かわいいひと羊飼いの少年に羊の盗人だと誤解され散々追いかけ回された後。兄貴の弁明でどうにか勘違いだった事を納得して貰って、お詫びとして生まれたての子ヤギを抱かせて貰う事になった。
「ふわふわで可愛いな」
「でもこの子少食で母ヤギのお乳をあまり飲まないんだ。そうだ!母ヤギのミルクも貰って行ってくれよ!」
「いいのか!?あ、でも兄貴の分は……」
「――私の事は気にするな。君が持って行くといい。君の母もきっと喜ぶよ」
兄貴は牧場の柵へ器用に腰掛けたままにこにこと俺を眺めていた。兄貴は子ヤギを抱かないのか?と聞いたら馬が匂いを嫌うと良くないから、と遠回しに遠慮されちまった。
風が吹き草むらをさらさらと凪いでいく。都会の喧騒のデリーと違って此処は故郷のゴーントに近い匂いがした。
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