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    a_9matu

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    POIPOI 21

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    随分前に書きかけたポメガバースの納配をなんとなく書き上げました。

    ポメガバースの納配僕とカールさんは番だ。けれどそこに恋愛的事情は存在しない。業務的なもので僕のヒートを軽減させるためにわざわざなってくれたというだけのこと。だからあまり迷惑はかけられない。僕はベッドの上にうずくまり必死にヒートに耐えていた。本来、番のいるオメガはこういう時に相手の私物を集めて巣作りを行うのだがカールさんの迷惑のかかることしたくないのでこうして我慢している。それにカールさんと番になったのが原因なのか、ある一定時間経つとヒートが楽になる現象が起きるようになった。だからそれまでヒートに耐えなくちゃ。虚ろになっていく視界に手足に力が入らなくなってくる。息も苦しくて頭が割れるように痛い。そして、僕はそのまま気を失った。

    ふと目覚めると僕の視界は随分と低くなっていて、ヒートが嘘だったように身軽になっていた。覆いかぶさっている布をどうにか振り払うとベットの上からひょいと飛び降りる。今の僕の姿を見てきっと誰も気づかないだろう。なにせ犬になっているのだから。これがどういう原理で起こるのかは分からないけれどこの姿も案外悪くない。ヒートが落ち着くのも理由の一つなのだが、他にも僕にとって嬉しいことがあった。
    『ウィック起きて!!起きて!!』
    『……くぅん、ビクター?ごはん…?』
    『ごはんじゃないよ!遊ぼ!!』
    それは犬になったことで大好きな相棒と話せるようになったこと。手紙を貰うことはできないけど、話せるだけでも十分に嬉しい。僕はテンションが上がってしまい、ウィックの周りをピョンピョンと飛び跳ねる。ウィックは気だるげに起きてくれたがやっぱりお腹が減っているのだろう。寝る前にご飯をあんなにあげたのに食いしん坊だな。でも、今の僕じゃウィックにご飯をあげられないし……。外に行って誰かにウィックのご飯をあげて貰ったほうがいいかも。
    『ウィック、外に行こう!誰かにごはん貰おうよ』
    『……そうだね。ビクター』
    のそのそと歩き出すウィックの背を押して一緒に外に出る。さてと、誰かごはんをくれそうな人はいないかなとキョロキョロを辺りを見回す。すると突然ウィックが走り出した。
    『えっ、ウィックどこにいくの!?』
    ウィックを追いかけていくとバラと薬品の香りが混じった良く知った独特な匂いを感じる。まさかと思いながらウィックに追いつくと。すぐ側にイソップさんがいた。バレたらマズイ。僕はとっさに物陰に隠れた。ウィックはイソップさんに噛みつくとどうやらおやつをねだっているようだ。たしかに僕と一緒にいるときイソップさんはウィックによくおやつをくれる。だから、匂いに気づいて走り出したのだろう。
    「あれ……ウィックだけですか?ビクターはどこに……」
    カールさんが周りを見回している。もしかして、僕のこと探していたりするのだろうか?まさかそんなはずはないよね。とりあえずウィックには悪いがこっそりと立ち去ろうと背を向けて走る。
    「ビクター?」
    僕の姿を見てカールさんが声をかけてきた。あれ?僕って今は犬の姿だから分からないはずだよね。もしかして番同士だから匂いでわかるとか。僕は犬の姿にも関わらず嗅覚は人間と変わらないせいかカールさんの姿をみるまで全然気が付かなかったし。αにだけはΩの匂いが分かるとかそういうものなのかな。ともかく見つかると厄介なことになりそうなのは確かなので僕は聞こえなかったフリをしてその場を離れた。


    さてと、これからどうしようかな。せっかくウィックと遊びたかったのにカールさんのところにいくなんて。全くウィックの食いしん坊には呆れてしまう。部屋に戻りたいけど、カールさんが来てそうだし、かと言って他の人のところに行くのたくさんの好機の目にさらされることになりそう。そうだ!荘園の他のペットに会ってみるのはどうだろう。ウィックともおしゃべりできたし、ウィック以外の動物とおしゃべりできるかと思うとわくわくする。どこにいこうかなとウロウロしていると、廊下になにか紙が落ちているのが見えた。あれはなんだろうと近づいてみるとどうやら手紙のようだった。こんなところに手紙が落ちてる!!っと軽い足取りで手紙に近づきくわえようとした瞬間に頭上からなにやらかごが落ちてきた。
    「捕まえました。まさか、本当に手紙につられるなんて……」
    逃げ出そうともがくけれど僕は簡単にカールさんに抱きかかえられてしまった。やっぱりバレていたんだ……どうしようと思わずくぅ~んと鼻を鳴らしてしまう。
    「ビクター……ですよね?Ωの中でも寂しさのあまり犬になってしまうとい話はきいたことありましたが……まさか、ビクターが該当するとは思っていませんでした。」
    驚いているカールさんに恥ずかしくて穴があったら今すぐ入りたい気持ちでいっぱいだ。だいたい業務的な番なのにそこまで面倒見てもらうのはとても申し訳ないし……。でも、カールさんに抱きかかえられているとても落ち着く。このまま目をつぶってこの身を委ねてしまっても構わないくらいに心地よくて。気がつけばカールさんの部屋まで連行されていた。
    「それにしても寂しくならないようにさせるというのは具体的にどうすればいいのでしょうか?」
    戸惑いながらもカールさんはベッドに腰を掛けて僕を抱きながら撫で続けている。カールさんが僕に構ってくれて、一緒にいてくれて、優しくしてくれる。それだけで僕は幸せな気持ちで満たされていく。するとポンと僕の姿が犬から人間に戻ってしまった。当然服なんて着ておらず、裸のままでカールさんの上に乗っていることになり、恥ずかしさで今度こそ逃げ出そうとするとベッドにそのまま抑えつけられた。
    「ビクター……まだ、ヒートは終わってませんよね?」
    「で、でも……カールさんにめ、迷惑に……」
    「それじゃあ、番になった意味が無いでしょう?それに貴方は我慢しすぎて犬になってしまったじゃないですか?」
    僕は言い返す言葉も無く黙ってしまう。カールさんは何事も無いようにそのまま進めようとするので流石に待って欲しいと止めた。少し不満そうな顔をしている気がするけど僕としてはどうしても聞きたいことがあった。
    「その、カールさんはなんで僕と……番に??カールさんに僕と番になるメリットなんて何もないですよね??」
    「私とビクターが運命だからという理由以外になにかあるのですか??」
    平然と言うカールさんに僕は戸惑う。てっきり、僕に同情して業務的に番になってくれたとばかり思っていた。
    「でも!その、う、運命でも……カールさんは僕なんかより他の人を番にしたほうが……」
    「貴方は……私の運命のです。番でなくとも……私の用意した棺に眠るのはビクター以外に考えられません。なので、貴方が眠るそのときまで私が貴方を番としてしばりつけることを許してくださいますか?」
    顔が真っ赤になって上手く声が出せない。少しだけ不安そうに揺れるカールさんの目を安心させたくて僕は唇を重ねた。もう、犬になれないのは寂しいけれどカールさん……うんんイソップさんが僕の心を満たしてくれるのならそれでいいと思えたんだ。
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