夏五版ワンドロワンライ第79回お題「境界線」 これが境界線だ、と五条は言った。
そこら辺から拾い上げた木の枝で、五条と夏油の間に引かれた線。高さもなければ深くもない。一歩踏み出せば簡単に越えることができる。しかし言われた途端に、夏油の足は動かなくなった。
五条の背後に聳え立つ、半分朽ちた建物を見上げる。緩やかだがだらだらと続く山道を、2時間もかけて登ってきて、ようやく辿り着いた目的地だ。
この先に、遂行すべき任務がある。しかし。
「別に、俺ひとりでも平気だし、ここで待っててもいい。今回行けなかったからって退学にはなんねぇだろう。生涯呪霊だけ祓った呪術師だっていっぱいいる」
だから無理はしなくていい。決めるのはお前だ。色の濃いサングラス越しでも、五条のあの青い瞳が夏油を窺っていることはわかる。
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