龍太郎とやんつよのバックアップ一月四日、三が日明けが俺の兄貴、南城龍太郎の誕生日である。仕事で家主が不在の桜屋敷書庵で、俺は和服で湯を沸かしている。
「なんで和服?」
龍太郎が言う。
「薫の命令」
答えると龍太郎は笑う。
「フフ、着慣れなくても似合ってるぞ。薫が帰ってくるまで脱げないな」
しゅんしゅん、と湯が音を立てている。俺は火を見守りながら、
「誕生日おめでとう」
と、龍太郎に桐の箱を差し出す。
「箱入り? なんかすごいな」
「なんか凄いんだよ、薫が選んだやつだから」
「恐れ多いな」
「日常使いできる範囲って言ってたけど。まあ開けて」
「薫の日常使いの範囲わかんねえなあ」
龍太郎は桐の箱にかかった紐を解くと、箱を開けた。蓋の裏に、墨で銘が書いてある。俺には読めない。
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