なんだって知ってた アオガミは神造魔人である。
作られた"目的"を達成する為、彼には豊富な知識が与えられた。また、ベテル日本支部のデーターベースからいつでも必要な情報を得る事が出来ている。
――故に、アオガミはなんだって知っていたのだ。
「アオガミ」
隣を歩く少年が、アオガミの名を呼ぶ。
「なんだろうか、少年?」
「ちょっと、呼んでみたかっただけ」
「……そうか」
「うん」
僅かに頬を赤らめ、嬉しそうにアオガミの名を紡ぐ少年。十八年ぶりの覚醒の切っ掛けである、アオガミの知恵。
彼の一挙一動には不可解なものが多く、アオガミには説明が出来なかった。けれども、不快を覚えることは一切無い。寧ろ、アオガミは常に少年を視線で追うようになっていた。
(何故、なのだろうか)
己に与えられた知識や、検索では知る事が出来ない自身の現状。
――どうして、少年に名を呼ばれるだけで彼の傍を離れたくなくなるのか。
――どうして、ナホビノになる必要が無い時に手を繋ぎたくなるのか。
(いつか、知る時が来るのだろうか)
自身が胸に抱く感情の名を知らぬまま、アオガミは少年の隣を歩き続けるのであった