こっちの台詞です「少年、私は君を好きになってしまった」
懺悔をする罪人のように両手で顔を塞ぎながらアオガミは吐き出した。そう、吐き出した。重い、重い告白であった。
「君を愛してしまったのだ」
――赦される筈がない。
神造魔人の己が感情を抱いてしまったことも、本人に告げてしまったことも。
罪を重ねる一方だと、アオガミが己を傷つけるかのように顔を覆う手に力を込めようとするが。
「アオガミ」
白銀の手に重なる柔らかな手。強く瞑った闇の向こうから聞こえてくる温かな声。
「アオガミ」
何度も名を繰り返して呼び、少年はそっとアオガミの手を顔から外させる。
天岩戸が如く頑丈かと思えた両手は、少年の前では全くの無意味であった。
「アオガミ」
両手で覆いたかったのは、決して隠しきれないだろう少年へ向けてしまう執着の視線。けれども少年はアオガミの最後の足掻きすら赦さず、そっと指先でアオガミの瞼を撫でた。
アオガミはもう、瞑り続けることは出来なかった。
他ならぬ少年が、眼を開けることを望んでいるのだから。
「やっと俺を見てくれた」
瞼に触れた指先で、そっとアオガミの頬をなぞる少年。
彼の緑灰色の瞳に映るのは、黄金の瞳をぎらぎらと輝かせるアオガミの顔。
アオガミの瞳に映るのは――。
「愛してるよ、アオガミ」
きらきらと輝く、少年の微笑みであった。