しらねぇと絵梨佳に返してから狐2人の様子が変だと感じたのは男の狐が挨拶をしてからだった。
「ようこそおいでくださいました。穢れを祓っていただく間よろしくお願いします。僕は暁人、そしてこちらは妹の麻里です。」
2人してお辞儀をして妹の方が警戒を顕にした表情をしてKKを見ていたからだ。だがすぐ兄の暁人が宥めたのか麻里は暁人の後ろに姿を隠した。
先程KKを知ってるかのような素振りを見せながらも今は警戒心を顕にしてる麻里に思うところはあるがそれよりも気になることがあった。それは兄の暁人だ。
暁人の服装は腹部を晒すようものでしかも晒されたそこには太極図の模様があり、尻尾は4本。
その本数を見た瞬間KKは主人を守る下っ端の妖怪且つ影武者としての役割を担っているのだと予想する。だがその予想が間違いだったのだと嫌でも気付くことになる。
案内役に指名された神主の方を見て再び暁人の方へ目線を寄越すと目を見開く。そして自分の考えが誤っていたのだと暁人は本物の守り神であり今も尚穢れに苦しんでいるのだと一本減った尻尾を見て気付かされたのだ。
「お前……元は幾つだ」
暁人の尻尾を見ながら声を掛けると後ろに隠れていた妹が「兄に対して失礼ですよ!」と怒鳴り声を上げるもKKにとって今は不躾な態度に関して気にしてる余裕はなかった。暁人の尻尾が9本だった場合6本も失われてるとなると穢れがどれほど大きくなっているのか皆目見当がつかないからだ。
暁人は麻里を宥めながら「9本です。僕は九尾の狐、ここの守り神を務めております」そう答えを聞くとKKは頭を抱えたくなった。まさか、そのまさかだ、不安要素が現実となって知ってしまったせいで時間に余裕がない事もハッキリとし、危険な状態だと神主に穢れの場所まで急ぐよう伝えた。
その尋常じゃない焦りを見た神主は慌てて「こちらです」とKKを案内し始める。絵梨佳は「すぐ追いつくから」と伝え持っていた御神水をあの2人に渡しに行ったのを見て神主の後に続いた。
KKはあの2人に関してまた失うわけにはいかねぇと焦燥感に駆られるもすぐに我に返り立ち止まり首を傾げた。
そもそも守り神なるものと親しくなった記憶もなければこの2人にあった記憶もないのだ。
だが何故だかこの2人に関して懐かしさを拭えなかった。この気持ちに気付くと共になぜかたまに子供の声が聞こえるようになった。その声は自分の子供の声ではなく懐かしく落ち着く声で穢れが悪さをしているのかと思い追いついて隣に来た絵梨佳に声が聞こえるか聞くも首を横に振り「聞こえない」と答える。
つまりこの声はKKにしか聞こえない声でありまた何かを忘れている喪失感を感じた。