。
    「にゃぁ」
    「ふふ、真ん丸な目もそっくりだ」
    可愛いね、と膝の上に降ろしてやるとまだまだ甘えたいとばかりに背伸びをしてふすふすと鼻を鳴らしながら顔を寄せてきた。
    「ねぇ、僕の親友を見掛けなかったかい?朝からいなくなってしまったんだ」
    猫に訊ねるなんてどうかしてるとは思うがこれだけ探しても見つからないのだから仕方がないと思う。ぴるる、と耳を反応させた猫が顔を寄せたままじっとこちらを見つめている。
    「それとも、実は君が水心子だったりして」
    ただ瞳の色が似ているだけで、そんなわけないかと自嘲気味に笑う。すると今までおとなしかった猫が
    「にゃあ!」
    と、一際大きい声で反応してみせた。
    先程まで控えめな声で鳴いていた様子から一変して何かを訴えるように、にゃあにゃあと必死に鳴く姿に何事かと首を傾げる。
    「わ、どうしたんだい急に…暴れたら危ないよ」
    不安定な膝の上で清麿が落ち着かせるように猫を撫でてやれば顔をぐいぐいと手に押し付けてくる。まるで自分が本当に水心子なんだ、と言うように。
    「……この反応…まさかとは思うけれど、本当に君が水心子なのかい…?」
    まさかそんなことが本当にあるのだろうか、とは考えてみるが今まで審神者の体調不良だったり政府からのバグ報告だったりと色々な事例があったことを考えれば不思議ではない…のかもしれない。
    未だ混乱する頭を落ち着かせようと深呼吸し、改めて猫を見つめれば相変わらずふすふすと鼻を鳴らしてこちらを見つめている翡翠と目が合う。どうやら、思い違いではないらしい。
    「はぁ……どこを探しても見つからないわけだ、こんな可愛い姿になってしまっているんだもの」
    朝起きたらこの姿だったのか、ずっと一人で心細くなかったのか、色々聞きたいことはあるがとにかく今は無事に見つかって良かったという安堵が強く、清麿は縁側へと背中を預けて寝転ぶ。
    「みゃう」
    「ふふ…だらしない?ずっと君を探していたんだからこれくらい許してほしいな」
    体勢が変わったことで不満げに鳴き声をもらした猫が胸元まで上がってくると、そこに腰を落ち着かせる。ごろごろと心地の良い喉音を鳴らしながら、胸元で足踏みしてくる姿がなんとも愛らしい。
    「水心子は猫になっても可愛いんだね。可愛いだけじゃなくて凛々しさもあるし…あぁでも、ずっとこの姿のままだと困ってしまうよね」
    艶やかな毛並みを堪能するように手のひら全体で撫で、時折指先で顎を擽ってやれば嬉しそうに頬を擦り寄せてくる。
    ちょん、と鼻先を指で突くと何をするんだというように甘噛みしてくる猫にごめんね、と謝りつつ思わず欠伸を噛み締めた。
    朝から探し回り、やっと見つけたという安堵と縁側の陽射し、胸元の猫の温もりが相まって心地よい眠気を誘ってくる。
    水心子のこの姿のことを報告しようにも主はきっとまだ買い物から帰っていないだろうし、もう暫くはこの猫の水心子を堪能させてもらうのも悪くはない、はず。
    「もう少しだけ、この姿を愛でても許されるかい?主が帰ってきたら報告して…姿が戻ったら、いつもの水心子も撫でて抱きしめて、たくさんキスさせてね」
    おやすみ、と撫でれば「にゃぁ」と控えめな返事をしてくれる様子に笑みをこぼし、清麿は微睡む意識に身を任せた。

    ━━━━━━━━━━━━━━━

    「…ろ、…まろ…」
    「……んん…」
    「清麿!起きてくれ、清麿!」
    聞き慣れた声が深く沈んでいた意識をゆっくり浮上させる。ゆさゆさと身体を揺らされ、重い瞼を開くとそこにはいつもの水心子の姿があった。
    「う、ん……すいしんし…?」
    「こんな所で寝ていたら風邪を引いてしまう、もうそろそろ日も落ちるぞ」
    「あれ…水心子……?いつ、元の姿に戻ったの…?」
    確か先程まで水心子は猫の姿で自分の胸元にいたはずだ。だが自分の胸元に視線を向ければ、その黒猫はすやすやと丸まり気持ち良さそうに寝ているままだ。
    状況が理解出来ていない清麿に水心子は困ったように笑う。
    「何の話をしてるんだ、変な夢でも見たのか?」
    「あ…いや、あのね。話すと長くなるのだけれど…」




    「……全く、そんなはずがあるわけないだろう」
    そのあと身を起こした清麿が事の発端を事細かに説明すると水心子は呆れたようにため息を吐く。
    ため息を吐きたいのはこちらだ、という言葉を飲み込みつつ清麿は気恥ずかしさに思わず顔を背ける。
    結局のところ、水心子が朝から居なかった理由はこうだ。
    夜明け頃に厠に起きた水心子が廊下で審神者とばったり出会った際に、朝から現代に買い物に行くからもし良ければ一緒に付いてきて欲しいと頼み込まれた。
    清麿には申し訳ないが、我が主の頼みならばと了承したものの思った以上に買い物が長引いてしまったこと、そのお詫びにと審神者が甘味をご馳走をしてくれたことが原因となり、本来であれば昼頃に帰還する予定が夕刻になってしまったという事だった。
    「理由は分かった…でも、この子はどうしてあんなに『水心子』という名前に反応したのかな」
    ちゃっかり水心子の膝へと移動して再びスヤスヤと眠る猫に視線を向ける。確かにあの時自分が水心子だとばかりに主張をしてきたのだ、勘違いをしてもおかしくはない。
    「うーん、多分だけど……。先週、私が一週間程近侍を務めた期間があっただろう?実はその時からすでに我が主の部屋でこの猫を飼っていたんだ」
    保護したばかりの子を急に広い本丸の中に離す訳にはいかないからと審神者の部屋の中で環境に慣らしていた際に、近侍であった水心子にとても懐いてしまったこと。それに加え、審神者が水心子の名前を呼び続けた結果『水心子』という名前も覚えてしまったが故に、大きな反応を見せたのではないか。
    そして昨日からこの猫が審神者の部屋を離れ、広い本丸内での生活を始めたこと。それらの全ての偶然が重なった結果、今日の騒動が起きたという。
    「でも本当に心配したんだよ。どこを探しても、誰に聞いても水心子の姿は見えないし…やっと見つけたと思ったら猫になってるだなんて」
    「実際猫にはなっていないだろう。あ、いや…でも何も言わずに出掛けてしまったのは確かに私の落ち度だな…心配をかけてすまない」
    「んーん。こうしてちゃんと戻ってきてくれたからいいんだよ。それに勘違いだったとは言え、水心子が猫になったらこんな感じなのかなっていうのが分かったし」
    ぽす、と水心子の肩に頭を乗せて清麿はどこか楽しげに笑うとふわふわな髪が頬に触れて擽ったい。清麿のほうがよっぽど猫のようだ、なんて思いながら水心子は続けて口を開いた。
    「もし仮に私だったとして、猫の姿のままの方が良かった?」
    「まさか。確かにとても可愛いとは思ったけれど、猫のままじゃ抱きしめてもあげられないしキスだって出来ないよ」
    だから今のままが一番、と言えば水心子は恥ずかしそうに視線を逸らすも何処と無く嬉しそうだ。肩に乗せられた頭にすり、と頬を寄せれば清麿からも笑みがこぼれる。
    「ねぇ水心子。部屋に戻ったらたくさん抱きしめてキスさせてくれる?」
    「んぇっ…!?き、急すぎないか…」
    「心配させたのだからそれくらい許されると思うけど」
    「うぅ…わ、分かった…」
    「キスだけで終わらなかったらごめんね?」
    「き、清麿っ…!!」
    あはは、と清麿が笑えば大きな声に反応した猫が不満げに声をもらす。視線を向ければもぞもぞと動きはするものの起きるまでには至らず水心子の膝の上で眠ったままだ。
    「…部屋に戻るのはもう少しお預けだな」
    「そのようだね。じゃあ起きるまで今日の土産話を聞かせてよ」
    「あぁ、もちろんだ」
    結局そのあと猫は半刻ほど起きずに水心子の足が痺れて立てなくなってしまったのは、また別の話。
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    ka_shion_wr

    DONE清麿が舌ピしてたらいいなっていう完全なる癖のお話。舌ピはいいぞ。
    私は舌ピ開けたとき3日目には普通にご飯食べてましたが麿水ちゃんには2週間ほど我慢して頂きました。我慢してすれ違っちゃう麿水ちゃんは可愛いですね、ワハハ(?)

    ※シリアスになると見せ掛けて、ちょっとだけいかがわしいので注意。
    「……無理だ…」
    自室の机に突っ伏して魂が抜けたようにぼそりと水心子は呟く。
    何が無理かと言えば、ここ二週間ほど清麿からキスをされていない。いや、正確にいえばキスどころか手も繋いでいないし触れられてもいないし、もちろんセックスだってしていない。
    普段であれば清麿から手を繋いできたり、抱き締めてきたり。あるいは自ら甘えるように抱き着いたりキスをしたり。そして夜になれば一緒の布団に入り、そういう雰囲気になれば甘い夜を過ごす。けれどこの二週間はそういったことが全くと言っていいほどにない。出陣や非番だって被っているし、共に過ごす時間だってある。それなのに、だ。
    一週間程前に手を繋ごうとすれば慌てたように手を離され、三日程前には、痺れを切らしてキスがしたいと強請ったところ、「ごめんね」と一言やんわりと断られてしまう始末。
    3680

    ka_shion_wr

    PASTpixivに載せたものです
    とある本丸の4振りがシメパフェに憧れて食べに行くお話。

    麿水、雲雨ですがCP要素は薄いです。
    直接的な会話はないですが審神者が出てきます。
    ※独自本丸設定強め

    ~補足~
    弊本丸の麿水、雨雲の4振りはとても仲良し
    水心子がわりと懐っこい個体
    独自の呼び方で名前を呼んでいます
    冬の夜、甘さを求め「しめぱふぇを食べに行きたい」

    こたつに潜り込み暖を取りながら真剣かつキラキラとした眼差しで端末を見つめて唐突に呟くのは水心子正秀だ。
    「しめぱふぇ…?パフェって、よく長船のみんながおやつに作ってくれるアレ?」
    向かい側に座り手持ち無沙汰とばかりに卓の上のみかんを重ねていた村雲江は首を傾げる。その言葉に水心子は持っていた端末をずい、と近付けてみせた。
    「あぁ。最近万屋街にしめぱふぇ専門店というものが出来たらしい。我が本丸の燭台切達が作るぱふぇも勿論美しく見事だが、このしめぱふぇというものはまた違った美しさがあるんだ」
    村雲は差し出された端末を受け取り視線を落とす。そこには最近万屋街にオープンしたと話題になっている刀剣男士向けの記事。それをスクロールしていけば、確かに普段見るものとはまた違った華やかさのパフェが顔を並ばせていた。
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