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    ゆゆしきゆく

    @yysk_daimondai

    節操がねぇ
    〜ようこそ変態の森へ〜

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    ゆゆしきゆく

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    ジョーチェリ、途中…書き終わるといいなぁ
    大人の拗らせた両片思いはめんどくさいよね
    こじろうだけに

    #ジョーチェリ
    giocelli

    「…アダム、元気にしてっかな」
    ふと俺は懐かしい名前を口に出した。
    アダムに別れを告げられてから一年半が経っていた。
    最初は落ち込んでいた薫も徐々に元気を取り戻していて、そんな薫にアダムの名前を出すのは最低だなと思ったけど言葉は取り消さなかった。
    あの後高校を卒業した俺たちはそれぞれ大学と専門学校に進学して、別々の道を歩き出していたけど、夜になったらボードをもっていつもの場所に集うのは今も昔と変わらない。
    「……」
    薫は何も答えなかった。
    けど、その目は悲しげに伏せられていた。
    「薫、話があるんだ」
    俺の言葉で凹んでる薫、悲しんでる薫、今すぐ抱きしめてやりたいくらいだ。
    でも、それはダメだ。
    だって俺たちは幼馴染だから。
    「俺、イタリアに行くことにした」
    なんで、と薫の口が開いたけど、声は聞こえなかった。
    だってこのまま2人でいたらもう二度と離れられなくなると思ったんだ。
    「調理師免許ももう取ったし武者修行ってやつ?
    イタリアの飯ってすげー美味いじゃん、それにイタリアの女の子って可愛いしさぁ
    やっぱモテる男としては本場の口説き方を覚えておきたいって言うか」
    呆然として何も話さない薫とは正反対に俺の口はよく回る。
    嘘ついてごめんな、薫。



    「…カーラ、今何時だ」
    「午前2時13分です、マスター」
    チッと薫は舌打ちをする。
    嫌な夢を見たせいで眠りが浅かったせいだ。
    もう、何年も前になるというのに。
    あいつが、虎次郎が俺の元を去ってからもう数年の時が経った。
    いや、元々あいつは俺のものではない、ただの幼馴染だ。
    だから、俺の元を去るという言葉はおかしい。
    脳裏に虎次郎と過ごした日々が思い浮かぶ。
    誰よりも長く一緒にいた。
    喧嘩して、スケートして、また喧嘩して、そして…
    …俺達は本当にただの幼馴染だったのだろうか。
    今となってはその答えすらわからない。
    だってその答えを知る相手はここにはもう居ないから。
    あぁ、イライラする、頭も少し痛い。
    睡眠不足とストレスのせいだ。
    …違う、お前のせいだ。
    全部お前のせいだ、虎次郎…



    「一件のメッセージを受信しました
    読み上げますか?」
    「あぁ、差出人は?」
    ある日の午後、カーラがメッセージの受信を告げた。
    一体誰からだろうか、仕事の依頼だろうか。
    「南城虎次郎です、読み上げます」
    「は」
    今、カーラはなんと言った?
    南城虎次郎?
    口から小さく声が漏れて、持っていた水の入ったグラスが重い音を立ててゴロリと足元に転がった。
    溢れた水が足袋を濡らすがそんなこと気にならない。
    「三日後の土曜日に帰国する…以上です」
    それはたった一行の短いメッセージだった。
    けれどそのメッセージは薫の心を激しく掻き乱した。
    虎次郎が、帰ってくる?
    なんで?何年も連絡なんて寄越さなかったくせに、なんで今更…??




    「っあー…送っちまった…」
    虎次郎は癖のかかった深緑の頭をわしゃわしゃと掻きむしった。
    この数年間トラットリア、オステリア、リストランテなどあらゆる所で働いて、最終的にはシェフを任されるまで成長した。
    薫への想いを断ち切る為にイタリアに来て、がむしゃらに動いていたおかげだ。
    最初は覚束なかったイタリア語も今じゃペラペラだし、女の子を口説くにも全く苦労しない。
    自分で言うのもなんだが俺は料理の才能があるみたいで、周りにも認められていた。
    だから、ここで一生シェフとしてやっていこうかとも思った。
    けど、それはなんだか違う気がした。
    そろそろ次のステップに進むべきだと、何故だかそう思った。
    例えば、自分の店を構えるとか。
    場所はどこがいいだろう?
    東京?大阪?都心は家賃が高いかなぁ。
    あぁ、地元に帰って店を開くのもアリだな。
    俺が産まれ育った沖縄。
    薫と過ごした沖縄。
    「…薫に、会いたい」
    無意識に口から出た言葉に自分が一番驚いた。
    今までそんなこと思ったことなかったのに、どうして?
    でも、そんな思いとは裏腹に、堰を切ったように薫への気持ちが溢れ出してきて困った。
    会いたい、薫に会いたい。
    会って、話をして、スケートをして、また、昔みたいに…
    なんて都合がいいんだろうか。
    自分から手を離したのに。
    今でもあの顔を覚えている。
    俺が日本を去ると告げた時の薫の顔。
    まだ、スケート続けてんのかな。
    どんな職業について、どんな大人になっているんだろう。
    恋人が出来ていたりするんだろうか。
    手を離したのは俺の方だけど、薫も行くなとは言わなかった。
    ただ、小さくそうかと呟いた。
    会いたい、会いたいけど、会いに来てくれなんて言えない。
    でも溢れんばかりのこの思いはどうしようもなくって。
    だから一言だけ、三日後の土曜日に帰国するとだけを記載して、数年前と同じアドレスに、アドレスが変更されていないことを祈ってボタンを押した。
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    MAIKINGヴ愛後のモクチェズ。モ母を捏造してるよ。モがぐるぐる要らないことを考えたものの開き直る話。
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    【モクチェズ】その辺の犬にでも食わせてやる 何度か画面に指を走らせて、写真を数枚ずつスライドする。どんな基準で選んでるのか聞いてないが、選りすぐりです、と(いつの間にか傘下に加わっていた)"社員"に告げられた通り、確かにどの子も別嬪さんだ。
    (…………うーん、)
    けど残念ながら全くピンと来ない。これだけタイプの違う美女を並べられてたら1人2人くらい気になってもいいはずなんだが。
    (…………やっぱ違うよなぁ)
    俺はタブレットを置いてため息をつく。


     チェズレイを連れて母親に会いに行ったのはつい数日前のことだった。事前に連絡を入れてたものの、それこそ数十年ぶりに会う息子が目も覚めるような美人さんを連れて帰ったもんだから驚かれて、俺の近況は早々に寧ろチェズレイの方が質問攻めになっていた。やれおいくつだの、お生まれはどちらだの——下手すりゃあの訪問中、母とよく喋ったのはチェズレイの方だったかもしれない。それで、数日を(一秒たりとも暮らしてない)実家で過ごした後、出発する俺達に向かって名残惜しそうにしていた母はこう言った——『次に来る時は家族が増えてるかもしれないわね』と。
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