朝靄がガルグ=マク修道院をうっすりと覆う、静かな朝だった。ユーリスは夜明けの薄暗さに乗じて外から秘密の出入り口を抜けてアビスへと帰り着き、もう朝食の支度が始まっているであろう食堂へと向かっていた。七面倒くさいことに今朝の食事当番なのだ。そんなもの、本当に煩わしいならアビスに隠れてバックレて仕舞えばいいものを、仕事終わりにも関わらず律儀に制服に着替えてやってくるところが彼らしいと言える。ふあ、とあくびを噛み殺し、冬の冷たい空気で肺を満たす。今朝も冷え込んでいる。厚い外套の前を掻き合わせ、足を急がせた。
昨夜の取引は妥当だった。これでまた、貧困に喘ぐ人を目の前から一人か二人、減らすことができるだろう。そのおかげで今日の授業中は居眠りをしてしまうだろうが勘弁願いたい。ユーリスはほとんど表情の動かない担任教師の顔を思い浮かべる。そういえば彼は最近髪の色が変わってしまったのだった。若草のような、そう、ちょうどあんな風に朝靄に溶け込むような色だ―――
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