「ルイー!」
息を上げながら駆け寄ってくるツカサくんに、「そんなに慌てると転んでしまうよ」と声を掛ける前に彼は見事に足を滑らせた。
持ち前の体幹の良さに加え、咄嗟に手を使って転ぶ事は回避したようだ。気にした様子もなく、こちらに近付いてくる。
「ケガはしてないかい?」
「手を少しだけ擦りむいたが、問題ないだろう!」
見せられた手のひらは血が僅かに滲んでいて、痛々しさはないけれどこのままにしておくことも出来ない。
「手を貸して」
「洗ってくるから、待ってろ」
治療をするためにツカサくんの手を取ろうとすると、その手はスルリと抜けていく。
彼は近くの水場へ行き、土を洗い流して戻ってきた。
「頼む」
「失礼するよ」
差し出された手を受け取って、舌で傷口を舐める。すると、あっという間に皮膚は治り痕すら残らない。
1477