美味しそうに見えた、なんて末期だ「少年、今の私にはメンテナンスが必要だ」
共同浴場から寮室に戻ったばかりの少年に告げられたのは、突然の申告。
「どこか悪いの!?」
頭上に被せていたタオルが床に落ちたことも気づかずに、少年は半身へと駆け寄る。湯上がりで火照っているせいか、触れた白銀の腕はいつもより冷たく感じるが、何かしらいつもと違う様子はアオガミにはない。
「駄目だ、少年」
「駄目?」
「私に、近づいては」
近づくなと言いつつ、アオガミの手が少年の両肩に乗せられた。
黄金の双眸に映るのは少年の姿だ。乾ききっていない濡れた髪を額に貼り付け、湯浴みにより普段より赤味が増した頬をしている半身の姿。
「アオガミ?」
「……」
「大丈夫?」
少年から差し向けられる眼差しは心配と、信頼に満ちている。
「……すまない、少年」
――己はやはり、悪魔なのだと。
自身の欲望から目を逸らしきることが出来ず、アオガミの手が少年の柔らかな頬に触れる。そして、唇が重なり合い――。
そこから先は、ふたりきりの時間である。