メイドの日「はーい憂太。これ着て。」
そういって渡されたのは、所謂メイド服で。
「男の僕が着て需要あるんですか?」
「えー。何言ってるの憂太。あるよ、需要。」
ぐっと親指を立てた五条はとても楽しそうで。
「…………」
こうなると拒否しても無駄なことは目に見えている為、憂太は諦めるように息を吐くと、手の中に視線を落とし畳まれたそれを広げた。
「色んなメイド服があるけど、僕はやっぱりヴィクトリアンが好きだな。」
黒のロングワンピースにエプロンがついている、至ってシンプルなものだ。過度な露出もなければ極端に丈が短いわけでもなく、清楚で落ち着いた印象を受ける。
これならまだ抵抗は薄いかな。まあ、文化祭のノリと思って諦めよう。
腹を決め、少し待ってて下さいと隣の部屋へと移動しようとした自分に、待ってと声ががかり足を止める。
「これもね。」
手渡されたのは白タイツで、さすがにすぐには了承できず立ち竦む自分に、五条はきらきらと期待の眼差しを向けていて。
また一つ息を吐くと、渋々それを受け取り部屋を後にした。
よく中性的な顔立ちだと人に言われる。ガタイもそこまでよくはないし、男にしては華奢な部類に入るだろう自分の身体は、あまり男性を感じさせない。
そのせいか。鏡に映った自分に然程違和感はなく、それが何だか悔しくて目を逸らした。
さっさと見せて、さっさと脱いでしまおう。
そう思い部屋の扉を開け、五条の待つ部屋へと戻った憂太はその目を大きく見開く。何故ならそこにいたのは
「先生…?」
自分と同じメイド服を着た五条の姿だった。
「…………」
静かな佇まいを見せる彼はとても美しく、気品溢れる一人のメイドのよう見える。
「お。着れたんだ。」
「あの、先生?」
「ああこれ。憂太とお揃いだよー」
「いや、そうじゃなくて」
「かわいい?」
スカートの裾を持ち上げ小首を傾げる姿はとてもあざとく、けれど物凄く
「かわいい、です…!」
その破壊力は想像以上で。その瞬間不覚にも「あるな、需要」と納得してしまう自分がいた。
「でしょー。」
うれしそうに身体を一回転させ、それによってふわりとスカートが綺麗な円を描く。
その様を見ながら、まさか自分にこんな趣味があるとは思わず何とも言えない気持ちでいると、目の前に五条がやってきて。
「憂太もかわいいよ。」
「…そうですか?」
そう言われて複雑な表情を浮かべる自分の顎を、その指が掬い上げる。
「うん。かわいい。」
「っ…ありがとう、ございます……」
他の誰かに言われても全くうれしくはないけど。この人に愛でられるのはとても心地がいいなんて。
だがそれもここまでだった。
「着れたところで設定を発表します。」
「設定?」
「僕がメイド長で、憂太が新人メイドね。」
「…………」
やっぱりそういうことか。そんな気はしてたけど。
「何を教えてくれるんですか?」
「それはやっぱり、SEXの仕方でしょ。」
「そんなの仕事に入ってませんよ。」
「じゃあ僕専属メイドってことで。」
ころっと変わった設定に、適当だなと少し呆れる。結局のところ、ただこの服を着てヤッてみたいという思いつきからなのだろう。
先生って、そういうとこあるもんな。
「じゃあ、僕は何をすればいいですか?」
「そりゃ勿論。ご奉仕だよね♡」
「かしこまりました。」
「えー。そこは恥じらってよ。新人なんだから。」
「…………」
段々と面倒になってきて、五条の足元にしゃがみ込むと徐ろにスカートを捲り上げる。
「キャー!憂太のエッチー!」
さっさと終わらせよう。
今日何度目かの溜息を吐きながら、憂太は五条のボクサーパンツを下ろした。
ご奉仕中。先生を見上げて。綺麗なメイドさんが小さく喘ぐ姿を見て倒錯的な気分になり、何か悪いことをしてるような背徳感を感じてむらっとする憂太も男の子だよね。というのを書きたかったけどえち苦手なので後はご想像にお任せします。
先生が憂太をかわいいと思うように、憂太も先生のことかわいいと思ってるので。決して逆という意味ではないです。
何だかんだいつもより盛り上がったんじゃないかなとは思ってる。
綺麗なメイドさんがいちゃいちゃしてる絵面は本当に最高だと思います。