親友というには愛深く「我が名は吸血鬼——」
シンヨコでよくある吸血鬼騒動。
今夜も今夜とて吸血鬼が現れる。
それにいつものようにシンヨコの住人が巻き込まれ、退治人や吸対が退治して一件落着——とはならなかった。
三木カナエが消失した。
久しぶりに飯でも行こうと連れ立って、シンヨコの町を歩いていたら、吸血鬼が何かを叫び、ビームのような光を受けた三木は輪郭がぼやけ、空気に溶けるように消え去った。
「え?」
三木がいた空間を触る。
なんの手応えもない。
吸血鬼は、と慌てて周囲を探すが、もう逃げおおせた後であった。
目の前で人が煙のように消えた。
異常事態とはいえ、神在月はそこまで焦ってはいなかった。
ここはシンヨコ。超常な出来事が日常な町。
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