燕の休む場所青獅子学級の扉の上に、数日前からツバメが飛んでいたのは知っていたが、今日になって巣をかけ始めてしまった。ツィリルは仕方なしに柄の長い箒を持って掃除に行く。泥や草を集めて作る巣は汚くて、見た目もよくないし、巣からは今にひな鳥の糞が落ちてくるようになるからだ。
「あ」
授業の前に巣を払おうとしていると、ちょうど教室に入ろうとしていたベレトが足を止める。
「何、ですか?」
「巣を取ってしまうのか」
遠くで二羽のツバメが悲しそうにこちらを見ている。ベレトは表情の動かない顔でツィリルの手元とツバメとを交互に見て、何か言いたげだ。
「もしかして、取らないでほしいんですか。汚れますよ」
「……」
ベレトが黙ってじっと見るので、ツィリルは居心地が悪い。そのうちに、なんだなんだと青獅子学級の生徒たちが何人か外に出てきてしまった。複数の眼に囲まれて、何故だか悪いことをしているような気になってしまう。僕は仕事をしているだけなんだから、責められる謂れはないはずなのに……ツィリルはもぞもぞと、仕方なく箒を下げた。
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