鼓動「先生、あんた心臓の音を止められるんだってな」
ユーリスはティーカップをソーサーに置くと、いかにも興味津々といった眼差しを隠そうともせずベレトを見つめた。自室でのお茶会はこれで何度目になるだろう。週末に限らず、ベレトはユーリスを食事や茶会に誘うことを躊躇わなくなっていた。自室で彼と過ごす時間は、戦い続きでほんの少しだけ草臥れてしまったベレトの心を癒してくれる。それは、ベレトを温かく包み込んでくれる毛布のような存在だ。かつて自分の傍でいつも見守っていてくれたジェラルトにも似た、大切な人。それがユーリスだった。その彼から飛び出したセリフに、ベレトはふとティーカップを口元で止める。
「心臓の音を……?」
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