別離のあとに雲夢江氏を破門されて数日が経った頃、温情が伏魔殿に訪れて魏嬰に話しかけた。
「こんなことを言うのもおかしいかもしれないけど、本当に良かったの?」
「何がだ?」
魏無羨はすっ呆けたように、聞き返す。
「破門されたことよ。」
その言葉に研究で動かしていた手を止め、ようやく温情に方に振り向く。
「あ~~、・・・・。」
「私たちのために、ここまで・・・。」
温情がそう言うと、魏嬰は口角を釣り上げた。
「気にするな。」
「気にするなって!!」
「いいんだ。いずれは、こうなってたと思うし。」
魏嬰の言葉に、温情は怪訝そうに眉間を寄せ、その先を視線で促す。
「俺に金丹はない。いずれ、江澄よりも先に老いていく。最初は鬼道の影響と思われるだろうが、それも十数年を超えてくればそうでないことに気づかれる。気づかれないためには、その前に江氏を出なければならなかったと思う。それが早まっただけだ。」
魏嬰はなんてことないように軽い物言いで、研究作業に戻りながら言った。
「・・・・。」
温情は何か言おうとしたが、魏嬰の言ったことは事実で、それを魏嬰自身が望んでのことだった。決めた本人がそう言うのであれば、温情がとやかく言えたことではない。そんなこと、あの時に散々して最終的に受け入れたのだから。
「あと少しで夕飯だから。」
温情はそう言い残すと、伏魔殿から出ていった。魏嬰は背を向けたまま手を振った。