どこか知らない場所へ「そんなこと思ったことない?」
人も疎らな始発の電車。
乗客の殆どが眠りに落ちている空間で、少年は隣に座る神造魔人に問いかけた。
「私は」
突然、夜明けと同時に目を覚まし、半身を電車へと誘った理由。
「君の隣ならば、何処でも」
少年の望みを肯定するのは簡単だ。けれども、彼には悔いのない選択をして欲しい。だからこそ、アオガミは答えた。己の本心を。
「そっか」
神造魔人の肩に触れる柔らかな黒髪。
――どうか、この時間が少しでも続くように。
告げた本心の裏にある欲望。少年の選択に影響を与えかねない己の心から目を逸らすように、アオガミは黄金の双眸を閉ざす。
次の駅まで、あと数分。