「きゃはははっあと少し、あと少しで私のもの!」
KKと暁人の間を遮る蔦の上を自分の椅子かの様に座りながら怪異と思われる女が笑い声をあげる
「お前が花吐きの原因か」
「そうよ?でもなに?私は背中を押してあげただけ。気持ちを伝えない方が悪いわ。」
女は悪気はないのか平然と言い退けくすくす笑う。それを見て苛立ちからKKは舌打ちを零す。
「背中を押すだけなら暁人を返してもらおうか」
「嫌よ。彼は私が好きだった彼とそっくり。とても暖かくて陽だまりのよう。私気に入っちゃった。だから返してあげない」
女の感情と呪いは繋がりが強いのか暁人は咳き込み血がついた花を吐き出す。
「暁人!!くそっ!」
「ざぁんねん、貴方はそこで彼が朽ちるのを見てるだけでなぁにもできないのよ」
くすくす笑い続ける女にKKは顔を歪め暁人の名を呼び続けた。だが暁人は反応を示す事なくただただKKの声が森に響き渡った。
「そんなに好きなのにどうして気持ちを伝えなかったのかしら?…でも良いわ、そのおかげで彼が手に入るんだもの」
女が蔦から飛び降り暁人の側に寄った瞬間KKはニヤリと笑う。そして蔦をつかむと火のエーテルを放つのではなく送り込み蔦を枯れさせた、そして女が反応するより早く札を女に貼る。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
女は札の効力に為すすべなく悲鳴をあげる。それをKKは五月蝿そうに見遣り暁人の側に駆けつける。
「暁人!起きろ!暁人!」
暁人の肩を揺すり顔を見ると暁人は薄く瞼を開き「けぇ…け…?」と呟く。
「あぁ、俺だ…あき「夢…?ゆ、めなら、言っても…いい、よね…?…けぇ…け…ぼ、く…けぇけぇ、の、こと…好き…」
その言葉を暁人が呟いた瞬間女は「嫌!言わないで!あと少しなのに!!」と札のせいで動けない筈だが相当力が強いのか声は発することが出来るらしい。そんな女にKKは「冥土の土産に見せてやるよ。奇跡ってもんをな」そう女に向かって言うと暁人と向き直る。
「暁人、俺もお前の事が好きだ。だから一緒に帰るぞ」
そう言うとKKは暁人の血に濡れた唇に自らの唇を重ねた。ついでかのように女に向かって印を結ぶとそのまま女を祓う。
「いやよ!いや!!!なんで!なんでよぉぉぉぉおおお!!!!」
女はまだ諦められないのか祓われ浄化されている間も泣き叫んでいた。だがそれも数秒の事、すぐ女は消え暁人とKKが残された。
「ごほっ…け、け…?」
口から白い花を吐き出して暁人は目を覚ます。そしてKKを見て状況の把握が出来ず首を傾げた。
「おぅ、起きたか」
「う、ん…また、迷惑、かけちゃった…ごめん…」
「あまり喋るんじゃねぇ…喉、切れてるんだろ」
まだ呪われている時吐いた花が血がついていたのを見ていたKKは喉の心配をするも暁人は首を横に振り
「大丈夫、喉の痛みは、なくなったから…でも、呪いは…この花は…?」
暁人が最後に吐いた白い花を見てまだ呪われてると思っているのを察したのかKKは「もう大丈夫だ、呪いも祓った。それは白百合だそうだ。凛子から追加の情報がメールできてる」
KKは落ち着いたのを見計らってスマホに送られてきた凛子からの情報を見たそこには「恋愛成熟は白百合を吐く」と書いてあった。それを見た瞬間暁人は顔を真っ赤に染める。先程のKKとの口付けが夢ではないと理解したからだ。
「え…あ、れ…ゆ、め…」
「夢じゃねぇよ、夢にさせねぇ。夢にさせたいならし直すが…どうする?」
両想いで且つ気持ちをぶつけたのを良い事にKKはニヤニヤ笑いながらやり直そうと顔を寄せ暁人は慌てて「だ、大丈夫!もう、分かった、から!!」と顔を逸らすのをKKが許す筈もなく「暁人、愛してる」と囁き再び2人の距離は0になる。
KKのスマホがずっと電話の呼び出しを鳴らし続けるのを無視するかのようにKKは暁人との口付けを堪能した。
この後鬼のような形相の凛子に怒られるのを覚悟しながら…。