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    最近忘羨沼に落ちました

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    10月の交流会用の原稿進捗。
    AUプチに参加します。
    モス羨で考えてたら予想以上に設定が膨らんだので、モス羨1本だけが濃厚ですが、余裕があれば他のAUも入れたい…(希望的観測)予定ではR18です。
    ある程度の目処ついたら、交換募集とかお知らせします。

    #忘羨
    WangXian

    法師藍忘機×モス羨①静謐で満たされている森の中、ひらりと舞う小さな影がひとつ。
    暗闇でも、月光に照らされて翅は七色に輝き、キラキラと眩い光を淡く放つ。星の瞬きのような幻想的な光景は、人の目に触れれば注目の的であろう。しかし、この奥深い山中には、その翅の持ち主と一人の魔法使いしかいなかった。
    「魏嬰」
    名を呼ばれ、光源はふわりと声の方へと近寄る。
    「藍湛!」
    よく通る声で光源――妖蛾である魏嬰は、黒衣を纏った男の名を呼び返した。
    「目的の薬草はもう見つかったのか?」
    「うん」
    「じゃあ、家に帰ろう。すっかり日が落ちてきて、おまえも手元が暗くて難儀してないかと思ったけど、要らない気遣いだったな」
    「そんなことはない」
    美しい顔貌が、僅かながらに柔らかくなる。その変化は、数年の付き合いのある魏嬰だから判別できる程度の微かなものだ。
    藍湛――藍忘機は表情が乏しくあまりにも作り物めいた美貌は、冷たい印象を与える。無慈悲で容赦のない恐ろしい魔法使いだと世間では評されているらしいが、それは大きな間違いだ。表向きには解りにくいだけで、真面目で品行方正で優しい人だ。そうでなければ、魏嬰はこうして穏やかに日々を過ごしてはいなかっただろう。
    魏嬰は、この姑蘇の山中で妖蛾として繭からかえったところを藍湛に見つけられた。
    生き物として本来であれば持っているはずの本能――自らがどんな存在で、どうあるべきなのか、どうやって生きていくべきなのか――そういったものを、魏嬰はどこかで零れ落としてしまったらしい。繭になる前の、幼体として生きていた時間はあったはずなのに、一切の記憶がなかった。藍湛に出会った時が、彼にとって最古の記憶だ。
    藍湛曰く、蛾という生き物は、繭の中で一度体が溶けて翅を持つ成体へと変化するのだという。妖が頭に付くとはいえ、基本的に生態は大きく変わらないはずだから、その際に、今までの記憶を失くしていても不思議ではない。そう、教えてくれた。
    何も覚えていない魏嬰を慰めるための気休めに過ぎないかもしれないが、その言葉は魏嬰に安堵を与えた。行き場もなく戸惑っていた魏嬰の保護を藍湛から申し出てくれて、そのまま彼の住まいに置かせてもらっている。
    そんな彼に寄り添ってやりたいと、魏嬰が思うのも自然なことだった。
    藍湛の少し前を飛んで、帰りの夜道を案内する。魏嬰の翅の鱗粉は、光を反射し煌めくことで灯り代わりになる。藍湛にとって魔法で灯りを出すことは造作もないが、魏嬰の厚意を彼は無下にしないのだ。
    ふわふわと宙を舞いながら、魏嬰は他愛もない話をする。今日摘み取った薬草は何の薬に使うつもりなのか、だとか、薬を依頼人は一体どんな人であろうか、だとか。つらつらと途切れることなく魏嬰はおしゃべりをするが、話は全て憶測に過ぎない。藍湛は口数少ないながらも、ぽつりぽつりと話に答えながら帰路を進む。
    藍湛は、人々を助けるための魔法薬を作ることを生業としている。その効果は絶大で評判が高い。魔法使いが作る薬は、本来長年の研究の積み重ねの成果に等しいから、相場としては高価な部類のものだ。だが、藍湛は相当低い価格で提供しており、多くの人が藍湛手製の魔法薬を求めた。需要があるので、金銭面で苦心はしていないらしい。たくさんの依頼を受け、日夜魔法薬作りに明け暮れてはいるが、生活リズムは規則正しく、食事は決まった時間に欠かすことはなく、毎日卯の刻に起きて、亥の刻に寝る。そんな彼の生活は、ほとんどが雲深不知処内で完結していた。
    藍湛は、雲深不知処に籠りきりの生活をしている。薬草や食材の調達のため、敷地内の山中や山を下りてすぐの街に赴くことはあるが、それも週に一度程度で済ましてしまう。薬の依頼は全て文で済ませ、出来たものは依頼人の家に運び屋に届けさせ、人と会うことを極力避けている。雲深不知処に人の立ち入りを禁じるほどの徹底ぶりだ。それ程までに人嫌いなのか、と魏嬰は疑問をぶつけてみたことがあったが、それには答えてくれなかった。藍湛自身が言いたくないのであれば、無理強いをする必要性を感じず、結局、魏嬰には藍湛がこの生活をしている理由はわからないままであった。
    魏嬰も、ここで生きるようになってから敷地内から出たことはない。藍湛の生活に合わせてという意味合いもあったが、藍湛から教わった妖蛾の特性について聞いていたからだった。
    妖蛾の翅の鱗粉には、何でも願いを叶える効果があるのだという。
    そのため、魔法使い達に乱獲され続け、随分昔に絶滅したと伝えられていた。藍湛も、妖蛾を見たのは魏嬰が初めてだったらしい。蔵書閣にある古い文献に記載されているのをみて気づいたのだと明かしてくれた。
    『あんたは、自分の願いのために俺の鱗粉が欲しいとは思わないのか?』
    藍湛に知識を与えられた時に、魏嬰は問うた。魏嬰にそんな話をしてくれる藍湛自身も、魔法使いだ。魔道を極める身であれば、妖蛾の鱗粉は喉から手が出るほどに欲しくなる珍しい最高の素材であろう。黙っていれば、容赦なく魏嬰の両翅を毟り取り、独り占めするのも容易かったはずだ。それをわざわざ、魏嬰自身に事実を伝え狙われる可能性を示唆することに、彼にとって利益はない。せっかくの最高級の素材が入手しづらくなるだけだ。
    『私には……不要だ。それは君のものだから、君に願いたいことができた時に、己のために使うべきだ』
    こんなに無欲の人がいるのだろうか、と魏嬰は驚いた。初対面でいきなり全面的に信用する程、魏嬰は考えなしのお人好しではなく、真偽を見極めようと警戒を怠らなかった。だが、二人での日々を重ねていくうちに、その第一印象は誤りではなかったと確信した。義に厚く、礼節を弁え、驕ることはない。藍湛の絵に描いたような清廉潔白、高潔な為人に心底感心した。
    『君自身を守るためにも、ここからは出ないで欲しい』
    共に暮らすのにあたり、最初に藍湛から告げられた言葉からは、魏嬰の身を案じているのが滲んでいた。真摯な言い方は強く魏嬰の心に刻まれ、好奇心旺盛な質で外の世界も気になってはいたが、素直に藍湛の言葉に従って生活を送っていた。幸いにして、小さな魏嬰にとって雲深不知処の敷地はあまりにも広大で、この閉じ籠った生活に飽きることはなかった。
    存分に魏嬰がおしゃべりをしているうちに、一人と一匹が住まうには広すぎる雲深不知処に辿り着く。いくつかある建物のうち、藍湛が私室として使っている静室へと向かう。文机に魏嬰は舞い降りて一息ついている間に、藍湛はすぐに部屋を出て行ってしまった。少し待っている間に、藍湛は手に盆を持って戻ってきた。
    「夕餉にしよう」
    「おお、いいな! 今日は何を食べるんだ?」
    魏嬰は卓に並べられたものを眺める。小分けにされて運ばれてきた食事の多くはさっぱりとしたもので構成されていたが、必ず一、二品は魏嬰が好む真っ赤な色をした辛いものが置かれていた。加えて、盃に注がれた芳醇な香りが漂う酒を魏嬰の前に並べる。掌に乗るほどの大きさの魏嬰でも食事ができるよう小さな箸と匙も用意されて、向かい合わせて食事をする。食事中にも賑やかな魏嬰を、食うに語らず、と藍湛は窘めたが、それはあまり聞き入れられず流されることが多かった。
    食事はどうするのか、出会った時に早々にぶち当たった問題であった。蛾の生態からすると、花の蜜や樹液、果汁などが主食と考えられたが、魏嬰は所謂妖精に近い、小さな人に大きな翅を持つ姿をしているため、それらを摂取できる針のように長い口は持っていなかった。試しに、と藍湛が様々な食事を用意してくれた結果、人間の食事で特に身体に異変はなく、魏嬰が好む食事が判明したのだった。
    藍湛は酒を嗜まない。偶然譲り受けて誰にも飲まれず手つかずになっていた酒を台所で見つけ、花の蜜などに近いかもしれないと振舞ってくれた酒を魏嬰は大変気に入った。特に姑蘇の銘酒である天子笑の美味さは格別で、毎日飲みたいと思わせるほどだ。残念ながら酒の量は藍湛が管理しているので浴びるように飲むことはできないが、夕餉には必ず出してくれる。随分と、藍湛は魏嬰に対して甘いのだ。
    夕餉を終えると、食器の片づけと薬作りの仕事をするために藍湛は静室から出て行ってしまった。魏嬰は机に残されている酒をゆっくりと楽しみながら、窓から差し込む夜景を眺めた。今宵は満月でまん丸く大きなそれが真っ暗な空を照らす。澄んだ空気の姑蘇では、数多の星明かりも見えた。酒気を帯びていい気分になってくると、酔い覚ましとかこつけて夜空をふわりふわりと羽ばたいて静室から出ることもあった。涼しい風に当たりながら、気ままに翅を広げて舞う。だが、藍湛との約束は守って外には出ない。
    ふと、雲深不知処の外に思い馳せることがある。外はきっと、魏嬰の知らないもので溢れかえっているのだろう。平和で穏やかな時間は少しばかり退屈ではある。外の世界に興味がないといえば嘘になる。だが、恩人でありほぼ家族といえる存在の彼の想いを踏みにじりたくはなかった。週に一度の買い出しで雲深不知処を不在にする時、決まって藍湛は魏嬰の所在を気にした。買い出しから帰宅すると、魏嬰がいることを確認して、僅かばかりに強張らせた表情を緩ませて胸を撫でおろすのだ。余計な心配をかけたくなくて、藍湛の不在時は静室で大人しく待つのが習慣となった。
    そろそろ亥の刻が近い。藍湛が眠るために静室に帰ってくる前に、魏嬰は部屋に舞い戻る。寝台の枕元に落ち着くと、藍湛がちょうど部屋に入ってきた。
    「藍湛お疲れ様。今日の仕事は順調に終わった?」
    「問題ない」
    寝衣に着替えて、寝台に来ると藍湛はすぐに横になった。
    「おやすみ、魏嬰」
    「うん、おやすみ」
    小さな額に唇が軽く触れる。藍湛は魏嬰に口づけを送ってから静かに目を閉じた。夜行性の魏嬰にはまだ眠気は訪れていなかったが、枕元で横になると、藍湛の寝顔をじいと眺めた。長い睫毛に覆われた瞼は閉じられ、すっと高い鼻筋や薄い唇、一つ一つの形が綺麗で、それを見飽きるということはなかった。規則正しい藍湛の静かな寝息を聞いていると、安堵からか段々と睡魔が訪れてきて、魏嬰も眠りへと誘われる。柔らかな寝台に身を任せ、一人と一匹は一日を終えるのだった。
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    Replies from the creator

    azusa_mtm

    PAST支部にあげてるものの再掲。
    現代高校生AU忘羨です。『ハロー、ハッピーバースデー』https://poipiku.com/602513/8742413.htmlの後日談になります。
    バレンタイン、前よりは進展してる二人。
    モーニン、ハッピーバレンタイン 二月という時期は、どうしてこうも寒さが堪えるのだろうか。暖房器具を使っていてもひんやりとした空気が部屋に充満している。カーテンの隙間から差し込む眩い日差しが朝を知らせ覚醒を促されるも、もぞもぞと魏無羨はベッドの上で布団に包まりそこから動こうとしない。
     本日は平日で、言わずもがな学生の身分である魏無羨は学校に登校しなければならない。そろそろ支度をするべきであると、頭では理解している。けれど、この温くて幸せな空間を自ら手放すのが惜しく、あっさりと欲に負けて再びうとうと微睡み始めてしまう。遅刻癖のある魏無羨が、より寝坊の頻度が増える季節である。
     入学した当時は、同級生兼幼馴染兼お隣さんの江澄がズカズカと自室に上がり込んで魏無羨を起こしに来てくれていたが、あまりの寝穢い様に早々に見切りをつけて来なくなってしまった。なんとも薄情な奴である。みの虫になっている魏無羨の名前を大声で呼びながら、遠慮なく身体を大きく揺らし、ベッドから引き摺り出されていたのは、今となっては懐かしい思い出だ。
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    「ん、お……おう……」
    声がした方へ目線を下げれば、走って乱れた深藍色のスカートを制服の襟と共に整えている。
    「別に急がなくていいぜ、待ってるだろ」
    「何事も、迅速対応が肝要です」
    「……そっか、ありがとな」
    冷静な青藍の瞳に見つめられちまうと、どうも胸が騒つく。
    「此方こそ、何時もありがとうございます……宜しいのですか」
    「ん、別に構わねぇよ……わしが勝手に待ってるだけだ」
    「そうですか……申し訳無いのですが、此方としては心強いです」
    無造作に首先まで切った髪、頭も良いことが解る口調で余計なことは喋らねぇ。教室でも髪型だの化粧だの煩く会話するのが女子ってもんだろうと思っていたが、こいつは制服以外全く違う。今迄見たことねぇもんだから、目が離せない。放っておけない理由は、他にもあるんだけどよ。
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