ねえ?(サイド美観) 真夜中の空を通り過ぎた雨は幻だったのではないかと思えるほど、美しい朝だった。
早朝の招集がかかっていたのに、わたしは寝坊してしまった。――だって、昨夜はいろいろあったから。
橋を渡りきったところで制服のポケットから携帯電話を取り出し、時間を確認する。集合時間から既に二十分は経過していた。
こんな時間に顔を出したら、「まったく、大遅刻ですよ」と、先輩くんに嫌味を言われちゃうかな。「おや、眉美くん。何かのっぴきならない事情でもあったのかね?」と、リーダーに心配されちゃうかな。
火照りを残したままの身体をひきずって、まだ眠たい目をこすりながら、わたしは朝の空気で冷やされた廊下を抜け、美術室へと向かう。
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