骨も残すな「別にお前のためじゃないからな!」
「それフリ?」
乱暴なノックに晒される寮室の扉を開けると、特に美少女ではない後輩が往年のツンデレ仕草をかましてきた。これが18歳の誕生日プレゼントだと言うのなら悪夢だ。残念ながら現実だけど。
宵越はノックの勢いはどこへやら、俺の言葉でぴたりと動きを止める。降り積もるような睫毛が丸い瞳に影を落とした。言葉というより疑問符の記号に近い吐息は白く煙り、眉間は加減知らずに距離を縮める。今は走り込みの後なのか頬が上気しているけど、黙っていれば白皙とだって評せる顔立ちだろう。なのにそこへ浮かぶ表情はどこまでも軽率だった。つまり感情に対して率直で、馬鹿みたいな間抜け面。ただまあ、可愛げだけはある。
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