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    そのこ

    @banikawasonoko

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    文責 そのこ

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    ⓒKonami Digital Entertainment

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    そのこ

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    傭兵隊の砦陥落後、クルガンとシード。火炎槍、ここで持ち出して来たらそりゃあびびるよなトランの国宝だとおもうんですけど、ビクトールさんはどう思いますか?

    #幻想水滸伝2
    theWaterMarginOfIllusion2

    2025-04-08



     部下からの報告を受け、クルガンは元より寄っていた眉間のしわをさらに深くする。
     傭兵隊の砦は落ち、焼け跡がくすぶっている。直接攻め込んだ白狼軍は大爆発に巻き込まれ、それなりの損害が出ているという。ルカもまた手ひどい火傷を負った。おののき、撤退を進軍した軍医は、ルカ自身の命により後方へ送られたという。
     電撃的にジョウストンへ攻め入り、トト、リューベと壊滅させたハイランド軍が次にその刃を向けたのはミューズが雇う傭兵部隊だ。二年ほど前に設立され、東方の守りを任されている。残しておけばミューズを攻める際に後ろを取られる可能性があり、単純な戦力としても無視するには少々厄介だった。とはいえだ。
     たかが傭兵だ。命を賭してミューズを守るとも思えなかった。白狼軍をのぞく全軍で包囲したやり方が間違っていたとは今でも思っていない。
    「結局、あいつらのありゃなんだったんだ」
    「火炎槍だ。話に聞いたことぐらいあるだろう」
     大軍でもって戦意を削ぎ、戦わずして勝利を得る。それ自体は間違っていない。間違っていたとすれば敵の戦力の見積りだ。傭兵たちが持ち出してきた武器は、それこそ予想外と言ってもいい。
    「聞いたことねえけど」
    「トラン共和国の国宝だ」
     シードが首をかしげた。それも仕方がない。こんなところにあるはずもない秘宝だ。赤月帝国の鉄甲騎馬隊を壊滅に追い込んだ解放軍の兵器。そのあまりの威力のせいか、かの戦争でも一度しか使われなかった。
     話に聞くように、百歩の長さに伸びる炎とはいかなかったが、それでもその熱に、音に、何よりもその存在感に、馬たちが怯えた。横に広がれない地形で速度の出せない騎兵にとって、あれは天敵と言ってもよかった。
    「でもよ、それが爆発したんだろ。あいつらの手元にももうないんじゃねえのか」
    「なぜそう言い切れる?」
     息切れをしたのも見たが、一度持ち出され、脳裏にその威力が焼きついてしまえば、ハイランドの恐怖となりえる。二度目があるかもしれない。穂先から吐き出された炎に、鉄の鎧ごと蒸し焼きにされる恐怖は、そう簡単に抑えられるものではなかった。
     むう、とシードは唇を尖らせる。
    「あの火の出るやつも怖えけど、俺としちゃ、あの逃げ足のほうが嫌だね」
    「……そうだな」
     全滅させるつもりだった。少なくとも、ルカはそう考えていただろう。全軍で包囲し、殲滅する。それが作戦目標であった。総大将であるルカ自ら敵地に乗り込み、全てを血祭りに上げるつもりだったと言うのに、現実はどうだ。
     確かに砦は落ちた。だが、全て焼けてしまった。ここを補給拠点とすることは出来ないし、書類めいたものは全て灰かがれきの下。部隊を率いていた人間の首級も挙げられていなければ、打ち取れた傭兵の数そのものが少ない。
     ルカが背後に回り込んだまでは良かったのだ。そこから、拠点を捨てるまでの判断があまりにも早い。
    「ルカ様にも困ったものだ」
     クルガンはそっとため息をつく。ここにシードしかいないから言える言葉だ。シードは赤毛を揺らして小さく笑う。
     皇子自ら最前線に立つ。それ自体のメリットは分かる。だが、今回はそれが裏目に出た。勢いよく上がった炎と爆発からルカを救い出すために、追撃の手がどうしても緩んだ。網を絞り切れなくては、得られる獲物が少なくなるのは道理だろう。
     傭兵部隊が散り散りになったのは確かだ。だがそれが再集結しないとは限らない。ルカに攻め込まれたあの瞬間に、傭兵たちは一瞬で目的を切り替えたという事だ。
     だが、とクルガンは考える。ミューズの正規軍と傭兵隊は反目しあっている。そこはまだつけ入る隙だ。下手に壊滅させたがゆえに、ミューズが自らの力を終結させ、より強固となる可能性はまだ存在している。
     傭兵がいるからこそ、敗戦の責任を問う、という作業が発生するはずだ。そう仕向けることも出来るだろう。
     シードにそう言ってみれば、その手の事が嫌いな男は苦い顔をしてみせる。
    「奴らもそんなにバカかねえ」
    「バカであってほしいものだ」
     とはいえ、面倒な相手を殺す絶好の機会を逃したのは確かなのだ。奴らがまともに動かぬよう、手を打つ必要はありそうだった。

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